舟を編む (光文社文庫) | |
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光文社 |
この本、文庫本化された。2012年本屋大賞、累計100万部突破、とあって、書店に平積みになっていた。割と読み安く、電車の中で二、三日で読んでしまった。
辞書を作るプロの苦労が初めてわかる内容だ。そして馬締(まじめ)と香具矢(かぐや)の微妙な関係も。この本、たしか映画にもなったと思ったが、あんまりよく覚えていない。
ところで、読み進むうちにおかしなことに気がついて、最後まで納得できなかった。辞書を作るには、用例採集カードというのを作っておいて、それをもとに辞書に採用するか、どうか決めるそうだが、これを日頃から少しずつ準備しておく。そして編集会議では、これを一つずつ専門家を入れて検討する。もちろん辞書だから、字数も考えてそのページに収まるかも検討する。
もう一つ、辞書は薄い紙で、ぬめり感が必要という。2ページまとめてめくれないようにするし、また独特のぬめり感が必要という。ここの検討に製紙会社の方と一緒に出版社も検討する。辞書の紙の香りがしてくる話だ。
ちょっとまてよ。このITの時代、そんなこと今でもやっているのかな。どの企業もITを取り入れて経営革新するのに必死になっている。用例カードの編集の話はIT化になっても同じだが、紙の「ぬめり感」の話、今でもそうなのか、ほんとかいな。
私は、辞書はもうITものしか使わない。パソコンだけの時はパソコンの立ち上げに時間がかかり、Iフォンでは画面が小さすぎて、入力がやだからあまり使わなかった。ところがIパッドの登場で生活シーンが変わった。引きたい単語があれば,Iパッドをリビングに持ってきて、入力する。Iパッドは立ち上げが速く、入力画面も大きく、ストレスがない。
これに慣れると大きな辞書を持ってきて、よいしょっと、使う気にはなれない。ただ、辞書はデジタル大辞典とか、パソコンで専用のものらしいが。
小説には、ケータイのメールの内容も出てくるから、現代だ。しかし、デジタル化の話は出て来ない。小説の出版社の様子は20年前のようだ。ほんとにこの時代、分厚い紙の辞書を必死になって作るものだろうか、分厚い紙の辞書が売れるんだろうか、この分厚さ、辞書を引く手間こそIT化にふさわしく、IT化のメリットが出る商品のはずだが。
著作者に聞いてみたいね。辞書を作るのに、ほんとに今でもこんな作業をやってるのか、またそれが売れるのか。今なら、昔気質の辞書の作成者が、IT化時代になって仕事に惑う、というのが物語の肝になりそうだが。このベストセラー読後の、私の感想です。いかがしょうか。