見もの・読みもの日記

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佐竹本覚え書き/佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美(京都国立博物館)

2019-10-21 23:19:52 | 行ったもの(美術館・見仏)

京都国立博物館 特別展『流転100年 佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美』(2019年10月12日~11月24日)

 かつて2巻の絵巻物だった『佐竹本三十六歌仙絵』が大正8年(1919)に分割されてから100年を迎えることを機に、断簡37件(36歌仙+住吉明神)のうち31件が一堂に会する特別展。これは!どんなに混んでいても見なくては!と一人で盛り上がって、土曜の朝イチで駆け付けたのだが、入館待ちは50人程度で少なかった。展示は3階から始まるが、佐竹本は2階に集中している様子(3階から様子が見えた)。そこで急いで2階に下り、念願の佐竹本から見始めた。どんどん人が増えるかと思ったら、一向に増えないので拍子抜けしてしまった。結局、最後までゆっくり見ることができた。

 以下、通し番号)展示リスト番号 歌人(所蔵者)の記録で、ひとこと感想を付す。会場の並び順は展示リスト番号の順とは異なる。【期間外】は展示替えのため見られなかったもの。

01) 37 柿本人麻呂(出光美術館)【期間外】
02) 38 大伴家持…黄土色の直衣。大きく折り返した袖と袴には丸文。右手を冠のあたりに翳す。
03) 39 在原業平(湯木美術館)…やや面長、若々しくさわやかな美男。右手に扇を持つ。表具は中回しに鴛鴦と草花を織り出した錦を使っていて華やか。
04) 40 素性法師…子どものような丸顔、ちんまりしたお坊さん。
05) 41 藤原兼輔…黒の束帯姿で笏を持って端座。後ろに下襲の裾を引く。典型的な男性貴族像。
06) 42 藤原敦忠【期間外】
07) 43 源公忠(相国寺)…兼輔像とよく似た典型的な男性貴族像だが、顔立ちがかなり個性的。三角の顎鬚で面長が強調されている。
08) 44 源宗于…典型的な男性貴族像。劣化と褪色で顔立ちが分かりにくい。
09) 45 藤原敏行…若草色の直衣、丸文の指貫袴。袴の口から赤い内衣がこぼれている。身体は右向きだが顔は左を振り向いたところ。動きがあり、華やかでおしゃれ。男性歌人としては人麻呂と並ぶ最高値がついたのも納得。
10) 46 藤原興風(メナード美術館)…身体を小さく固くして背を向け、わずかに左横顔を見せている。
11) 47 坂上是則(文化庁)…灰色の直衣、緑色の袴。めずらしく立烏帽子。目の下にほんのり紅を引く。袴の口から素足を見せているのも例外的。表具は金箔の雲がなびき、鹿の遊ぶ松山(雪山?)を描いた大和絵(紙なのか?)を全面に用いている。最初の所有者、益田英作の仕立て。
12) 48 小大君(大和文華館)【期間外】
13) 49 大中臣能宣(サンリツ服部美術館)…萌黄色の上下。折り返した袖に丸文。もの思わし気にうつむく。
14) 50 平兼盛(MOA美術館)…黒の束帯。福々しい丸顔だが、左手の笏をあごに当ててもの憂げにうつむく。このひとの歌風とよく合っている。
15) 51 住吉大明神(東京国立博物館)…いつ見ても微笑ましい、不思議な絵。
16) 52 紀貫之(耕三寺博物館)…黒の束帯。細面、困ったような下がり眉。扇を散らした表具の裂が華やか。
17) 53 山辺赤人【期間外】
18) 54 僧正遍照(出光美術館)【期間外】
19) 55 紀友則(野村美術館)…黒の束帯。右手に笏、左後方を振り返った姿に動きがあり、若々しい。
20) 58 小野小町…今期唯一の女性歌人像。左に小さな頭部の後ろ姿。右に向かって長い髪と豊かな衣をなびかせる。使われている色は赤と白と緑と灰色、わずかな青? 衣のふくらみ、波打ち、折れ曲がる様子を繊細かつ大胆に表現。黒髪の流れ、広がる様子も美しい。
21) 59 藤原朝忠…興風とは逆向きの後ろ姿。石帯、下襲の裾が目立つ。
22) 60 藤原高光(逸翁美術館)…ぽってりした公家眉。めずらしく髭がない。若くして出家しているので、官人姿で描けばこうなるのだろう。唐草文の下襲の裾が華やか。
23) 61 壬生忠峯(東京国立美術館)…冠に(おいかけ)を付け、武官であることを表す。しかし表情はうつむき加減でもの憂げ。黒一色の束帯の袖にちらりと赤色が覗く。
24) 62 大中臣頼基(遠山記念館)【期間外】
25) 63 源重之…曖昧な模様入りの直衣、無地の袴、めずらしい立烏帽子。細い眉、跳ね上がった三角髭という個性的な風貌。
26) 64 源信明(泉屋博古館)…黒い束帯、丸顔。笏を膝に置き、うつむいて斜め前を凝視する。
27) 67 源順(サントリー美術館)【期間外】
28) 68 清原元輔(五島美術館)…黒い束帯。うつむきつつ、やや上目遣い。
29) 69 藤原元真(文化庁)…色数は少ないが状態良好で鮮明。黒い束帯。温和な表情。
30) 70 藤原仲文(北村美術館)…黒い束帯。右の立膝をつき、手を添えて、立ち上がろうとするかに見える。
31) 72 壬生忠視…黒い束帯、冠に

 はじめは歌仙絵に集中し、次に表具や和歌を味わいながらもう一周した。百人一首に取られたものなど、現代人になじみの深い代表作もあれば、あれ?この人この歌なの?と意外に思う場合もあった。

 なお、今回出陳されなかったのは、躬恒、猿丸大夫、斎宮女御、藤原清正、伊勢、中務の6件。女性歌人の3件が出ていないのがちょっと寂しい。ちなみに斎宮女御は、2014年の根津美術館『名画を切り、名器を継ぐ』などで何度か見ている。中務はサンリツ服部美術館所蔵で、なぜ出さなかったのだろう?と思ったら、11月から特別展で展示予定(初公開?)らしい。うわー諏訪まで見に行くか。

 伊勢は個人蔵だが見た記憶がない。しかし、見たいと願っていたら、いつかその機会が来るかもしれないので、忘れないでおこう。佐竹本以外の展示品については別稿に続く。

コメント (2)
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