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語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】『この国を動かす者へ』の序文と後書きの凄み

2016年03月09日 | ●佐藤優
 (1)序文と後書きでは、他の著作に増してドスを利かせている。

 (2)序文
 『ぼくらの頭脳の鍛え方 必読の教養書400冊』【注】で立花隆はいう。
 <大学の教養課程でも、「暗黒社会論」、「悪の現象学」的なコースを設けるべき。悪徳政治家、悪徳企業のウソを見破る技法、メディアに騙されない技法を教えることが現代の教養には欠かせません>
 官僚や政治家に関する「悪の考現学」が本書。
 <大学の授業では、決して教わることのない、官僚や政治家の醜悪、国際政治の舞台裏における虚々実々の駆け引きについて本書に具体例が山ほど記されている。サラリーパーソンはもとより、政治や外交に関心をもつ大学生や大学院生に是非読んでもらいたい。真理は具体的だ>

 (3)後書き
 <われわれは頭のできがマスコミの連中とは異なる。マスコミに批判されるときの方が外交はうまくいっている>
 ・・・・と、うそぶいた上月豊久・ロシア大使館公使が<三味線が上手な芸者さんに入れあげ、この芸者さんの自宅まで押しかけた事実(情報源は鈴木宗男衆議院議員。ちなみに、上月氏がこの芸者さんを呼んで赤坂で遊んだ経費は鈴木事務所につけ回した)について書く>。
 <もう少し、政治に絡む話ならば、現在カナダ大使をつとめている西田恒夫氏が「小沢一郎(民主党幹事長)はアロガント(傲慢)だ。こんな野郎は、早く失脚してしまった方が日本のためだ」と放言していた事実を書く>
 <最近は谷内正太郎前外務事務次官に近かった外務官僚に対するネガティブ情報が頻繁に寄せられる。このような情報について、事実であり、それを公表することが国民の知る権利に貢献すると私が考えるときは、使わせていただく>
 <だし、情報提供者の思惑に乗って「アサヒ芸能」の誌面を汚すようなことはしない。仮にガセネタを私に流していたことが明らかになったときは、その情報を提供してきた外務官僚の実名を明らかにした上で、そいつにきわめて不快な状況が生じるようにする。私もロシア人を相手に情報戦で鍛えた経験がある。そう簡単には騙されない>

 【注】「ぼくらの頭脳の鍛え方 必読の教養書400冊

□佐藤優『この国を動かす者へ』(徳間書店、2010)
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【金子勝】マイナス金利は銀行経営を圧迫し泥沼へ

2016年03月09日 | 社会
 (1)「アベノミクス」による日銀の金融緩和が始まってから3年が経過しようとしているが、いくら金融をジャブジャブやっても実体経済およびファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)がよくないのだから、効果が出るはずがない。
 円安と株価上昇で喜ぶのは輸出大企業と資産家だけで、企業の設備投資も労働者の賃金も増えず、家計の消費も冷え込んでいる。日本経済はどんどん泥沼に入っている。

 (2)今回のマイナス金利は、このように追い詰められたアベノミクスをたんとか打開しようということなのだろうが、本当の狙いは3月末の企業の決算期と7月に予定されている参議院議員選挙に向けて、一時的でもいいから株価をつり上げることだ。それで景気が上向いているような幻想を与える。
 1月29日の発表から3日でメッキがはがれた。
 2月16日から実施されたが、株価は乱高下しているし、金融機関が定期預金金利を下げるなど、すでに一般家庭にも不安や混乱を与えている。
 日銀や安倍政権の思うような株価上昇やデフレ脱却効果が出るとは思われない。

 (3)マイナス金利は、金融機関が日本銀行に新たに預ける当座預金の金利を0.1%からマイナス0.1%にするというもので、日銀に貯め込まれている260兆円の当座預金勘定のうち10兆円にまず適用されるということだ。
 預金していてもマイナスになるので、その資金が貸し出しに廻るのではと日銀は思っているようだが、そもそも新たな産業政策がなく、2015年7月から住宅投資もマイナスになっていて、貸出先がない状況だ。
 欧州中央銀行や一部の国でもマイナス金利をやってはいるが、やはり貸し出しは増えていないようだ。

 (4)今後どういうことが起きるかというと、海外投資と海外での買収などが増えていくだろう。しかし、地方の金融機関や中小企業にはそういうことができない。金融機関は収益が先細りするので、これ以上のリスクをとれないため、貸し出しを増やすことはできない。
 そうした中で、財務省、金融庁は弱い銀行をつぶしにかかる。かつての市町村合併みたいな、地方銀行や信用金庫の再編・合併。つぶれたくなかったら合併を、という流れが加速するだろう。

 (5)このように、今回のマイナス金利は銀行経営を圧迫するものだ。まるで日銀の裁量による統制経済をめざしているかのようだ。
 安倍政権は、昨年成立させた安全保障という名の戦争法制を3月には施行させ、この間、メディアを統制するような言動を繰り返している。
 この流れは、言論と金融を支配して戦争へと傾斜していった過去の歴史を髣髴とさせる。
 すでに国の借金も1,000兆円を超え【注】、第二次世界大戦中なみに財政状況は悪化している。

 (6)アベノミクスは、今後何も手を打てなくなる常態になっていくだろう。
 そのとき、政治も含めて別の選択肢を提示できないと、本当にこの国は危険な状況になる。
 新しい時代の産業や社会システムの展望が見えず、金利機能が麻痺状態になると、物資の流れが滞り、やがてストップしてしまうおそれがある。
 社会の閉塞感がさらに強まり、経済破綻が現実味を帯びてくる。

 【注】2015年末の「国の借金」(国債+借入金etc.)は、1,044兆5,904億円で、国民一人当たり823万円の借金を持っていることになる。【2016年2月10日、財務省発表】

□金子勝(慶應義塾大学教授)・談/片岡伸行(編集部)・聞き手とまとめ「マイナス金利は銀行経営を圧迫し泥沼へ」(「週刊金曜日」2016年3月4日号)
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 【参考】
【佐々木実】異次元緩和の戦線拡大で高まるリスク ~マイナス金利~
【野口悠起雄】誰が負担するのか? ~マイナス金利のコスト~
【金融】浮かび上がる二つの懐疑的視点 ~市場関係者に訊くマイナス金利~
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