alternativeway

パリ、カフェ、子育て、サードプレイス、
新たな時代を感じるものなどに関して
徒然なるままに自分の想いを綴っています。

京都喫茶物語 朝のゴゴ

2012年03月06日 | パリのカフェ的空間で

 京都のことを思い出していたら昔「コーヒー文化学会
ニュース」に書いた原稿が出てきました。
まだ本も形になってなかったころのお話です。

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 今朝思い立って自転車をぐーんとこいでゴゴまで行ったら
久々のモーニングに間に合った。モーニングなんていつ
ぶりだろう?もしかして去年からもう来ていなかったのかも。
あの頃はいつもコーヒーとバナナ、言わなくっても
出してくれてたお姉さん。「ここはねえ そんなあなたたちの
愚痴を聞く場所よ~」と言ってくれてたお姉さんに
会いたくなって 自転車をわざわざこいで向かって行った。

 鴨川沿いには桜が咲いて、悲しい心も少しはましに
なってゆく。昔は桜があんまり好きではなかったけれど
いつも春爛漫の陽気にのりきれない自分がなんだか
嫌だったけど でも今は 少しの桜を見るだけで
ちょっとは気分が明るくなる。京都はそういうとこがいい。




 ゴゴのドアをカランと開けると意外に店は混んでいて
ああそうだ、ここは朝が一番混むのだったと思い出す。
いつものわたしが座る席にも人は居たから、心置きなく
カウンターへと向かって行ってモーニングを注文する。
お姉さんがちょっとかまってくれたから、今大変なんだと
こぼしてみると「すんごい元気なさそうな顔!どうしたの~?」
と言ってくれる。そうなんだ そんなに元気なさそうなんだ。

 ゴゴにはいっつも来ていた訳で お姉さんは色んな顔を
知っているから そして色んな会話を知っているから
なんだか話が通じやすい。しばらくたって 常連さんとの
会話の仲間に入れてもらうと、真ん中の席にいたおじさんと
話が合って、やろうと思って持っていったことも
手につかぬまま、かなり長く語ってしまう。

 ここに来て魅力を感じたことの1つに、常連さんが
京都育ちなことがある。私にとって遠い存在の人達が
ここにはいつも通って来てて 当たり前に京都がある。
そんな彼等に少ーしずつでも京都の世界を教えてもらって
紅葉や花の名所を教えてもらい 会話に参加させてもらう。
そんなことがとても嬉しい。

 そのおじさんは娘さんたちの教育についての話をしてて
最近興味を持ってた「ダム女」と「付属」という私立の
学校の違いを説明してくれる。それから娘さんの留学の
話や受験の話、早稲田の話も出て来たなーと思っていたら
留学中の娘さんが政治学にも興味があるということで
それならば、、、とパリ政治学院についても触れてみた。

 おじさんはそんな情報を得られた事が嬉しいらしく
長い事語った後で店を出る時も「いい話ができてよかった」と
挨拶をしてくれた。お姉さんに愚痴を語りに来たはずなのに
結局おじさんと教育話にあけくれて ちょっと感謝も
されてしまって 自分が出てきて面白かった。
お陰で少し元気になって やっぱりゴゴはいいよなー
こんなにもみんなが触れ合う そんなカフェは
他のどこでも見たことがない。自然な会話 自然な流れ
そしてみんながゆるりとつながってゆく。素敵なカフェだ。

 帰りがてらゴゴの近くにできたカフェを横目に見る。
朝からやってるみたいだけれど、まだお客さんはいないよう。
そうだよな この一帯で朝のゴゴに勝てるには まだまだ
厳しそうだよな。だって朝はゴゴがいい。

 以前ゴゴで話したおばあちゃんは「この辺の喫茶店に
何軒か行ってみたけどねえ ここが一番元気があって
楽しそうだからここに来るんだ」と言っていた。
そんなおばあちゃんと触れ合う若者。私には当たり前の
早稲田の世界はここでは遠くテレビの中で、私には
驚きで満ちた京都の世界がここでの日常ある世界。
そんな中に入って行けて いつでも受け入れてもらえる

 そういう点では 午後のゴゴより 朝のゴゴのが
よっぽどか面白い。人と人との交差点。この店を後にするとき
「さよなら」は「行って来まーす」に変わってる。
(2007年4月)

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