「家」 @ 鎌倉七里ガ浜 + 時々八ヶ岳

湘南七里ガ浜(七里ヶ浜とも)から発信。自分の生活をダラダラと書きとめるブログ。食べ物、飲み物、犬の話題が多い。

7軒の家(8)相模湖町

2007-11-17 11:11:19 | 家の遍歴

小高い丘の上。周囲を見渡せば畑と穏やかな山々が続く牧歌的な風景。我が家はそんなところにあるミニ開発の宅地にあった。周囲には我が家の土地と同じような面積の土地区画が並んでいた。畑が宅地になり同時期に売り出され、売れた区画から家が建ち上がって行く。最後までなかなか売れない区画もあった。我が家の隣の区画である。ちょっと条件が悪かったのだ。

その土地はいつまで経っても売れる気配がなかった。その土地が隣接する南側が高い斜面であるため、日当たりが悪くなってしまうことが原因だと思われた。ところがある日、その土地で基礎工事が始まった。やっと売れてそこに家が建つのである。たまたまそこを販売した不動産開発会社、つまり私もその会社から我が家の土地を買ったのだが、そこの社員がいたので聞いてみた。「やっと売れたんですね。どんな家が建つんですか」と。彼はやや答えにくそうに答えた。「あのぉ~なかなか売れなくて、ちょっと苦労しまして、やっと買い手を見つけました。普通の住宅が建つんですがね、一部をスナックにするんです。いや、普通の住宅なんですよ。防音装置などもばっちりですから騒音などはないし・・・」 なんと!この牧歌的風景の中、我が家の隣にスナックが誕生することになるのである。

最寄りのJR相模湖駅から5km近く離れ、公共交通は1日にそんなに本数がないバスだけ。そんなバスの停留所からえんやこらと5分ほど坂を上った小高い静かな住宅地。周囲は畑。遠くには山々。そんなところにスナックが出来てお客は来るのか。・・・それが、来るのである。しかも皆クルマを運転して。冗談のような話だ。

スナックと言えばカラオケ♪ これには参った。「防音装置」付きと聞いたが、そんなものは隣人である私にとって、役には立たなかった。酔っ払いのへたくそな歌が毎日聞こえる。騒音公害である。マリア・カラスやフランク・シナトラが歌ってくれるなら隣人の役得とも言えようが、お世辞にも上手いとも言えない、酔っ払いの歌の連続。またお客は出たり入ったりする。そのたびにスナックのドアが開いてしまう。「いらっっしゃいませぇ~」「またのご来店お待ちしてまぁ~す」という声とともに聞こえる、直接的で臨場感溢れるカラオケの大ボリュームの騒音。ひどい時はドアが開けっ放しになる。入り口で会話が続くのだろう。

酔っ払いどおしが外で会話することもある。席をはずしての密談らしい。携帯でどなっている酔っ払いもいる。ぐでんぐでんに酔って、道路で寝転んで大騒ぎしている奴もいる。警察も来る。隣人にとっては迷惑このうえない。たいてい10:00pm以降のことである。毎朝早く起きなければならない私には、大問題であった。

すべての酔っ払いがやがてはスナックから帰る。それが毎日深夜になるのである。完全に酔っ払っている。スナックの入り口では延々と大声で話が続く。「また来るよぉ~」「お願いしますぅ~」寝ている私はそのたびに起こされる。そしてその相当酔っ払った連中が次々とクルマに乗り込み、エンジンをかける音が暗闇に響き渡る。彼らは自分でクルマを運転して帰るのである。無事自宅に帰ることが出来るのだろうか。

あまりにひどい時は文句も言いに行った。でも無駄だった。法律はこんな場所のスナックを許しているのであるから、どんなに文句を言っても無駄なのである。文句を言えばスナック経営者から若干の謝罪はあるが、その後も同じことが繰り返されるのである。この国では土地の所有者がそこで何をしても自由なのである。周囲との関わり、という観点はないがしろにされがちである。自分のための生活環境を守るには、自分の家や土地だけではなく、法律も含め周囲との関わりが大事にされなければ無意味であることを実感した。致し方なく、またもや私は引越しを決意したのだった。1996年春のことである。
コメント (6)
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