呑む気オヤジ/蔵王山麓蓬莱庵便り

蔵王山麓暮らしのオヤジの日記。合唱も映画もドライブも温泉も、たまには俳句も・・・😄

呑む気オヤジの観るぞ、聴くぞ!~映画「悪人」

2010-10-11 | 映画(DVD)の話

♪映画「悪人」

観ました、映画「悪人」!
う~~~ん、原作に輪を掛けて切ないなぁ~。
文章を読むとき、自分の頭の中でその場面や風景を想像(妄想)するけど、映画は否が応でも映像として見せつけられる。
もちろん小説のほうが、場面も状況も人物の感情や想いも文字で表現している分、詳細に描かれている。でも映像では、役者がそれらを瞬時に観客に伝えてくるし、人物を包む周りの情景が効果的に映し出される。(でも考えようによっては、小説って文字だけでそういったものを伝え、読者に想像させるんだから凄いね)
実は小説を読んだときはもう映画公開直前だったから、主演の妻夫木クンと深津サンもよくTVなどに出ていたし、映画の予告編なども観ていたので、純粋な意味でまっさらな状態で本を読んだわけではなかった。それでもあれだけ深い感動が得られたんだから、尚更あの二人がどう演じたんだろうという興味が強く湧いていた。

いやぁ~、妻夫木クンも深津サンも良いや、凄いや!
本を読んでいて、妻不木クンはちょっとイメージが違っていた。祐一の役をやるんなら、あの根暗の?山田孝之だろうとずーっと思っていた。でも、豈図らんや!やり場のない閉塞感と鬱屈した毎日を送る青年役を、妻夫木クンは見事に演じた。あの暗く沈む、どこに焦点を合わせているのか分からないような目つきが印象的だ。
深津サンも、変化のない日常を抜け出したくて出会った青年と泥濘の愛に溺れていく平凡な女性店員役を好演。誰でも持つ?心の奥底の暗い欲望や懊悩を曝け出した。モントリオール世界映画祭最終周女優賞受賞も納得だ。
脇役陣も良かったなぁ。
祐一に殺害された軽薄なOL佳乃役の満島ひかり、ボンボン大学生約の岡田将生も好演。そしてなんといっても、佳乃の父親役の柄本明、祐一の祖母役の樹木希林が傑出!
娘が出会い系サイトで知り合った男に殺され、その娘が売春まがいのことをやっていたという噂話が耳に入る。娘を半分疑いながらも、親元から出したこと悔い、娘を置き去りにした大学生を憎む父親。
子供の頃に母親に置き去りにされ、自分が親代わりに育ててきた孫。その孫が殺人を犯した?そんなはずはないと否定しながらも、自分の育て方が悪かったのかと悩み苦しむ祖母。
それぞれの、胸が張り裂けそうな想いを考えると、観ているこちらまで遣る瀬なくなる。
それと主人公を包みこむ周りの風景の撮り方も秀逸だ。長崎の田舎の港町、佐賀の田んぼの中の紳士服店やアパート、そして海に突き出た岬にポツンと佇む鄙びた灯台と毎朝晩に表情を変える海の情景。
李監督の捉える「日本の田舎の原風景」のようなものが、きっちりと取り込まれたのだと思う。

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映画の脚本も、原作者の吉田修一だ。
そのせいか、映画のストーリーも原作の小説とほぼ同じ様に進んでいく。これは先に小説を読んでいても、全く違和感がなく安心して映画を観ることができるということ。
これまで数多の名作小説が映画化され、その中にはどう考えても原作のストーリーをいじり過ぎて逸脱していると感じるものが多かった。今回の映画を観て、やっぱり脚本家は原作のあらすじを尊重すべきと強く感じた。
いや、あくまでも小説は原作であって、映画を作るときは脚本家と監督が別物として構成していくという考えもあるかもしれない。
でも僕は反対だ。原作者もそれを許すべきではないと思います。

ということで、ストーリーは小説とほぼ同じなので、その感想は小説の時と同じです。ただ映画のほうが、最後の祐一の想いがより強く描かれたかな。良かったです!




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