税込み 1,650円
小学生の調査・研究に敬意を表したい。
たいしたものだと思う。
桃太郎は歴史の長い伝承物語だ。
それが戦前に、アジア諸国への侵略戦争に使うため
鬼退治に特化されていった。
中国やアジア諸国へ鬼退治にいく「正義の日本人」
として小さな子どもを教育勅語とともに育てていっ
た。
これが私たちが知っている桃太郎だ。
それに対して「ももたろうは盗人」ということを聞
き、どうしてだろうと徹底的に調査していった小学
生がいたことに驚いた。
芥川龍之介の「桃太郎」(1924年)もおもしろい。
桃太郎は乱暴者で悪と描いており、鬼に対する目線
はやさしい。
そもそも桃太郎は遠い昔から、いくつものストーリ
ーがあり、それが戦前の富国強兵、アジア侵略のた
めに固定されてしまった。
ひるがえって、現代はどうなのか。
ネトウヨをはじめ、嫌韓兼中が幅をきかせ、政権の
一翼を担うまで大きくなっている。
とりわけ、ネットの世界では「エコーチェンバー」
現象で、ますます増幅されている。
そこには多様な見方が失われ、違う他者を攻撃・排
除する姿勢があまりにもひどい。排外主義が増幅さ
れている。
「ももたろうは盗人なのか?」は、小学5~6年生
から上の年代が対象だ。もちろん大人も充分楽しめ
る。
日本の「鬼」の成り立ちや歴史もよくわかる。
大人も、ぜひ手に取って読むものではないかと思っ
た。