赤羽じゅんこの三日坊主日記

絵本と童話の本棚
日々のあれこれと、読んだ本のことなど書いていきます。

『こんとんじいちゃんの裏庭』村上しいこ

2017-07-15 06:39:16 | その他
ばたばたしていても本は読みたくなるもの。そして、義父も認知症だったことから、この本は気になって買ってしまった。そしてすぐに読んだ。だれかに内容を話したくなる本。

やさしくなれないぼく。担任でも、他の人でも自分の尺度にあわないと、気に入らない。
認知症の自分のおじいちゃんが交通事故をおこし、損害賠償を求められたことに腹をたて、その事故を追求していく。

社会が複雑になってきて、なにがいいのか、悪いのか、わからなくなってきている現代。そんな中、正義を探すそうともがく、常に不機嫌な少年像がわたしには新鮮
「世の中、結構複雑で残酷だよ」
大人たちとかかわる中でそういう現実と向き合っていく。いい人もそれほどでない人も出てくる。

読み応えがあり、いろいろ考えさせられた。イチジクが効果的につかわれている。わたしはあまり好きな果物ではないけど、食べてみたくなった。
後ろ向きの少年をかいても、暗くなりすぎず、村上しいこさんの実力と哲学を感じた。今年、一押しかな。

児童文学は明るく前向きで、がんばって現状を変えていく成長物語が多くかかれてきた。けど、複雑な現代、それだけでは物足りなくなり、作家たちは違う形を模索しだしている。
いとうみくは、『カーネェ―ション』で、母を愛せない少女をかき、この作品で村上しいこは、社会にやさしくなれない感受性の強い少年をかいた。


これからこういう方向の作品は増えて行くかもしれない。
ただ、子どもたちが好むかどうかは、よくわからない。わたしも、おじいちゃんの介護など現実に向き合って試行錯誤しているから、この作品が好きなのかもしれないから。

ーーいいとか悪いとか判断するのは、もうやめなきゃ。みんなそれを越えたところでもがきながら懸命に生きている。

うん、そうしなくちゃって、うなずいた箇所だ。