“氷姿雪魄”に背のびする……しろねこの日記

仕事の傍ら漢検1級に臨むうち、言葉の向こう側に見える様々な世界に思いを馳せるようになった日々を、徒然なるままに綴る日記。

検定対策に殆ど関係ない話

2015-05-06 10:24:52 | 日記
こんにちは。
GWも最終日、如何お過ごしでしょうか。27-1対策に励んでいらっしゃる方も多いことでしょう。

しろねこは、漢字に関係ないような、あるような生活を続けつつ、毎日確実に漢字のことを思って生きている、というのが正直なところです。

生徒が自習登校しているので、自分も生活リズムを崩さないように連日登校(?)し、古典文法の質問をパラパラ受けつつ、残務処理とGW明けの準備をゆっくり少しずつして過ごしました。
また数日前に軽い風邪を引き、家に籠ると余計調子が出なくなることも心配だったのです。
いまも勤務地のタリーズにてチャイミルクティーで一服、そろそろ職場に向かいます。

居住地のほうではスタバ常連ですが、タリーズといえば、昨年の暮れから、ひとつ気になる絵本が。
『氷の島とねこ』(張佐和子)。
第11回 タリーズ ピクチャー ブック アワード 特別賞受賞作品だそうです。しろねこは残念ながら購入はできていませんが、ねこ好きな方なら、ねこ独特の無邪気な仕草やシルエットがやさしく描かれた透明水彩画に、きっと心を癒されるに違いありません。機会がありましたら是非ご覧になってみてください。


山崎ナオコーラ『この世は二人組ではできあがらない』(新潮文庫)。GW中に職場で休み休み読んだ、漢字に関係ない本です。
ことばや人にかかわる、いくつかのくだりが心に残りました。


【大学を卒業して数年後、小説家になりたい主人公の栞が、大学時代の友人の花ちゃんと久々に二人きりで食事をしているシーンで、栞が次のように言う。前後の会話文や地の文は、かなり割愛。】

「私は今まで、自分の言葉が伝わった、と感じたことがない」
「私は人に理解して欲しいとは思ってなくて……」
「だけど誰だって、自分のことを気に入ってくれている人にそばにいて欲しいもんじゃないの?」

【新卒でパンのメーカーに入社した花ちゃんは、栞の言葉を受けて答える。こちらも前後の会話文や地の文は、かなり割愛。】

「自分に関係なく、他人を好きになる人だっているんじゃないかなあ」
「自分のことを好いていてくれているわけでもなんでもない人たちと、たくさんの言葉を交わすのが、仕事ってものじゃない? 私、今の会社に入って、パンを流通させるために、たくさんの人と話して、相手は私のことを大事な人とは思ってくれていないし、私になんの興味も持っていない人たちばかりだけど、パンを通して、たくさんの会話をいろいろな人と交わしたよ」

【花ちゃんの言葉に耳を傾けていた栞のものごとの捉え方が、ここで少し変わる。前後の会話文や地の文は、相変わらずかなり割愛。】

「なるほど……。まだ見たことのない読者を信頼して書く、ということもできるのかな」


これは150頁を過ぎたあたり。それより前、100頁を過ぎたあたりで、栞のモノローグにこんな一節もあります。


人と人とは、関係がない。誰も、誰かから必要とされていない。必要性がないのに、その人がそこにいるだけで嬉しくなってしまうのが、愛なのではないか。



……この、『この世は二人組ではできあがらない』の主人公は、私とほぼ同年代。共感する感覚は多いです。家庭環境は、この主人公とは大きく違うけれど。

読書について、書こうとするとだいたい職場の入試作成のために大量読みしているときで、ここでとりあげた話が作問対象の候補になりかねないこともあり、書くのを控えてきました。
中学配属の2年間は、義務教育の入試であることもあり、主人公は受験生と同年代のものを探すようにしていて、それがことのほか大変だったけれど、また高校配属に戻ったので、主人公の位相をある程度自由に選べるのは助かります。

川上弘美さん、瀬尾まいこさん、橋本紡さん、山崎ナオコーラさんの小説は好きで、どの方の文章も作問で使わせていただいたことがあります。
川上弘美さんの『センセイの鞄』、三島由紀夫氏の『仮面の告白』など、この一冊のどこから、作問するのか? と一見思われそうな作品から、隙間の一幕をえいやっとお借りして、作問するのも、私の楽しみだったりします。勿論、本文の曲解に繋がるような作問や、表現を損なうような作問は極力避け、抜粋範囲で収拾がつくような作問に徹します。


……最近、いろいろな存在についてとか、なんで相変わらず漢字を勉強したいと思うんだろうとか、自分はあと何年心身ともに健康で生きられるんだろうとか、いま災害か戦争か何かですぐに家を出なければならなかったら、私は大切にしている漢字の本やノートをどうするんだろう、とか、自分は人間として、どうなんだろう、とか、端から見ればしょうもないと思われそうなことをいい大人なのに折ふし考えるようになって、毎日忙しいのは変わらないのですが、頭のなかはかなり減速気味です。


……一ツ橋書店『漢検合格ノート』TEST9 当て字・熟字訓問題を見ていたら、「更格廬」の解答が、「かんがる~」になっていたことに、昨夜改めて気づきました。「~」に、なにか意図があるのか? 単なる誤植なのだろうけれど、あのカンガルー特有のジャンプが、「~」のラインをなぞるようにイメージされてしまうから、たったひとつの記号といえども軽視できないなあ、と思いながら、脳内も減速気味でいられないな、そろそろ私も6月の対策を優先させなければ、と、風に吹かれるしろねこなのでした。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿