よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

超格安古本Oxford English Dictionary全20巻をめぐる出来事

2007年02月18日 | No Book, No Life
Oxford English Dictionary(OED)は、11世紀半ばから現在までの英語の発生・変遷を歴史的に扱った世界で最も権威ある英語辞典だ。神保町あたりでは、この全20巻を15万~25万円くらいで置いてある古本屋が数軒ある。

OEDはラテン語を中心に語源にまで遡った語彙の変遷の注釈、用例がとほうもなく豊穣だ。とてつもない英語語彙を収めるがゆえに、たしか新語の追加は4年に一度のペース。しかし、英語の歴史において、ここ4年簡に登場した新語なぞは、無視して差し支えない。よって、OEDは旧版を求めるに限る。しかも美品を格安で。なんといっても問題は値段。高価なのだ。

ここ数年、OEDを物色しながらも、ぐずぐず買えに買えない僕の行動を見守ってきた畏友から突然、驚嘆の情報が入ったのだ。なんとOEDをわずか36,000円で売りに出ている古本屋が広島市内にあるというのだ!ネットで調べると、そのOEDは某図書館の所蔵物だったもので大変きれいなもの。ということで、3年越しの懸案が一挙に解決。即、買い注文を入れる。こうして長年の紆余曲折を経ながらも、晴れてOEDが我が書斎に場所を占めることになったのだ。

OEDを求める日本人は希少人種だろう。いや、希少を通り超えて、絶滅危惧種のような人が、もし格安で入手できるのならばOEDを買いたいという、これまた稀有な購買欲求を持っている。図書市場全体のニーズから見れば、ロングテールの最たるもの。書店だって、超怒級の容積と重量を誇る全20巻を在庫として保有をつづけるリスクは最小限にしたいはずだ。

このような中古本Oxford English Dictionary全20巻をめぐるディマンドとサプライのロングテール上に発生する極めて特異な均衡点が、ディールとして現象されたのはヒューマンなネットと、インターネットのお陰だ。

均衡点、つまり、売った、買ったの成立を求めるディマンド(買い手)とサプライ(売り手)の両サイドが集積する場が、市場でありマーケットプレイス。このマーケットプレイスそのものをインターネット空間に移植したものがeマーケットプレイス。ソフトウェアにも、このようなeマーケットプレイスがあったら素晴らしい。オープンソース系のソフトウェアプロダクトやサービスにも、eマーケットプレイスがあれば、さらにオモシロイことになるだろう。





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2 コメント

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現代日本の非文化的風潮万歳?! (麻生川静男)
2007-02-24 12:42:07
本ブログはOEDの購入から端を発して、インターネット上のマーケットプレイスの有効性にまで議論が及んでいる。私にもこの面ではマーケットプレースには限りなくお世話になった事がある。それは今から数年前のこと、当時、楽天フリマでは、専門業者と素人の両方が自由に出品できる古本のマーケットプレースが存在した。(2007年2月現在、このマーケットプレースは残念ながら事実上機能していない!)

ある朝、OED(これは松下さんの購入した第2版の20巻本ではなく、旧版の13巻本ではあるが)が1円スタートというオークションに出品されたというお知らせメールが届いた。常識的にはありえない話で、だれも信用しないし、手間ひまかけて、そのサイトにアクセスしないと思われるがそこは当時週休5日のフリーランサー(と言っていいかも?)をしていた私は早速コーヒーを片手に、チェックした。いやあ、本当に1円で出ているには驚いた。しかし、いくらなんでも1円で応札するとは出品者に失礼と思い、1万円程度の札を入れた。オークション期間が5日あったので、毎朝状況をチェックしたが、誰も応札しなかった。最後の日、午後の7時58分に終了になるのだが、ベルギービール片手にWebサイトを何度もクリックし、どきどきしながら成り行きを見守っていた。ようやく時間切れ終了になった時は、天使がラッパを吹き鳴らしながら頭の周りを飛び回っている感じがした。(そう言えば、その時に飲んでいたベルギービールは『デリリウム』といい、ラベルはピンク色の象がダンスしている図柄だった。)結局、5日間、この1円OEDは誰の興味も引かなかったということだったかもしれない。

個人的にはOEDが1円で入札(ただし送料は実費)できたとは、非常にありがたい話ではあるが、社会現象として見た場合、暗澹たる気持ちになる。つまり現在では、OEDなどかさばるものはたとえ1円でも要らない、という人が大半であると想像される。これと比較すると、『岩波英和辞典』の著者である田中菊雄氏が大正時代に列車の給仕をしながら英語を独学していた当時、月給の何倍もする十数巻のセンチュリー英語辞典を買ったがため、数年間食卓のおかずには沢庵しか並ばなかったという話は、涙が出てくる。(参考URL: http://www.shigin.com/imai/oriori9.htm

私はなぜか辞書が好きである。それも大部の辞書が好きである。現在大阪の自宅に置いてあるこの1円OEDの他に、実は2部もっていて、それぞれ東京のマンションと神戸の勤務先に置いてある。それ以外に諸橋の大漢和(縮刷版)も3部それぞれの場所に置いてある。ついでにいうと Webster's Third New International Dictionary やBritannnica、Brockhaus(ドイツ語の百科事典)、世界大百科事典(平凡社)、大辞典(平凡社の国語辞典)などもそれぞれ2部、あるいは3部持っている。なぜ同じ辞書を複数部も持っているかと言えば、それは性格的にせっかちだからである。気にかかった単語や事柄があれば調べないと気が治まらない。それも辞書を引くと、連鎖的にいろいろな事が関連しているので、身近にないと不満がたまるのである。ただこのように、『国税庁公認の貧民』である私ごときが大部の辞書を複数部持つことが可能になったのも、現在日本の非文化的風潮とインターネットのマーケットプレースの相乗効果のおかげで、いづれも非常に格安で入手できたからに他ならない。

『辞書はともかく良いものを選べ、そしていつも気にかかったら引け』とは、元筑波大学教授で、西洋古典を秀逸で小気味よい文体で翻訳することで有名な柳沼重剛氏の言である。柳沼先生は同じ辞書を大学の研究室や自宅を置いているそうであるが、自宅でも1階と2階にそれぞれ置くべしとのお達しである。柳沼先生に対して不遜な言い方になるが、私としては『よくぞ、わが意を代弁してくれた!』という事だが、いかんせん我が妻にはさすがの柳沼先生のご宣託も一向に通用しないらしい。

以上

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現代日本の非文化的風潮万歳?! (まつした)
2007-02-25 10:54:56
1円とは恐れ入りました。文化的退潮傾向は、なるほど時として利するものですね。

実は、コマーシャルオープンソースまわりのソースコードやサービスをeマーケットプレイスにする構想を2/22から実際に始めました。ビジネスの話で恐縮ですが、今度うちでやる@エクスチェンジは、ソフトウェアの空間をたやすく越えるデジタルな特性が極めて活きてくると考えています。

英語に関する研鑽もEODをキチンと使いこなして進めてゆきますね。またご指導ください。

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