鳴きさえしなければ、猟師に撃たれなかったのに!という意味の諺だが、
「出る釘は打たれる」、「寝ていて転んだ例はない」、「高い山の頂上は風が強い」、「沈黙は金なり」、「寡黙」、「男は黙ってサッポロビール」などなど、黙っているほうが利口だよ!と教えている諺を探すと、枚挙(まいきょ)に遑(いとま)がない。
殿様、親、上司の言うことを素直に聞いて、黙ってコツコツ働き、男は一日に3言、口を開けばそれで充分だと、日本人は教えられてきた。そして国際社会になった。時代は変わり、話すことの重要性を説き始めた。だが、依然として、一方的に話し過ぎる人、そのまま沈黙を保つ人、話し下手と、大して変化は見られない。
話し方がわからないから、困った人を助けられない。話し方がわからないから、家族間の対立が生まれる。話し方がわからないから、先生と生徒の関係がうまくいかない。話し方がわからないから、たくさんの誤解を招いたり、悪い奴に騙される。日本語会話が満足にできないのに、外国語を学んでもうまくなるはずがない。だから、英語を教える先生が英語会話を教えられない。今、日本人に最も大切な学問は対話力である。