宮応かつゆきの日本改革ブログ

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「たたき上げー自分の流儀が一番は危険」-すし職人・杉田孝明さん

2020年10月17日 | 未来社会へのプロセス

「朝日」17日付「耕論」に「たたき上げすごいの」に、すし職人の杉田孝明さん(1973年生まれ。高卒後、東京・日本橋で修業を積み、30歳で独立)の発言が掲載されています。杉田さんとは、世代が違いますが、同氏の「たたき上げ」観に共感を覚えました。紹介させていただきたいと思います。

「18歳の時、東京・日本橋の大衆的なおすし屋さんに入り、そこで12年間修業しました。不器用だったので、弟子たちの中でも技術的には完全な落ちこぼれでした。最初は出前ばかりに行かされて、ペティナイフすら持たせてもらえない。30歳で独立し、今の店はお任せで1人前2万8千円にもかかわらず、『日本一予約がとりづらいすし屋』とも言われるようにまでなりました。自分はいわゆる『たたき上げ』だと思います」

「修行先で学んだのは基礎の基礎ですが、その魚に合わせたしゃりの工夫など、そのお店で教わったことで今もそのままやっていることはゼロなんです。でも、基礎がなかったら全く何もできないですから。おすしには先人が培ってきた技術があり、独創性が売りになる他の料理とは違います。教わったものを自分なりに丁寧に磨き上げてきて、今があると思います」

「今の世の中では、たたき上げが避けられがちかもしれません。私の店でも多くの弟子が働いていて、技術的には昔より圧倒的に優秀です。でも、今の若い子たちは結果を早く求めようとしてしまいます。修行中もいろいろな情報が得られやすい時代なので焦ってしまうんですよ。昔より独立して店を持つ年齢が若くなっています」

「社会全体でも承認欲求が強すぎないでしょうか。私の修行時代、承認欲求なんてほとんど満たされませんでした。理不尽な扱いも受けましたが、人間的な耐性や、『つかんだ好機は絶対に離さないぞ』というハングリーさが身につきました。人間として鍛えられていないと、花がいっぱい咲いても肝心の幹や根っこが細く、少し風が吹いたら倒れてしまう心配があります。今は若い弟子に私の修行経験のような理不尽に耐えろとは言いずらい時代なので、悩んでいますよ」

「たたき上げと言われる菅首相も、能力とハングリーさがあったからこそ首相になれたのでしょう。ただ『たたき上げだから政治家として評価できる』という考えは違うと思います。たたき上げだからこそ、誰かに頭を下げたり、力を借りたりすることも必要だったかもしれません。首相になって誰にも気を使わずに政治力を発揮できるという点では、世襲の政治家の方がいいのかもしれません。菅首相が首相として力を発揮できるか、これからよく見ないとわからないと思います」

「すし業界にも、自分が作り上げた流儀や味が一番で、ほかは認めないという職人がいますが、たたき上げでもとたんに嫌らしい人に映ってしまいます。そういう政治家が首相になったら危険ですね。私自身、そのような鼻につくたたき上げにならないよう、いつも自戒しています」