ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2021.7.7 エンハーツ17クール目さらに減量13回目投与後2週間後のこと 七夕、ワクチン初回接種、恩送りを誓った日

2021-07-07 22:19:27 | 日記

 七夕の水曜日。気の毒なことに、近年ろくに逢瀬が叶っていないのではないかと思う織姫と彦星である。気象予報士さんいわく、この10年で晴れだった七夕は3日だったという。
 朝からじっとりとした湿気。霧雨が降っている。

 今日は午前中出勤し、午後から休暇を頂いて1回目のワクチン接種だ。
 昨夜は、日付が変わると同時にPC前にスタンバイして2回目のワクチン予約をした。2回目も初回と同じ屋外会場のみ「残り僅か」(1枠)で空いていたので、ひとまずそこに入れた。
あとは折に触れて近くの会場のキャンセル待ちをチェックしたいと思う。

 新薬エンハーツが認可されて1年余りが過ぎた。
 検索しても、以前は殆ど見当たらなかったエンハーツ治療をしながらブログを書いている方が、ちらほら引っかかるようになってきた。ある方の記事によると、ワクチン接種はエンハーツを打つ1週間前から3日前ならOKとあった。つまり私の場合、1週間前の今日から3日前の日曜日まで、5日間限定である。
 一方、居住市では土曜日は接種を実施していないので、接種可能なのはエンハーツ直前の平日3日間と日曜日の4日間のみ。殆ど身動きが取れない。元気な人は3週間のうち土曜日を除いた18日間から選べる。4対18。圧倒的に不利である。厳しいなぁ、と思う。

 まぁそんなこと嘆いても仕方がない。とにかく7月中に2回の接種を終えることが出来れば万々歳だ。8月の半ば頃には、外出等のハードルもこれまでより低くなるかもしれない。
 だからといってマスクや手洗いが不要になるわけではないし、三密も回避しなければならない。それは当然だけれど・・・・。

 予定通り、お昼過ぎに職場を出、私鉄とJRを乗り継ぎ、バスへの乗り換え駅へ。ここのコンコースにあるカフェで急いでランチを摂る予定だったけれど、コロナ禍のせいかクローズしていた。もう一軒のカフェは満員で入れなかった。
 やむなく、駅を出て駅前のカフェに入った。こちらも混んではいたけれど、席を確保した後、列に並んで、急いで一口サンドイッチとカフェラテをお腹に入れて、バス乗り場に急いだ。

 バス乗り場は長蛇の列。乗る予定のバスは7分後。あと4分で到着するという電子情報が流れていた(後でわかったことだが、このバスは4分到着が遅れていたそうだ。)。列のかなり後ろの方だったので、30分揺れるバスに立ちっぱなしはきついな、と思いつつ、バスが到着したので行き先を確かめて、流れに乗るようにバスに乗りこんだ。
 普段なら初めて乗るバスの場合、必ず運転手さんに「○○停留所には止まりますか」と尋ねるのだけれど、後ろ乗りで混雑していて、とても運転席まで移動して戻って来る余裕がなかった。果たしてバスは皆が乗り込むとすぐに発車した。

 あれ、まだ定刻まで2分ほどあったのでは、と思った。私の時計では確かに定刻だったけれど(2分進んでいるのである。)、不安になって隣に座っていた私より少し年上と思しき女性に「○○には止まりますよね?」と確認すると、「え、行かないと思いますよ」とのお答え。青くなる。
 急いで運転席まで行って、「○○には行かないですか。」と訊くと「行かないですよ。」「すみません。間違いました。次で降ります。今から駅に戻っては間に合わないので、次の停留所で後から来るバスを待ちます。」と言うと、「次の停留所にはそのバスは来ませんよ。全く別のルートだから。」との答え。さらに青くなる。

 「ワクチン接種で○○に行きたいのですが」と言うと「このバスでも××の停留所から1キロ弱で行ける筈だからナビでも見てそこで降りて。」と言われる。席に戻ると、心配した隣の女性から「ワクチン接種に行くの?」と訊かれ、「はい」と答える。
 運転手さんから言われた停留所を言うと、その女性が「私は△△停留所で降りるけれど、そこからタクシーを呼んであげる。」と仰る。

 余裕を持って出たので、予約終了の時間まではかなり時間があるので歩きますと言うと、「それなら、運転手さんの言う停留所から歩くのはわかりにくい、少し遠いかもしれないけれど、△△停留所からの方が分かり易い。」と色々説明してくださる。

 けれど、私にとっては全く不案内な場所なのと気が焦っているため、説明が頭に入ってこない。要は女性が降りるバス停で一緒に降りてタクシーを呼ぶか、そこから15分ほど歩いて行くかどちらかのようだ。ご親切に地図を書いてくださる。

 間もなくして女性と一緒のバス停で降りて、目印を教えてもらってお礼を言って歩き出そうとすると、後ろから別の女性に声を掛けられた。
「すぐ後ろに座っていました。とてもお困りのようですが・・・」と。「お騒がせして申し訳ありません。ワクチン接種に行く予定だったのですが、乗るバスを間違えてしまって、歩いて行く道を教えて頂いたので・・・」と言うと、「ああ、そうでしたか。入院でもされるのかと思いました(乗る筈だったバスは大きな病院を経由する)。○○までは歩くとちょっと遠いですよ。良かったらお送りします。家がすぐそこなので」と仰る。

 「困った時はお互い様だし、せっかく予約したのにもし予約時間に遅れて打てなかったら大変だから、会場までお送りしますから、どうぞ遠慮せずに。」と。
 初対面の方にそんな甘えていい筈がない、と一緒に横断歩道を渡り、「ありがとうございます。大丈夫です。歩いていきます。」と言いながら暫し一緒に歩く。

 すると本当にすぐ行ったところにその方のお宅はあった。表札を拝見するとTさんと仰る。住所は出ていなかったのでメモするわけにもいかず。
 「ちょっと待っててくださいね。」と仰り、家の中に入ってキーを取ってきて、すぐに車を出してくださった。「皆、コロナで大変な思いをしているのよね。私も夫もそこで既に2回打ちました。それで今日は久しぶりに実家の○○県に住む母のところに行き、帰ってきたところなのよ。」と仰る。いやはや、もう恐縮しきりだけれど、地獄に仏とはまさにこのことだろう。

 全くもって間抜けな私。嗚呼、自己嫌悪。もし私が同じ立場だったら、見ず知らずの方にこんなに親切に出来るものだろうか。しかもこのコロナ禍で。
 確かに車では5分ほどの距離ではあったけれど、仰るとおり軽々と歩ける距離ではなかったことが分かった。タクシーを呼んでもすぐ来るかどうかもわからなかった。「本当にありがとうございました。」と最敬礼して、「お礼状を出したいのでご連絡先を教えていただけませんか。表札のお名前だけ拝見したのですが・・・」と言ったが、「いいのいいの、気にしないで。」と。
 結局、自分の名前をフルネームで名乗って重ねてお礼を言い、接種会場の入り口でTさんの車が見えなくなるまで見送った。
 時計を見ると、予定したバスに乗って来るよりも10分近く早かった。

 受付は建物の外。日よけのテントが貼られてパイプ椅子が10数客並んでいた。座り切れない人は立って待つ形。だから、口コミには早く行き過ぎずにオンタイムが良いとあったのだ。私の直前の受付予約枠の人たちがほどなくして受付開始になり、ようやく椅子に座ることが出来た。かなり暑い。立っていたらクラクラしてくる。高齢の方はこれでは体温が上がってしまうのではないかという状態だ。

 15分ちょっと待ち、時間通りに受付がスタートした。手指を消毒し、手首で検温。6度8分で問題なし。それからプレハブの建物内へ移動し、受付。入り口で身分証を出し、書類チェックを終える。続いてビニールカーテン越しに医師の問診。そして接種のブースへ誘導される。

 ブースから出ていらしたのは女性の看護師さんだろうか。「私は利き手が右で、左はリンパ節を取っているけれど、圧迫するわけでないのでインフルエンザの予防注射も最近はこちらです。」と左肩上に打って頂く。一瞬チクっとはしたけれど薬の量はそれほど多くなかったし、普段から針刺しには慣れているのでノープロブレム。
 予約時間開始からものの3分で終了した。そこから書類を渡して、経過観察のスペースへ移動。15分経つと名前が呼ばれ、クーポン券と1回目接種の控えが手元に戻ってきた。
 一緒に提出した基礎疾患申出書は保健所に送られるという。受付から20分もせずに出口から出られた。

 経過観察で待っている間、大柄な男性が椅子から転げ落ちた。場内は騒然となる。担架もストレッチャーもなく、男女のスタッフ数人で床から動けない男性を運び、救護ベッドに運んでいた。本当に大変なことだ。眩暈がした、と意識ははっきりしていたようだけれど、起き上がれなかったようだった。
 
 隣接する市民センターの建物でお手洗いを済ませ、バス停まで歩く。バスは1時間に2本。次のバスが来るまでたっぷり20分ほどあった。誰もバス停で待つ人はいない。皆、自家用車で送迎もしくは自分で運転、または車椅子を押してもらったり、付き添いの方と徒歩で会場まで来ているようだった。

 帰路のバスはガラガラどころか私以外1人しか乗っていなかったが、途中にある病院等でそれなりに混んできた。予定通り30分ほど揺られ、乗り換え駅まで戻ってきた。間違ったバスに乗って駅を出てからたっぷり2時間が経過していた。
 駅のコンコースの人流はかなり多い。ぐったりして電車に乗る。乗換駅の駅ナカカフェで喉の渇きと空腹を癒す。

 結局自宅に戻ってこられたのは定時に帰宅する時間より少々早い時間。生協のお届け品を取り入れて収納したら、またまたぐったり。腕の痛みは今のところまだそれほどではないが(打った方を下にして横になると体重がかかって痛むが)、少し頭が重い。これはこの高湿度の気候の所為もあるだろうけれど。

 さて、七夕というと思い出すことがある。2008年7月7日。もう13年も前のことになったけれど、この日を今もお世話になっている病院で迎えた。2泊3日、ハーセプチン投与開始のための入院だった。
 主治医が七夕だから願い(ハーセプチンが効いて腫瘍が小さくなること)が叶いますよ、と言ってくださったのをよく覚えている。

 初回投与後お約束通り、発熱し、頭痛も酷く夜は眠れず、げっそりだった。けれど、その後は若干疲れやすいことはあれど、本当に穏やかに日々を送ることが出来た。
 それから4カ月ほど毎週の投与を続けたけれど、ハーセプチン単体ではやはり力不足ということで、11月にはまた入院してタキソテールを上乗せ治療。
 初回投与2週間後には好中球減少症(白血球1,100、好中球は0.5パーセントの55だった。)による感染、高熱で水も飲めなくなり緊急入院になってしまった。入院中は自分の葬儀を自分が幽体離脱して見ている経験もし、今だトラウマとなっている。

 以来単体、カドサイラ、エンハーツと形は変えながらハーセプチンには13年以上お世話になり続けている。この薬がなければここまで、いのちが繋げたとは到底思えない。

 それにしても、今日は2人の女性にご親切に助けて頂いた。この恩はどなたかに送らなければ、と強く思っている。
 お名前も伺わなかったバスで隣の席にいらした方、会場まで送ってくださったTさん、ご親切に本当にどうもありがとうございました。
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