語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【経済】「JR大阪三越伊勢丹」が失敗した三つの理由 ~激化する大阪の百貨店競争~

2014年02月03日 | 社会
 (1)三越伊勢丹HDとJR西日本が、共同運営するJR大阪三越伊勢丹の再建策を発表した。
 鳴り物入りで大阪に出店し、世間の注目を集めたが、開業からわずか3年で大幅な事業縮小を余儀なくされた。

 (2)いま3万3千平米ある売り場面積の6割を撤去する。衣料品や雑貨は残し、収益性の悪いリビング関連などの売り場は縮小する。空いた場所に専門店を誘致し、同じ施設内にある専門店ビル「ルクア」との一体的な運用を行う。60億円を投じて今夏から改装に乗り出し、2015年春に再開業する。
 百貨店の売り場面積の大幅縮小に伴って、三越伊勢丹の名を取り外す可能性が高い。

 (3)失敗した理由は3つ。
  (a)オーバーストアによる競争の激化・・・・開業は2011年5月。その前月に「大丸梅田店」が増床、2012年11月に「阪急うめだ本店」が増床、2013年4月に「グランフロント大阪」が開業と、大規模な商業施設の増床や新設が相次いだ。1日当たり乗降客数は、新宿駅が計350万人であるのに対して大阪・梅田駅は200万人。一方、百貨店合計の売り場面積は、新宿が20数万平米に対して大阪は30万平米超で、明らかに供給過剰だ。

 (b)有力テナントを集められなかったこと・・・・大阪駅周辺の百貨店としては4番目(最後発)の出店となった結果、集客力のある有名ブランドは阪急や大丸などが押さていた。

 (c)売り場づくりの失敗・・・・三越と伊勢丹の売り場が交じり合ったため、コンセプトが曖昧になり、店舗に魅力を欠いた。
 「JR大阪三越伊勢丹」は、旧・三越時代に決めた案件だ。旧・伊勢丹と経営統合した後、旧・伊勢丹は大阪出店に消極的だったが、事はすでに動き出していて引き返えせなかった。店舗名に「JR」「三越」「伊勢丹」を遺したことが象徴するように、それぞれの都合が優先され、非常に中途半端な店となってしまった。
 加えて、逆風(リーマンショック)もあった。

 (4)年間売上高は、初年度は310億円、昨年度は303億円、今年度は320億円(見込み)と、当初計画の550億円を大幅に下回った。赤字が続いた結果、運営会社は債務超過に陥った。
 今回の再建策によれば、2016年3月期に売上高800億円を達成し、黒字転換する(「JR大阪三越伊勢丹」と「ルクア」の合計)。
 百貨店と専門店を融合することで、専門店だけの集合体とは異なる新しいものができる。【杉江俊彦・三越伊勢丹HD常務執行役員】

 (5)計画の実現は容易ではない。
 昨年度の合計の売上高は660億円だ。目標額までは140億円の上積みが必要だ。
 百貨店は、豊富な品ぞろえが魅力の一つだ。大幅に売り場を縮小する中、集客力を高めるのは困難だ。
 頼みの綱の「ルクア」も、好調とはいえない。昨年7月以降、毎月の売上高は前年割れが続いている。12月が、辛うじて前年とトントンだ(厳しい状況)。
 大阪の百貨店競争は今後ますます、厳しさを増していく。今年3月、近鉄百貨店の「あべのハルカス近鉄本店」(大阪・阿倍野)が全面開業する。今秋、「大丸梅田店」が大型改装を行う(検討中)。今年4月、消費増税が始まり、消費環境が悪化する(必至)。
 再建策が実現できなければ、完全撤退もあり得る。

□松本裕樹(本誌)「“百貨店の雄”三越伊勢丹が大阪で失敗した三つの理由」(「週刊ダイヤモンド」2014年2月8日号)
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