海外旅行は面倒くさい。特に子連れとなるとなおさらだ。
母親たちはこぞっていう。家族旅行?あんまりもうしたくないかな、
だって一番疲れるのは私なんだもの・・・
実際に用意をしてみると、子連れ海外は本当にしんどい。
1人だったら?私は18歳のとき2週間ほど憧れのフランスに旅立ったけど
その時は1泊目の宿しか予約せず、そんなわけなのでもちろん
プランもその場で適当だった。今考えたらよく
そんなものを親が許したなと思うけど(実際には勘当されかけた)
同じ私が子連れで行こうとするとその違いに驚かされる。
もちろん宿の予約を全部とるのは当たり前。
何かあったらいけないからと長時間の移動には気をつけて
お金もないのに一等車をとってしまった。
海外で子連れでパニックになることほど人生最悪な
事態はないから、すべての宿の具体的な地図は
プリントしておき、アイフォンやパソコンのマップにも
しっかり同期させておく。海外ではなぜかWi-Fiがつながらない、
そんな事態がよくあるからだ。
美術館へ行きたくても炎天下子連れで並ぶのは恐ろしい。
はい、だから事前予約。たとえ予約料金がかさんでも。
そんなわけで香港での飲茶を予約し、バチカンの美術館を予約し、
ベネチアの宿の場所を確かめるために電話をかけ、と
めちゃくちゃ忙しい日々を過ごしていた。そして思った。
もう、やっぱり行きたくない・・・・
お金持ちの奥さんで趣味が旅行というならともかく、
子供を1人で育てている私はとにかく働かなきゃいけない。
だから出発直前の夕方まで仕事をし、急いで帰宅し今度は
子供をひっぱって羽田へ直行。もはやクタクタで
結局のところ準備も完璧には至らない。
ああもう海外なんて行きたくない、そう羽田のロビーで思っていた。
どおりでみんなしないわけだ、こんなに面倒臭いこと・・・
ところが出発してみると、これでもかという事前準備のおかげで
物事は随分スムーズだった。今回は子供が生まれてはじめて
フランス以外の旅だったので未知の世界ばっかりだった。
目的は公共空間、特に広場とカフェの関係性を探るために
広場といえばすぐ言及されるイタリアへ。特にシエナのカンポ広場と
昨年非常に感銘を受けたベネチアのサンマルコ広場に行くのが主な目的だった。
そしてどういうわけだか、せっかくだからとトランジットで香港に2日も行くことになり
理由はもはや覚えていないが、ロンドンから帰るチケットにした。
というわけでおまけ的に香港とロンドンがくっついているが、
香港は初めて、ロンドンは1日行ったことがあるだけという、ほぼどちらも
未知の世界で、通貨も違う!しかもおまけ的だっただけに
事前調査が微妙だったのでちょっと大変だったけど。
それでもほとんど何も問題なく我々の旅は実行できた。
それはまるで誰かが企画した旅を、はいそうですか、
今日はたしかこれでしたね、とこなしていくような感覚だった。
想像、企画、実行と、全部1からこなしていくのは想像以上に
大変だった。けれども流れがスムーズにできていると
あとはそれに乗ればよい。旅をすると疲れというのは想像以上で
子連れ旅行でその場で考えるなんてほとんど無理な話だろう。
荷物の整理、子供と荷物とともに歩き、炎天下でクタクタになる。
そんな中、やっぱりあの美術館に行こうとか、あの町にいこうとか、
何かを調べようという気力すら起こらない。私の場合は
事前に組んだものを遂行するだけで精一杯。
疲れていて一度朝6時半出発のツアーをキャンセルしようかと
思ったけど、すでにキャンセル料が発生する期限を過ぎていて
それを悩み、電話をかける手間を考えるくらいなら
もう行った方がマシだ!と無理やり参加した(そして素晴らしかった)
だからやっぱり、子連れ旅行は事前準備こそが大切だ。
そしてできるだけお互いの身体に負担をかけないように、
2泊以上は同じ宿に泊まりたい。私たちは今回キッチンのある宿に
かなり滞在し、夕飯は手作りで安く済ますことができた。
そうするとワインを買って、余ったらペットボトルで持ち運び、
また次の宿で美味しくいただくということもでき、
ワイン、パスタ、ドライトマトや塩とともに旅をして
各地でちょこちょこ生ハムやらジェノヴェーゼソースやらを
買い足して料理をするのが面白かった。
街中に泊まった場合は早めに夕飯を食べ、また夜の散歩に繰り出すことも。
そうすると素晴らしい景色は堪能していられるのにお金は
ほとんどかかることなく、なかなかいい経験だった。
イタリアでは夜の8時を過ぎたころから多くの人々が
街に繰り出し、パッセジャータといわれる、目抜き通りや
広場でのゆったりした散歩を楽しんでいる。そこで
夕飯を食べると目玉が飛び出る金額だけど、夕飯後の
デザートにジェラート1つくらいなら2人で600円くらいで済んでしまう。
蓮太郎はベネチアのサンマルコ広場の生演奏が聴けるカフェが気に入り
ベネチアにいる時はいつも「ママ、今日もサンマルコ広場に行こう!」と
嬉しそうに言っていた。サンマルコ広場のカフェは世界一高く、
演奏料金もとられるのでどこでも2人で3000円程度はしてしまう。
それでもあれだけの美しい景色を前にして生演奏を聴きながら
のんびりとした時を過ごし、自分の好き勝手なことをするのが
ゆるされる、あれほどの自由で素敵な時が過ごせる場所は
なかなか他にはないと思う。またあそこで時間を過ごせるのなら、
これからはどうでもいいようなものにお金を払うのを極力減らして
またあの場所に戻りたいと心底思う。
イタリアの広場は素晴らしかった。息子は広場に佇みながら、
「ママ、広場っていうのはゼロ歳から99歳の人まで楽しめる場所だね」と
言っていた。広場は誰にでも開かれている。お金やその気がある人は
カフェやレストランでお金を払い、優雅な時間を過ごせばいい。
でもそれができなくっても、広場は誰にでも開かれている。
生演奏だって目の前で立ち聞きをすればいい。そんな人たちは
いつも大歓迎で、彼らがいるからカフェは賑わいを増し、他の
お客さんを引き付ける。広場にカフェがなかったら?ただの
通り道に成り下がってしまうのではないだろうか。
イタリアのすぐれた広場が人々に愛される広場たりうるのは
カフェやレストランの生き生きした雰囲気があってこそだと思う。
その辺をもっと探りに、これからは研究を進めていこう。