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語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【食】農薬が添加物扱い ~バナナに使われるポストハーベト~

2014年02月26日 | 生活
 (1)バナナは、1903年に正式輸入され、1961年の自由化後、徐々に価格が下がっていった。今やその消費量は、定番みかんを抑えてトップの座に位置し、1世帯当たりの年間消費量は20kg(2001年財務省貿易統計)となっている。

 (2)消費量の大半は、フィリピンなど諸外国から輸送されてくる。その間にカビが発生しないよう、収穫後のバナナには防カビなどの農薬が使用される。
 収穫後の農薬(ポストハーベト)は日本では認められていない。収穫後の農薬残留は収穫前に比べて比較にならないほど多いからだ。
 にもかかわらず、日本政府はポストハーベトを食品添加物と位置づけた。輸入を推進する米国の圧力と、輸入業者に屈した結果だ。

 (3)バナナにしようが許可されている「添加物」は、
  (a)チアベンダゾール(TBZ)・・・・強い殺菌・防腐効果。1972年農薬登録、1978年食品添加物認可。輸入バナナ、柑橘類などの防腐処理剤、塗料や冷蔵庫のドアパッキン、衣料品の抗菌加工などに用いられる。
  (b)イマザリル・・・・比較的水に溶けやすく、強い防カビ効果。ヤンセン社(ベルギー)の防腐剤の商標名で、一般名称はエニルコナゾール。日本では農薬登録はなく、1992年食品添加物認可。殺菌剤、動物用抗真菌薬などに用いられる。 
 (a)は、ラットによる実験(東京都立衛生研究所の毒性実験)で、催奇形性や肝臓障害などが確認された危険度の高い農薬だ。
 (b)は、急性毒性が強く、発癌性が指摘されている。
 (a)も(b)も強い防カビ・殺菌効果を持ち、バナナにはスプレーするか、溶液に浸漬して使用される。残留は人体に影響がないほど微少と言われているが、(a)も(b)も果肉まで浸透する、と指摘されている。妊娠している女性には特に注意が必要だ。

 (4)バナナには、さらに懸念される危険性が潜んでいる。
 すなわち、消毒措置の「燻蒸」時に使用される農薬の残留だ。
 輸入時の植物検疫で害虫が発見された場合、廃棄、返送、消毒のいずれかの措置が取られる。この選択は輸入業者が行う。よって、当然ながら消毒措置が大半となる。多くの場合「燻蒸」の消毒法が取られる。
 「燻蒸」は、密閉した倉庫の中でガス化した農薬で害虫を撲滅させる。使用農薬は害虫の種類により、
  (a)表面の害虫駆除には「シアン化系(青酸ガス)」
  (b)内部まで入り込んだ害虫駆除には「臭化メチル」
が使われる。
 (a) は、揮発性が高く、残留の問題はないとされているが、残留していないとは決して言い切れない。
 (b)は毒性が高く、果肉部への影響が避けられない。

□沢木みずほ(薬食フードライフ研究家)「バナナに使われるポストハーベト 農薬なのに添加物扱い」(「週刊金曜日」2014年2月21日号)
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【佐藤優】日露首脳会談 ソチで破格の「おもてなし」 ~ウラジーミル・プーチン~

2014年02月26日 | 社会
 (1)2月8日、ソチ(ロシア)で、プーチン露大統領と安倍晋三首相が会談した。
 1時間の少人数会談の後、車で15分ほど移動し、1時間の昼食会を行った。この昼食会は、社交ではなく、実質的な話をする場だった。
 7日のソチ冬季オリンピック開会式に40か国以上の元首級が参加した中、プーチンは安部に対して破格の「おもてなし」を行ったことになる。
 米国、英国、独国、仏国など西側主要国の元首は、同性愛宣伝禁止法など露国政府の人権問題に対する対応に否定的な見解を示し、開会式を欠席した。かかる状況の中、安部が五輪開会式に出席することで、日本は「同性愛に対する法規制は露国の国内問題」という立場を事実上表明したわけだ。
 プーチンは、このことを高く評価したから、あえて昼食会を行い、「われわれは安部政権を高く評価している」ということを可視化したのだ。

 (2)もっとも、安部の五輪開会式出席は諸刃の剣だ。
 欧米諸国、特に米国から「安部首相の靖国神社参拝、ケネディ駐日大使のイルカ漁批判に対する安部首相の反論、今回のソチ訪問などを総合的に評価すると、日本の現政権は欧米と別の価値観を持っているのではないか」・・・・という疑念を招きかねない。

 (3)今回の日露首脳会談で、プーチンの今秋の公式訪問日が決定した。
 露大統領筋によれば、訪問は10月か11月だ。
 このときが、北方領土交渉の山場になる。
 それまでに杉山晋輔外務審議官とモルグロフ外務次官が、平和条約交渉に関する次官級協議を少なくともあと1回行って、北方領土に係る両国の見解の相違がどこにあるか、そのうちどの事項を首脳会談で決定するか、について詰めることになろう。
 この作業が、プーチン訪日までに決まらずに、北方領土問題に係る本格的協議を今秋のプーチン訪日で行わないという先送り路線をとる可能性も、ないわけではない。その場合、交渉は停滞し、プーチン政権下での北方領土問題解決は困難になる。

 (4)今回の首脳会談で注目されるのは、谷内正太郎・国家安全保障局長を安部がプーチンに紹介したことだ。
 安部(冗談半分に)「谷内さんは酒が飲めない」
 プーチン「酒を飲めないで、いったいどういう交渉をするのか。私の方で何とかしよう」
 ・・・・谷内局長が、安部の「個人代表」として、今後プーチンとの連絡係になることを強く示唆する内容だ。
 露国外務省を迂回し、プーチンに直接つながるチャンネルの構築を安部が試みている。
 いずれにせよ、プーチンが「私の方で何とかしよう」と述べたことは、今後、安部首相の個人代表として谷内局長を受け入れる、という意味だ。

 (5)露国側で鍵を握るのは、イーゴリ・セーチン・ロスネフチ(露国国営石油会社)会長だ。セーチン会長は、プーチンのインナーサークルの一員だ。
 首脳会談後のブリーフィングで、世耕弘成内閣官房副長官は、「ロスネフチのセーチン会長からも具体的なプロジェクトに言及があった」と述べた。
 セーチン会長が提案した具体的なプロジェクトがどの程度実現するかによって、プーチンの、北方領土問題に関する日本への譲歩の内容が変化する。

□佐藤優「日露首脳会談 ソチで破格の「おもてなし」 ~佐藤優の人間観察 第57回~」(「週刊現代」2014年3月1日号)
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