呑む気オヤジ/蔵王山麓蓬莱庵便り

蔵王山麓暮らしのオヤジの日記。合唱も映画もドライブも温泉も、たまには俳句も・・・😄

呑む気父さんの読書感想文・亥01 「卒業」

2007-01-23 | 本の話
卒業

新潮社

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♪「卒業」重松清 著 新潮文庫

また重松に手を出してしまった・・・。
いつもしばらく読むまいと思うけど
本屋で見かけると、どうしても気になって手に取ってしまう。
重松が描く親子関係や夫婦関係、それから近親者の「死」は、あまりにリアルだ。
読み手の心を、グリグリと締め付けるんだな。
前にも話したけれど、重松は「自分の小説は悩んでいる人の解決には役立たない
ただ同じように悩んでいる人がいるんだなと分かってもらえればいい」
というようなことを言っていた。
そうなんだよね、解決や癒しにはならないんだ。
でも「共感」は得られるかなぁ。

今回も短編集。
相変わらず上手いね。でも今回は泣かなかった(泣けなかった?)よ。

「まゆみのマーチ」
母親の臨終を見守る兄妹。
妹は小学校の頃登校拒否となるが、母親は一切そのことを責めなかった。
兄は母を非難するが、今自分の息子が引籠もりになってしまって・・・。

「仰げば尊し」
頑固一徹の高校教師だった父親が余命幾ばくもなく
在宅で最後を看取るため、家に連れ帰る。
小学校の教師である息子は、「死」に興味を持つ教え子を
死の床に就く父親に合わせてやるが・・・。

「卒業」
妊娠中の妻を残して自殺した友人。
父の死後に生れた娘が、中学生になって訪ねてくる。
娘は父親のことをいろいろ聞きたがった・・・。

「追伸」
6歳の時に母親を亡くした小説家。
再婚した父の相手を一度も「母さん」と呼ぶことなく、40になってしまった。
エッセイには、子供の頃の思い出から架空の母親を作り上げてしまう。
その義母も年老いて・・・。

今回の文庫本には巻末の「解説」がない。
重松自身が望んで「文庫本のためのあとがき」を掲載したそうだ。
これ、いいね。
評論家が分かったような風な解説を書くよりは
作家本人の、自分の作品に対する思いなどが読めるのは、よっぽどいい。


コメント
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