語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【朝日俳壇抄】地響きに滝の重さのありにけり ~5月29日~

2017年05月29日 | 詩歌
【凡例】☆印は共選作。①、②以下丸文字は一席、二席等。

<長谷川櫂選>
 ①帰省子の未だ東京の匂ひせず (可児市)豊田正己
 ②花茣蓙(はなござ)や丸太ん棒のやうに母 (我孫子市)藤崎幸恵
 ④ウクライナ美しかりし麦の秋 (川崎市)竪山道助
 ⑥草笛の拙(つたな)きことも愛さるる (奈良県田原本町)小林博明
 ⑩薔薇剪(き)つて今日でなければならぬこと (高松市)桑内繭
 【評】一席。春に東京へ出たばかりの娘あるいは息子。まだ子どものまま。二席。昼寝の図。萬鉄五郎の裸婦のように、たくましいお母さんである。(後略)

<大串章選>
 ①少子化に抗ふごとく鯉のぼり (香芝市)矢野達生
 ③☆人類史角番(かどばん)にあり夏に入る (東京都)望月清彦
 ⑦鯉のぼり風を磨いてをりにけり (塩尻市)古厩林生
 ⑩傘雨忌や生家に残る句碑一つ (愛西市)小川弘
 【評 第一句。青空に翻る鯉(こい)のぼり。「抗ふごとく」に力感あり。少子化に負けてはならない。(中略)第三句。一触即発を懸念させる昨今の世界情勢。まさに「角番」である。

<稲畑汀子選>
 ①地響きに滝の重さのありにけり (熊本県菊陽町)井芹眞一郎
 ②着くまでを残る期待の花吉野(大分市)高柳和弘
 ⑦何もかも心機一転なる五月 (北海道鹿追町)高橋とも子
 ⑩借景の山万緑を尽しをり (四国中央市)森實英子
 【評】一句目。大きな滝であろう。滝壺(たきつぼ)に落ちる水音が地響きを立てる。豪快な姿まで見えるような一句。二句目。桜にまだ期待を持って訪(おとな)う吉野山。作者の心情の推移が描けた。(後略)

<金子兜太選>
 ①平和こそ山川草木皆笑ふ (川崎市)神村謙二
 ②陽炎や全ての戦争許すまじ (飯塚市)釋蜩硯
 ⑥☆人類史角番にあり夏に入る (東京都)望月清彦
 ⑨からだごと笑ふ乙女の立夏かな (海老名市)川上益男
 【評】神村氏。無邪気に詠(うた)いきった平和の句。釋氏。陽炎の野。うらうらと戦う気配などまったくない。(後略)

□「朝日俳壇」(朝日新聞 2017年5月29日)
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 【参考】
【朝日俳壇抄】聖五月人には青の時代あり ~5月22日~
【朝日俳壇抄】戦後よりまた戦前へ四月馬鹿 ~5月15日~
【朝日俳壇抄】空爆の次は花見のニュースかな ~5月7日~
【朝日俳壇抄】鞦韆は蹴るべし愛は返すべし ~5月1日~


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