よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

OSS同士の生存競争とOSS的な人々

2006年09月27日 | オープンソース物語
SourceForge.netには、ざっと13万ものオープンソース・プロジェクトが登録されている。世界のどこかのだれかが、登録さえすればオープンソース・プロジェクトを立ち上げることができる。

13万ものオープンソース・プロジェクトのうち、アクティブと呼べるものは、せいぜい500件くらい。つまり、他者からオープンソースの効果、有用性を認められて貢献できれいるとされるオープンソース・ソフトウェアは全体のわずか0.38パーセントにとでまり、その他の99.96パーセントは圧倒的不人気オープンソース・ソフトウェアということになる。

さてウェブサーバ領域で圧倒的なアクティブさを誇るApacheは、勝ち組OSSのなかでも上のまた上のトップノッチ。このApache繁栄を支えてきたコミュニティのアクティブさの内実を見てみよう。ちょっとオモシロイ内実に注目したい。それは、激増しているのはコミュニティ内のディスカッションであり、ソースコードを書くコードライターの数は微増にとどまっているということだ。

・ソースコードを書くコーダは数ではなく、質、つまりコーダの能力が圧倒的に重要。
・優秀なコーダが書いたイノベーティブなソースコードには効用が生じる。
・効用が生じればイノベータ、アーリーアダプタ、アーリーマジョリティに訴求することができ、ダウンロードの件数が劇的に上がる。
・その効用がネット上でさらなる話題、議論を巻き起こす。
・と同時にコミュニティに参加するヒトが増える。
・コミュニティに参加するヒトの二乗に比例してコミュニティに参加するヒトが受けるであろう効用が増える。(ネットワーク効果)
・こうして、さらに優位なOSSプロジェクトはその優位さを体現することとなる。

ではいったいどんな人達がソースコードを書くのだろう。内発的に動機づけられたボランティア?OSS運動に共鳴する理想主義者?ソフトウェア産業版原始共産主義者?変わり者?暇人?たんなるモノ好き?オタク?プー?ヨタロウ?

すべて違う。

とくに2002年あたりを境にして、ソースコードの提供者は企業に雇用されているエンジニアが中心を占めるようになってきている。OSSの効用を作り出すことによって利益を享受しようという期待を明確に持つ企業こそが、ソースコードのソース、つまりOSS人材資源の供給元なのである。IMB,Sunといった旧プロプラ陣営の企業さえもが、こぞってOSS人材資源をオープンソース・コミュニティに注いでいる。

近年のOSSはコマーシャルな企業なくしては存在しえない。企業の利潤動機(資本主義を成り立たせる根本)がOSSを存在たらしめている。ただし、マックス・ウェーバーが喝破するように、近代資本主義は単なる利潤動機だけでは成立しない。行動的禁欲(アクティーフ・アスケーゼ)なる行動様式の安定的な裏づけが必要である。








モノゴトへの投資 ~リアルオプションと「エイヤッ!」~

2006年09月18日 | ビジネス&社会起業
コマーシャル・オープンソースの世界には面白いモノやコトが満ち溢れている。そして、この世界でのモノやコトに対するカネの使い方にはいろいろある。なにを、いつ、どこで、だれが、どのようにして、なぜ、いくらお金をかねてヤルのか?あるいはヤラないのか?

モノやコトの決め方を体系的に究明し、モノゴトのよりよい決め方をさぐろうとするのが意思決定科学(Decision Science) だ。飯を食べながらSugarCRMのマークとお互いの専門の話となった。かれはダートマスで数学を学び、ウオートンでMBAをとっている。この生粋のアイビーリーガーは、一貫してこの意思決定科学をメジャーとしてきたということを、とび色の目をキラキラさせながら話す。

そうなると話は早い。リアルオプションという共通言語、あるいはカードをお互いが持っているので、リスクをキーワードにして話は一気に進む。砂糖男たちは、日本のある特定の市場において機会に直面し、いかにリスクをとるのかというテーマで熱く語り合うことに。

さてリアルオプションとは、これからどうなるか分からないような不確実性の高い状況のなかで、後戻りできないモノゴトの意思決定の選択権や自由度のこと。まっとうなビジネスでは、こうした選択肢の存在や自由度を経済的な価値と見る。そうして、将来の期待利益とリスクを加味して見定めることで、事業評価やリスクへッジ、取引条件の設定などに活用する。

と言いながらも、笑)人間は実はリアルオプションが前提にしているような完全に合理的な行動などとれっこないよ、という仮説も有力だ。うなずけます。ヒトが完全に合理的な行動を取れない理由にはいくつかある。

理由1: そもそもヒトは合理的な行動が分からない 
理由2: ヒトは合理的な行動は分かるが、いろんな理由により実行できない
理由3: ヒトの行動は目的合理性よりも感情に支配されやすい

リアルオプションはクールな方法論だ。でも、この戦略的意思決定のツールを活用しながらも、最終的に意思決定するときのマインドは存外「エイヤッ!」に近い。クールに考え、議論し、熱くキメゴトまでもってゆく。「エイヤッ!」か「様子を見る」か「まあ、諸般勘案しつつ機が熟すのを待って・・・」というのは、動機や気質といった世界のテーマなのだろう。

ただしリアルオプション的判断を積み重ねた上での「エイヤッ!」と、たんなる「エイヤッ!」を比べれば、断然前者の成功確率は高くなる。経営における弁証法的手法としてリアルオプションのカードは思考方法としても、実物オプションとしても必須な持ちものだ。

ともあれ「エイヤッ!」の一歩手前までは事実関係を要素に還元したり、仮説検証や分析をクールに積み上げる、どちらかというと左脳系。そして「エイヤッ!」は、綜合的であり、動機、情念、情動、気質などの要素の影響下で、直感的、機動的、ときとして審美的になされる。ゆえにどちらかと言えば右脳系。交渉ごとなど相手の存在を前提に行う意思決定には、シンクロニシティやセレンディピティといった要素も、また、大きく影響を及ぼす。

共通のアジェンダに向かい、縦横無尽に左右の脳ミソを使い、時が経つのも忘れクリエイティブな議論を尽くし、その議論に没入するのは、ハイタッチなフロー体験だ。ついでに酒もたっぷり飲んで、リスクテーカーたちは、クールに熱く、ある方向に進むことに!?

砂糖づけの日々~SugarCRM~

2006年09月13日 | ビジネス&社会起業
今日も砂糖漬け。SugarCRMのMark (VP, Business Development and Alliances)とJeff (Director, Worldwide Partner Development)とパンチの効いたランチ。ランチといえども、ビジネスの話で熱くなる。でもバカ話も楽しいもの。

パワーブレックファストならぬパワーランチ。ビジネスの密談は当然のこととしても、根っからの雑談系の人間にとっては、こうして、ワワーガガー話をするだけで楽しくってしょうがない。

おもしろかったのは、serendipityとsincronisityの話。ビジネスを進めるためには、ロジックやビジネスモデルの構築もさることながら、セレンディピティやシンクロニシティ体質をわかちあうことが大切、ということで大いに共感。

さすがにこのあたりの言葉に対する感受性をわかちあえるとワクワクします。大いなる共感の象徴として、たっぷり砂糖をプレゼント笑)


SugarCRM御一行とブレインストーミング&密談

2006年09月11日 | オープンソース物語
パートナーのSugarCRMから特命ミッションがケアブレインズを訪れた。マークとジェフ。朝から晩まで話は尽きず。

彼らにとって、日本のIT産業、特にメーカー主導の長いチェーンバリューは奇異に写る。系列という名のジャパニーズ・グルーピズムは相互互恵というよりは閉じた利益共同体か。

いずれにせよ、彼らとの議論は話が早い。日本の大手企業と日本語で議論するより、遥かに議論ははかどる。不思議な気持ちだ。日本語で語り合っても我らケアブレインズのスピード感覚とベリー・ジャパニーズ・カンパニーズのスピード感覚との間には、埋めることのできないようなギャップがある。

でもSugarCRMとケアブレインズは同じスピード感覚で議論できるのがうれしい。全うな議論をするには共通のゴールと議論のマナー(共通のロジックを基礎に置くダイアログ)が必要だ。以心伝心や阿吽の呼吸といった和風コミュニケーションではやっていられない。

今日のセッションは総勢5人。SugarCRMから幹部2人、ケアブレインズから幹部3人。このチームは議論におけるプラグマティズムを共有している。無益な議論はなにも生まないが、いい議論には必ず明確なアウトプット=成果物がある、また、なければいけない。こうしたスピリットこそが生産的な議論を生むのだと思う。

かれら曰く、これまでアウトプット=成果物マインドが希薄な日本企業がこぞってSugarCRMを訪れて、無益なレクチャーに終始したそうな。ご苦労様でした、としかいいようがない。「本件は日本の本社に持ち帰り、報告のうえ、上司の判断を仰ぎつつ、適切に対処したいと思います」という言葉は、結局、"wait and see"と「なにもしない」という表現の薄っぺらな言い換えなのだ。

典型的な日本のIT企業に必要なものは英語教育ではなく、対話のスピリット、プラグマティックな議論の仕方じゃないのか?ナマ身の人間による五感を総動員するリアルなコミュニケーションこそが、もっとも贅沢なコミュニケーション。その贅沢さをしかと賞味するためには、それなりの方法論が必要だと痛感する。ヒューマン・レイヤーにおけるサービス・サイエンスは、古くはプラトンの対話に淵源を発するが、それが難解ならば、近年のディベートにもよく顕われている。

いずれにせよ、我々はアジェンダを共有した上で、生産的な高い濃度のディスカッションを本能的に好む。生産的ななにかを現実的に生む議論は気持ちのいいものだ。ついで夜のセッションも極めて生産的なものだった。(企業秘密なのでここでは書けないが)