数日前、『漢和辞典的に申しますと。』で「鮎」の頁を拝読してから出勤したところ、アラフィフをやや過ぎた(?)社会のM先生の机上に、魚偏の漢字が列挙してある定番のデザインの湯のみが置いてあったので、
「やっぱりそういうのって、持ってるもんなんですね」
と話しかけました。というのも、先の「鮎」の頁に載せてある写真が、まさにこの湯のみだったので、つい親近感が湧いたのです。
「まあ、私は買おうと思って眺めてると、ほかにもこれらの字がいくつも載ってる本、何冊も持ってるからいいや、って、結局買うの後回しになっちゃうんですけど」
するとM先生曰く、
「これダサいんだけど、たくさん入るから入れ直さなくてよくて、便利じゃない?」。
「ダサいんですか?」
「うん、ダサいよ」
「そうなのか…あたしは漢字だから、そうは思わないけど、かっこいいとかではないわけね」
しろねこにそう言われ、M先生は改めて湯のみを手に取り、ゆっくり回しながら眺め始めました。
「……この、魚に神って書いてはたはたとかさ」
「あ、美味しいですよね、はたはた。私秋田生まれだからよく食べましたよ。それ、魚に雷って書くやつもありますよね」
「ああ、雷ね、その字あるね。……この、魚に弱いと書いて、いわしとかさ」
「それ、すぐ傷む魚だから弱いってことらしいですよ」
「ああ、なるほどね」
――答えながら、私はちょっとびっくりしていました。だって、今M先生が挙げた2文字の読み、奇しくも両方、さっき読んだばかりの「鮎」の頁に、具体例として述べられていたんだもの! なんという偶然なのか。そして、次にM先生がどの字に目を止めるかによっては、気の利いた関連知識を披露できるか分からない……。
と、多少どきどきしながら次の言葉を待ち構えるや否や、
「魚に強いは無いの? 魚に強いと書いて、『○○(=しろねこの本名)』とかさ」
「えっ、なにそれ!」
……まあ、しろねこは魚座なので(M先生は勿論知らない)、外れきってはいません。とはいえ、こんなことを言われるのも、15歳ほど年上なM先生ですが、今の職場においてはしろねこのキャリアのほうがかなり上なのと、気さくなM先生の人柄により、日頃からかなりの毒舌を吐き合ったりしているせいでしょうか。言われっぱなしにしておくと本当に虚仮にされかねないので、こちらも重装備でやり返すことが屡。事実過去に、「しろねこ先生は3回くらい攻撃しないと、1回くらいでは倒れないから」とM先生をして言わしめたほど。因みにまだ本気で倒されたことはありませんが。
湯のみの縁で、今回はM先生に一本取られてしまった。
にしても、こういう、本を読んでいると遭遇する、驚くほどの偶然って、時々あるものですよね。以前もバスの中で『部首ときあかし辞典』の「醵」のところを読んでいて、着いた図書館で近日の『漢字点心』をコピーしていたら、その中のひとつに「醵」のコラムがあって、ちょっと感激したことがあります。
その「醵」のお話も、この度『漢和辞典的に申しますと。』に収録されています。
こうしてどんどん、漢字の記憶が繋がっていくのですね。楽しみはどこまでも尽きません。
「やっぱりそういうのって、持ってるもんなんですね」
と話しかけました。というのも、先の「鮎」の頁に載せてある写真が、まさにこの湯のみだったので、つい親近感が湧いたのです。
「まあ、私は買おうと思って眺めてると、ほかにもこれらの字がいくつも載ってる本、何冊も持ってるからいいや、って、結局買うの後回しになっちゃうんですけど」
するとM先生曰く、
「これダサいんだけど、たくさん入るから入れ直さなくてよくて、便利じゃない?」。
「ダサいんですか?」
「うん、ダサいよ」
「そうなのか…あたしは漢字だから、そうは思わないけど、かっこいいとかではないわけね」
しろねこにそう言われ、M先生は改めて湯のみを手に取り、ゆっくり回しながら眺め始めました。
「……この、魚に神って書いてはたはたとかさ」
「あ、美味しいですよね、はたはた。私秋田生まれだからよく食べましたよ。それ、魚に雷って書くやつもありますよね」
「ああ、雷ね、その字あるね。……この、魚に弱いと書いて、いわしとかさ」
「それ、すぐ傷む魚だから弱いってことらしいですよ」
「ああ、なるほどね」
――答えながら、私はちょっとびっくりしていました。だって、今M先生が挙げた2文字の読み、奇しくも両方、さっき読んだばかりの「鮎」の頁に、具体例として述べられていたんだもの! なんという偶然なのか。そして、次にM先生がどの字に目を止めるかによっては、気の利いた関連知識を披露できるか分からない……。
と、多少どきどきしながら次の言葉を待ち構えるや否や、
「魚に強いは無いの? 魚に強いと書いて、『○○(=しろねこの本名)』とかさ」
「えっ、なにそれ!」
……まあ、しろねこは魚座なので(M先生は勿論知らない)、外れきってはいません。とはいえ、こんなことを言われるのも、15歳ほど年上なM先生ですが、今の職場においてはしろねこのキャリアのほうがかなり上なのと、気さくなM先生の人柄により、日頃からかなりの毒舌を吐き合ったりしているせいでしょうか。言われっぱなしにしておくと本当に虚仮にされかねないので、こちらも重装備でやり返すことが屡。事実過去に、「しろねこ先生は3回くらい攻撃しないと、1回くらいでは倒れないから」とM先生をして言わしめたほど。因みにまだ本気で倒されたことはありませんが。
湯のみの縁で、今回はM先生に一本取られてしまった。
にしても、こういう、本を読んでいると遭遇する、驚くほどの偶然って、時々あるものですよね。以前もバスの中で『部首ときあかし辞典』の「醵」のところを読んでいて、着いた図書館で近日の『漢字点心』をコピーしていたら、その中のひとつに「醵」のコラムがあって、ちょっと感激したことがあります。
その「醵」のお話も、この度『漢和辞典的に申しますと。』に収録されています。
こうしてどんどん、漢字の記憶が繋がっていくのですね。楽しみはどこまでも尽きません。