“氷姿雪魄”に背のびする……しろねこの日記

仕事の傍ら漢検1級に臨むうち、言葉の向こう側に見える様々な世界に思いを馳せるようになった日々を、徒然なるままに綴る日記。

文章検定の導入 ならびに近況

2020-01-26 19:08:47 | 日記
こんばんは。
この冬は例年に比べると、まったくといっていいほど、積雪がありません。降雪も、殆どありません。ここまで少ないと、今年の夏はどうなってしまうのだろう? と、つい先々の心配までしてしまいます。
例年はセンター前に一度は積雪があるのに・・・。乗り物を運転する皆さんにとっては、ストレスが少なくていいのだと思う反面、雪国生まれで雪の降る風景と空気の冷たさにハイな気持ちになってしまうしろねことしては、寂しさと味気無さでいっぱいです。

ところで、漢検協会が主催する「文章読解・作成能力検定」が今年度初めてしろねこの勤務地で導入の運びとなり、先日無事実施しました。
しろねこの担当する中3は、全員3級を受検。問題は60分で解き、200点満点の70%程度の得点で合格です。
構成は第1問が語彙、第2問が表やグラフの読み取り、第3問が文章読解、ここまでは完全にマーク問題です。
第4問は後に案内を含む手紙文の中で、誤字・敬語・頭語や結語の知識を問うところまではマーク問題。手紙文中の傍線部である、だらだら繋がった一文を、接続助詞などを手掛かりに3つの文に分け、適宜言葉を補いながら内容は変えずに書き直す問題は、記述形式で答えます。
そして最後の第5問は、その場で与えられた話題に、賛成か反対か書き手の立場を明確にして、160字以上200字で文章を書く記述形式です。文章は必ず3段落に分け、第1段落=具体例・事実、第2段落=意見、第3段落=意見の根拠で書くことが決められています。答案が規定字数を越えなかった場合、採点は一切してもらえません。そして70/200点なので、ここが採点されないと不合格決定です。

この第5問に関して、過去問題集の模範解答を見ていて一番おもしろかった(笑えた)のは、”もう行くことがないかもしれないお店のポイントカードを作るのがいいか、作らないのがいいか”というような問題の作成例でした。模範解答には必ず賛否両方の作成例を示してくれています。ものすごく簡単に紹介すると、”作るのがいい”という意見の体験談と根拠は、作ることをしつこく勧めてきた薬局の店員さんがいて、その長々しいやりとりを回避するためにも素直に作ったほうがいいという内容でした。一方、”作らないのがいい”という意見の体験談と根拠は、どんなに気の進まないお店のポイントカードも作っていたら財布がいっぱいになり、全部カードを捨ててしまったから、一度も使いもしないカードを無意味に作るのはやめたほうがいい、という内容でした。どちらもほかの話題の解答例より主観要素が強く、ここでは示していない具体的なところは突っ込みどころ満載でした。生徒とも授業で読み上げながら、みんなで爆笑したくらいです。しつこく勧める店員さんの実存の有無や、それほど行きたくもないお店に対する言い方、財布のカードを「全部」捨ててしまったのなら、時には使うカードというものはそこに混じっていなかったのか、でもそれを分けて保管しておくくらいの人なら、財布の中身は初めからごちゃごちゃにならないんじゃないか・・・? などどどうでもよいことを考えてしまうのです。現実的には、めったに行かないところにも交通手段と時間のある人で、ポイントが貯まるくらいの(ある程度)大口の買い物をできる経済力のある人で、そのポイントカードが1年ないし2年以内でポイントを失効する前に(期限無しなら猶更全然問題ナシ)次の買い物ができる記憶力または管理能力のある人なら、作っておいたほうがいいのではないかとしろねこは考えます。徒歩か自転車か保護者の車が主な交通手段であろう中学生のお小遣いの金銭感覚だと、どのような解答になるのでしょうかねえ。

実際受検してみて、大方の生徒は手応えがあったようですが、約1か月後、どのような結果が返ってくるやら・・・。
因みに、今回生徒が受検者情報を記入する際、自分の生年月日を検定日の年(つまり2020年)で書いたり、和暦と西暦を混同して2015年と書いたりしたケースが複数見られました。ちょっと心配です。次年度は記入時の声掛けを気をつけよう・・・。


・・・次の漢検まで刻一刻と日にちが迫ってきていて、実のところ、自分の追い込み方がわからないまま日々仕事をしているしろねこです。
ここ暫く、少し個人的に思い悩む時間が長くなることが続いて、でももうそろそろ迷いから醒めないといけないと頭ではとっくに判っている、という、現在わりと始末に負えない状態です。それでいて、意識のどこかは麻痺している感じがする。
その昔しろねこの父が大学生のころ、人生に迷って暫く山に一人籠ったことがあったそうなのですが、私もなんとなく、その気持ちがわかるような気がします。でも、父はあの世から、そんなことと俺の場合を一緒にするなと言うのかもしれません。
とりあえず、どんな日も気を取り直して頑張るとしましょう。


円満字二郎氏『語彙力をつける入試漢字2600 』と2月の新刊

2020-01-18 10:50:21 | 日記
今年初めての投稿です。
今年も宜しくお願い申し上げます。

早くも今日はセンター試験1日目。しろねこはもうここ暫く高3を担当していませんが、学年全員の受験を陰ながら応援しつつ、自分の担当する中3を卒業まで引っ張ります。

さて、タイトルにある『語彙力をつける 入試漢字2600』は、昨年10月に刊行されましたが、これは円満字氏の20冊目のご著書となるようです。
しろねこが初めて円漢字氏の文章(大修館書店HP 漢字文化資料館 漢字Q&A)を拝読したのが2010年冬なので、ご著書で言うと、8冊目の『数になりたかった皇帝 漢字と数の物語』(岩波書店)刊行後の時期に当たります。そして、ご著書自体を拝読するようになったのは、12冊目の『ひねくれ古典『列子』を読む』(新潮選書)が2014年夏に刊行された後からになります。それから過去に遡ってすべてのご著書を拝読し(ただし、ときかあしシリーズは部首のみ完読)、ブログ・寄稿・連載・刊行物など、入手・拝読可能な限りは殆どすべて目を通してきました。そのようなわけで昨年末、学校勤務の国語科教員として、その円満字氏のご著書が採択見本として職場に届き、採択会議の場に並べられている光景を目にするのは、たいへんにうれしいことでした。
また、大きな書店で大学入試漢字問題集の並ぶ棚に、ご著書も1冊並べられているところでいろいろ見比べてみましたが、解説の丁寧さ、情報量の多さに対する見やすさは格別であると思います。解説中のふりがなの音訓まで仮名の区別がきちんとされてあり、ふりがなのところまで赤い字になっている(赤黒の二色刷)ことがあるところなど、解説の精度も高いです。特に、訓読みの要素をとても大事に解説してもらっているありがたさ。問題で取り扱った語の索引は、頁だけでなく問題番号まで付されていて引きやすい。漢字基礎知識についてのコラム・巻末の解説は、勿論親切で分かりやすい。

目次は以下のとおりです。
大学入試問題の出題傾向の分析内容と、漢字というもののもつ側面を精緻にクロスさせ整理された章立てではないでしょうか。


本書の特色と活用法
第Ⅰ章 基本語の読み書き
①音読み基本語の書き取り
②訓読み基本語の書き取り
③基本語の読み
◆実戦テスト
【コラム】音読みと訓読みの違い
第Ⅱ章 漢字の意味と書き取り
①書き取りランクA
②書き取りランクB
③書き取りランクC
◆実戦テスト
【コラム】二字熟語の構成
第Ⅲ章 漢字の注意すべき読み方
①読みランクA
②読みランクB
◆実戦テスト
【コラム】複数の音読みにどう対応するか?
第Ⅳ章 間違えやすい漢字
①同音異義語の書き取り
②同訓異字の書き取り
③形が似た漢字の書き取り
◆実戦テスト
【コラム】部首の知識を役立てよう!
第Ⅴ章 常用漢字表の範囲外の漢字
①表外漢字と表外音訓の書き取り
②表外音訓の読み
③表外漢字の読み
◆実戦テスト
【コラム】常用漢字とはどのようなものか?
第Ⅵ章 四字熟語と慣用表現
①四字熟語
②慣用表現
◆実戦テスト
【コラム】四字熟語学習のポイント

漢字について
索引


そして、ご著書『漢字の使い分けときあかし辞典』でもそうですが、なんといっても、例文を拝読するのが個人的には楽しみでなりません。円満字氏の例文は、紋切り型なものが少なくて、その例文からあれやこれやと場面を思い浮かべたり、ストーリーを想像していったりするのが楽しいものが多いのです。たとえば、
「笑ってないで、真面目に話そう。」(表外漢字の読みの章、「まじめ」の読み問題)、
「気になる相手に無関心をヨソオう。」(訓読み基本語の書き取りの章、「装」の書き取り問題)
など。それに、これまでのご著書等を拝読していて分かる円満字氏の価値観が反映されている(またはその逆の価値観が描かれている)であろう例文もいくつかうかがえて
(「彼のユイイツの欠点は、イケメンすぎることだ。」(音読み基本語の章、「唯一」の書き取り問題)、
「彼が約束に遅れるなんて、稀なことだ。」(表外漢字の読みの章、「まれ」の読み問題)など)、
それもまた、ファンとしては醍醐味なのでありました。

因みに、今回の漢字問題集のすべての例文から、猫がお好きな円満字氏による、「猫」が入った例文を抽出したのでご紹介しておきます。しろねこが拝読した限りでは、19例文ありました。

・この子猫はコウキシンでいっぱいだ。(音読み基本語の書き取りの章、「好奇心」の書き取り問題)
・うちの猫は、鈴の音にビンカンに反応する。(音読み基本語の書き取りの章、「敏感」の書き取り問題)
・迷い猫のソウサクを依頼する。(音読み基本語の書き取りの章、「捜索」の書き取り問題)
・猫がネズミにオソいかかる。(訓読み基本語の書き取りの章、「襲」の書き取り問題)
・猫のトイレに使った痕跡がある。(基本語の読みの章、「こんせき」の読み問題)【←何を?庭の砂とか??:しろねこ注】
・この島に猫が増えたケイイを調べる。(書き取りランクAの章、「経緯」の書き取り問題)
・かわいい子猫が、多くの人をミワクする。(書き取りランクAの章、「魅惑」の書き取り問題)
・飼い猫の寝姿をソビョウする。(書き取りランクBの章、「素描」の書き取り問題)
・うちの猫の食欲にはサイゲンがない。(書き取りランクBの章、「際限」の書き取り問題)
・飼い猫が仕事のジャマばかりする(書き取りランクCの章、「邪魔」の書き取り問題)
・この柱の傷は、いたずら猫の仕業だ。(読みランクBの章、「しわざ」の読み問題)
・枝から落ちた猫が、タイセイを立て直す。(同音異義語の書き取りの章、「体勢」書き取り問題)
・猫が木のカゲで昼寝する。/・カーテンに猫のカゲが映っている。(同訓異字の書き取りの章、「陰/影」書き取り問題)
・眠っている子猫の写真をトる。(同訓異字の書き取りの章、「撮」書き取り問題)
・飼い猫の体重をハカる。(同訓異字の書き取りの章、「量」書き取り問題)
・箱の中から猫の鳴き声か微かに聞こえる。(表外漢字の読みの章、「かす(かに)」読み問題)
・自動車が猫を撥ねそうになる。(表外漢字の読みの章、「は(ねそう)」読み問題)
・窮鼠猫を噛む。(慣用表現の章、「きゅうそ」読み問題)


――ところで、昨年12月に更新された円満字氏HPプロフィールの連載紹介のところに、


漢字の植物園 in 広辞苑(岩波書店『図書』2018.11〜2019.10)
→単行本として刊行すべく、加筆・修正作業中!


とあるのですが、先日hontoから、以下のような案内メールが届きました。


漢字の植物苑 花の名前をたずねてみれば
円満字二郎(著)
税込価格:2,200円
出版社:岩波書店2020/02/21


ということで、来月21日日にはめでたく、円満字氏の21冊目のご著書が刊行され、近日中にしろねこも手にすることができるのです(しかもこの発行予定日、実は偶然、しろねこの誕生日ではありませんか)。
『図書』の連載は1年間、毎月拝読していましたが、こちらが終了したのとほぼ同時期に、『週刊読書人』の連載「漢字点心」も終了してしまい、少し寂しいなあと感じていたところでしたので、そのような点でもうれしいお報せだったのでした。

以上、円満字氏のご著書2冊のご紹介でした。また拝読できるのを励みにしながら、できることを全力で頑張っていきたいと思います。