よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

シュンペーター伝

2011年02月20日 | No Book, No Life


最近日本語で出たシュンペンター関係の書の中では、やはりこれだ。以前別のところに書いておいたものを張付け。

<以下張付け>

同著の原題はProphet of Innovation:Joseph Schumpeter and Creative Destructionとなっているように、資本主義の本質を間断のない創造的破格をもたらすイノベーションであると論考したシュンペータの思想の軌跡を丹念に追った学術的かつマニアックな本だ。

過去シュンペンターに関する伝記的な著作物は2冊ほど出ているが、シュンペーターの業績を時代の文脈を追って解釈する包括性、プライベートな生活の変遷の写実性において、先行する2冊ときちんと差別化が図られていて、一皮むけた内容となっている。

マニアックさは、シュンペータ本人や彼自身が縁を持った女性、親戚などが保管していた表には出ることがなかった書簡、手紙を執着質的に渉猟し、ある程度の品位を保ちながらも大胆に表に出す記述スタイルによく現れている。グラディス、アニー、ミーア、エリザベスといった個性極まる女性達との波乱万丈、逸脱至極の女性遍歴の物語は、そのまま創造的破壊なるものを提唱したシュンペータの思想遍歴において重要な主旋律を構成している。

「人間は物質主義の浸ってしまうと甚大な損傷が生じる」(p168)と断じるシュンペーターの人間と社会に対する観察眼は犀利を極める。人間と社会の半分を構成する「女性」とのシュンペンターのかかわりあいは、シュンペンターという傑出する思想家の少なくとも半分を理解する上では有用だろう、と著者のマクローはエスプリの含意を漂わせている。

シュンペンターの主要著書を時代背景とともに解説しているのがありがたい。流石に企業史を専門とするマクローだけあって、その著述力が光っている。それゆえに、本書をもってシュンペンターが紡いだ書物、論文の良きガイドブックとして位置づけることも可能だろう。

172ページにも渡る充実した注釈もありがたい。索引や写真も充実している。本書は、シュンペータ研究者ならずとも、イノベーションを研究する人々、近代経済史に興味がある方々にとってもシュンペータの全体像を提供する良書であると確信する。

<以上張付け>



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