昨夜は日付が変わってからの就寝になったが、さすがに良質な睡眠を、がコンセプトのホテルだけあって寝具がとても良く、5時間半ほど連続して眠れた。今日もカーテンの隙間からの朝日で目が覚める。
昨日ほどのいいお天気ではない。外気温は6度。寒い。曇り一時雨の予報である。お天気が安定しない模様だ。外の景色を見ながら足湯を済ませ、朝の連続テレビ小説を視、荷物をあらかた整理する。
今朝もホテルまで迎えに来た息子と合流して、駅ナカでゆっくりとリーズナブルなモーニングセットを頂く。お腹は落ち着いていて、快調なのでほっとする。
今日は昼食を摂ったら早めに帰京する予定である。遠出をしたりゆっくり観光をしたりする予定も時間もない。では、と百貨店好きな息子に付き合ってウインドウショッピングでもするか、ということに。一番大きな百貨店は11時オープンだというので、まだ早すぎる。ホテルをチェックアウトして地下鉄で10時オープンの別の百貨店を目指した。
月曜日のオープン直後、折しも新型コロナウィルスの影響で外国客は少なく、お客さんよりも店員さんの方が断然多い。こんなにゆったりのんびり見られていいものかと落ち着かない。ハイブランドのショップを冷やかしながら、昨日購入したバッグの形違いの同じ色使いのものがディスプレイされているのを見つけ、いい買い物をしたな、とちょっとテンションが上がる。
途中、生の桜があしらわれた素敵なフォトスポットがあった。夫が写真を撮ろうとスマホを取り出そうとしたら、さあ、大変!スマホがない、のだそうだ。息子と私は顔を見合わせる。ゆっくり落ち着いて探して、と言うが、ポケットもバッグをひっくり返してもどこにもないという。
皆で顔面蒼白。とにかく電話を鳴らしてみたが、近くから音は聞こえない。延々と鳴らし続けたけれど、誰も出ない。どこに忘れてきたのか全く覚えがないと言う。忘れ物大王・・・またしてもの大失態である。ホテルなのか、地下鉄のシートなのか、とりあえず両方に連絡するか、と途方に暮れたところで、私の携帯が鳴る。
電話は06から始まっている固定電話だ。出ると、ホテルからである。もしや・・・と訊くと、部屋に忘れ物があり、とのこと。間違いなく夫のスマホである。ああ、神の助け・・・。「ありがとうございます。今まで気づかず、今しがた電話を鳴らしたのですが、ちなみにどこにあったのでしょ?」と訊くと、部屋の充電器に刺さったままで、お掃除の方がフロントに届けてくださったとのこと。荷物も預けているので、午後間違いなくピックアップをします、とお礼を言って電話を切った。
それにしても地下鉄に忘れていたなら、終点の拾得物管理場まで取りに行かなければならなかったというし、そこにも見つからなかったら警察に届ける必要もあっただろう。本当に、我が家の忘れ物大王の忘れ物症候群はだんだん笑いごとではなくなってきた。こんな夫を遺して死ねないでしょう、と改めて思う。
メンズのあれこれを見ながら小一時間で全館を見終わってしまう。ここで急に腹痛。案の定また下痢である。一日おきのこの急襲はどうしたものか。しばしお手洗いに籠り、ようやく落ち着いたところで百貨店を出ようとすると、館内では雨が降り出した時の音楽が流れている。インフォメーションで傘を借してくれるというので、通りに出る。天気雨のようだが、結構大粒の雨が落ちている。気温も低い。
少し歩いて、スーツには定評のあるお店に入る。ビルの3階がスーツ売り場なのでご案内します、とエレベーターに乗る。ブラックスーツを・・・、と言うと、漆黒の素晴らしいものが出された。ジャケットだけでも羽織ってみたい、と息子が言う。さすがに素敵ではあるが、お値段も素敵で、息子の2か月分のお給料相当である。サラリーマン生活数十年の夫も着たことのないような高級品だ。一生ものとしていくらかこちらが補助するにせよ、さすがに即決は出来ないね、ということでお礼を言って一旦お店を出た。
隣の駅まですぐなので歩いて別の百貨店も覗いていこうと、息子が借りた傘を返しに行って戻ってきた。止んだと思った雨はまたパラパラと落ちてくる。地下道に入って緊急避難をして、別の百貨店に入る。ここでも少しだけ冷やかしてから、レストラン街を目指した。
私はお腹が空っぽでとてもではないが食欲がない。2人はお寿司が食べたいと言い、私もうどんすきの鍋雑炊が頂けるようなので、入店。まだ早めの時間だったので待ち時間もなく、小上がりのゆったりした席に座り、今回最後の3人揃ったランチタイムだ。廻るお寿司でない(!)美味しそうなお寿司の数々を横目に見ながら、私は一人用の鍋が沸騰するのを待ち、息子と夫に取り分ける。野菜とおうどんをちょっぴりだけ頂き、海鮮やらお肉やらの具材は全部息子に横流し。気持ちよく食べてくれるので有難い。雑炊も2人にたいらげてもらって、お出しの効いたスープをゆっくり飲んで様子見。
食後は再び地下鉄でホテル最寄り駅を目指し、フロントまで。スマホを返して頂き、夫が受領書を書いて荷物も引換、お礼を言ってホテルを後にした。今回はチェックインの際にも支払金額の行き違いがあり、ご迷惑をかけていた。本当に最初から最後まで世話の焼ける客であった。
予約した新幹線まで30分弱。駅ナカでお土産を見繕い、息子の見送りを受けて、改札で別れた。中でしか買えない今晩の手抜き夕食用の豚まんやチマキなどもゲットし、定刻通り新幹線に乗り込んだ。
車内では柴崎友香さんの「かわうそ堀怪談見習い」(角川文庫)を読んだ。帯には「何度かっても元の古書店に戻ってしまう本・・・。知らない人からの奇妙な留守電・・・。思いだせない記憶・・・。そして、日常が歪み始めるー。」とある。解説は藤野可織さんが書いておられるが「私たちを迷子にしてしまう、恐ろしい本だ」と言う通り、不思議な世界に迷い込まされていく感じ。ゼロ「窓」から始まり、マイナス一「怪談」を経て二十七「鏡の中」までのお話しが断章の形式で連なっている。最後の話は文庫版のために書き下ろされたというが、この小説の中で最も怖いと藤野さんが言っておられる通り・・・気になったら是非お読みください。
夫は車内販売で珈琲を頂いていたが、私はひたすら静かにお腹にストールを巻きながら、ぬるくなったジュースをちびちびと頂いて水分だけは補給した。往路では見えなかった富士山が、頭は雲に隠れていたが、青い空のもと雪を被って美しかった。関西は曇っていたが、こちらはいいお天気だ。
定刻に降車駅に到着。ホームに降りると、とんでもない強風で飛ばされそうになった。なんと寒いこと!
順調にJRに乗り継ぎ、席も確保出来て最寄り駅まで。タクシーに乗って普段定時に仕事を終えて帰宅するより若干早めに家に到着出来た。
2人で手分けをして大車輪で片付け。洗濯機を廻し、行きに干していった洗濯物を畳み、収納し、洗濯物を干して、一連の片づけを終えた後は、手抜きの夕食の支度。さすがに朝食以来ろくに食べていなかったので、お腹がペコペコ。昼はお手洗いに駆け込むのが嫌だったので食べないでいたが、帰宅すればその心配もない。ほっとしてお腹に入れた。
ということで、あわや・・・のこともあって肝を冷やしたが、無事2泊3日の関西の旅から帰ってきた。明日からはまた新しい1週間。週末の祝日も土曜日も出勤。長い1週間になりそうだ。