よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

フロー経験としての雑談に終始した一日

2009年07月30日 | よもやま話、雑談


大岡山で用を済ませてから東京工業大学マネジメント担当教授の遠藤悟と大岡山駅前のできたばかりの東工大蔵前会館にある精養軒で昼食。彼のもう一つのアイデンティティは世界を走るサイクリスト

実は遠藤悟(別名、インドを悟る)とは、学部学生時代に日本中はおろか、デリーからカトマンズまで悶絶しながら自転車で駆け抜けた仲間。当時は、お互いの数奇な人生経路の行く末を知る由もなく、ただただ汗をかいて自転車を駆けるのみの日々。その後、彼は学術的な方向性を活かし日本学術振興会へ。

そのような日々から○○年たった今、こうして専門的な話をしている自分たちを見るにつけ、人生は本当にどうなるか分からないものだ。「知の分水嶺を越える:米国における基礎研究政策に関する考察」などについて意見交換。

田町で日経BPの丸山さんとしばしコーヒーを飲みながら雑談。MOT系の話。

夕刻は春日駅からほど近い医学書院へ。この医学看護系専門出版社から本を出版させていただいたのは早稲田の先輩、林田秀治さんの御縁から。林田さんは定年を迎えたのちは農業への道を歩む。

スタッフの皆さんを交えてひとしきり打ち合わせをしてから、豪華会食。しばし雑談に花が咲く。集まった5人のうち、3人がインドを旅したことがあるというのも面白い。看護にまつわるサービス・イノベーション、出版動向や、それやこれや。

今日は一日中、誰かと雑談をしていたような感じ。流れるようなフロー、雑談ではあるが、雑談の節目節目にはけっこう大事な発見や、展望、未来に向けたビジョンがポコッと顔を出しリアリティが眼前に開ける。こういう瞬間がいい。だから雑談は楽しい。マイクロなフローが、ときめく空間をつくるのか。

成功へのtop ten tips

2009年07月29日 | ニューパラダイム人間学
Ashoka財団から面白いニュースが届いた。社会起業家やchangemakerを成功に導く top ten tipsというもの。

けっこう笑えるし、なるほどとも。

<以下貼り付け>

10) Have a sense of humor

9) Be stubborn and stupid

8) Know what you do not know

7) It is all about giving love

6) The project is not about YOU

5) Sports is the international language of business

4) Ensure your family is involved

3) Give credit all the time to others and in public, but criticize in private

2) The word " no" means "no for now," it does not mean eat sh*t and die

1) When you get sh*t from others, even though you feel you don't deserve it, learn not only to take it but more importantly, learn to enjoy the taste.

<以上貼り付け>

世界の人身取引と闘うポラリスプロジェクト

2009年07月27日 | ビジネス&社会起業
以前紹介した公開セミナー「世界の人身取引と闘うポラリスプロジェクト」が、2009 年7 月16 日(木)18:00 より、東工大蔵前会館「ロイアルブルーホール」にて開催されました。

世界で 1000 万人以上の女性や子どもが人身取引問題の犠牲になっていると言われています。その対策において米国のみならず世界をリードする活躍をしてきたNGO「ポラリスプロジェクト」から、事務局長のマーク・ラゴン氏と、「ポラリスプロジェクト」日本事務所のコーディネーターを務める藤原志帆子氏が講演しました。

「社会起業、テクノロジーとビジネスが立ち向かう人身取引」講演の概要です。

英語版の講演記録です。一読の価値あります。論点が明確でポラリスのミッションを雄弁に論述しています。

ポラリス・ジャパンについての詳細な情報はこちら

ざっと論旨をまとめます。マーク・ラゴン氏のスピーチはロジカルかつ弁証法的です。

                ***

まず結論は:

Effective use of technology and social entrepreneurship are essential for our advanced industrialized countries to become better examples for the developing world in the fight against trafficking.

卓越した社会起業家には共通の行動パターンがある。

1)組織を立ち上げるというようりは、運動(movement)を盛り上げるという視点を持つ。

2)政策的な主張を長期にわたって続け、プログラムを多様化させる。

3)現実主義(pragmatism)と 理想主義(idealism)のバランスを保つ。

実は現代のネットを中心としたテクノロジーは人身売買に大いに利用され、莫大な利益を人身売買をおこなう人々や組織にもたらしている現実に目を向けるべきだ。

つまり技術やビジネスモデルを保有する企業と組むことによって反人身売買運動の効果は格段に上がる。

たとえばポラリスがしぶとくアプローチした結果、マイクロソフトは反人身売買教育プログラムをスタートさせたし、アマゾン・ジャパンは少女ポルノやDVDの販売を止めた。

だからこそ、先進国において技術と社会起業を組み合わせて有効活用して反人身売買運動の成功事例を造り上げることが、開発途上国の反人身売買運動にとっても有益なものになる。

                ***

technologyとsocial entrepreneurship を真っ正面からとらえ、実行してきたポラリスを応援しませんか。

札幌市立大学にて集中講義のお知らせ

2009年07月27日 | 健康医療サービスイノベーション
昨年に引き続き、札幌市立大学看護学部「認定看護管理者制度サードレベル教育課程」にて、9/1に集中講義をします。テーマは保健医療福祉サービスのマーケティング論。

テキストは、松下博宣:「続・看護経営学~ A Grounded Theory of Human Service Management」を使います。

・保健医療福祉サービスの本質は?
・そもそも、マーケティングするまえに、サービスをどうマネジメントするの?
・見えない、触れない、瞬時に消滅するサービスをどのように、誰に伝えるのか?
・ソーシャル・マーケティングのやり方は?
・病院版CSRとソーシャル・マーケティングの関係は?
・HRMとの連動はどうしたらいいのか?
・具体的なマーケティングプランはどう作ったらいいのか?

このような疑問にお答えしたいと思います。



日中異文化間コミュニケーション

2009年07月26日 | 技術経営MOT

<中華人民共和国 国家知識産権局にて>

昨年大学院のMOTミッションで中国に行っていろいろとリサーチをしてきました。

社会主義市場経済というのは矛盾しあう二つの制度のレトリック的結合にほかなりません。中国の人々が、市場の中で自由を享受し、選択の自由、表現の自由、結社の自由に目覚めれば、いずれ一党独裁体制ではなく、民主的体制を望むようになるのは自明です。

天安門事件では首都北京の真ん中で、学生を中心とした中国民衆の反政府の声があがりました。そして昨年、今年と立て続けにチベットや東トルキスタン(中国の価値観では自治区と称される)から、中国のガバナンス手法に対してNOの声が上がりました。

人治主義から法治主義への転換の必要性は特に西側からたびたび強く指弾され、中国のインテリ階層にとって頭の痛い問題です。中国共産党の一党独裁体制も、奥の院に入れば入るほど、法が支配するというようりは、人が支配する傾向が強くなります。この点を敷衍すると幇会的体質は中国共産党内部に色濃く継承されています。

また人治主義は実は、「漢人による人治主義」の構造がその基盤にあるということが、一連のチベットや東トルキスタンの事件を介して国際社会に露呈しつつあります。僕はそれを一般的な「人治主義」と区別して「漢人治主義」と呼んでいます。

さて、僕は真の日中友好は、お互いの急所(弱点とされる問題)に対して率直に意見を表明し合うことから始まると考えるので、公害問題、賄賂問題を根拠にして人治主義の弊害に対して、役所のハイランキング・オフィシャル(高級役人)にズバリと質しました。

その役人は面食らった表情をしていましたが、人治主義は中国にとって根の深い問題であり、中国全体の行政機関で改善するよう指導が必要である、とあくまでも総論レベルの回答をしていました。

そのような抽象的な回答には満足できなかったので、その会合の後の昼食会ではいろいろと本音に近い議論ができました。

さて、このような日中異文化間コミュニケーションは、今後様々な局面で大変重要になってきます。さて、ここで麻生川静男ブログより以下引用です。

<以下貼り付け>

問題:

現代では、中国の環境破壊、公害が日本の食の安全、酸性雨などの問題を引き起こしている。これらの問題を経済の観点ではなく、文化的・グローバルリテラシー的観点から論ぜよ。

=中略=

解答例

中国の環境破壊

【1】中国の歴史を読んでみると、法律が公布されてもほとんど守られていないことが分かる。史記の平準書には、硬貨(五銖錢)が発行されてからわずか五年以内に、偽造硬貨(盜鑄金錢)で死刑宣告されたもの数十万人に恩赦を出した。それ以外に自首して赦された者が百万人以上いた、との記述がある。『自造白金五銖錢後五歳、赦吏民之坐盜鑄金錢死者數十萬人、。。。赦自出者百餘萬人』

贋金つくりが発覚すれば、当人は死刑、家族は官奴となる、という重罪にもかかわらず、手軽な利益のあるところには死をも恐れずに群がるというのが中国の伝統的な行動パターンである。

【2】日本にも贋金つくり(私鑄錢)はあり、その刑は死刑であったが、その実数は低いのではないかと想像する。その理由は日本人の性格もさることながら、贋金つくりの技術が中国ほど普及しなかったものと考えられる。

【3】中国では、『千金之子、不死於市』(千金の子、市に死せず)というように、金持ちの家では、たとえ死罪を宣告されても、要路の役人に賄賂を贈り罪を免れるというのが当然であった。(参照:史記、越王句踐世家にある、陶朱公のエピソード)

【4】こういった2000年も前の歴史的事実は現代中国でもそのまま通用しているのが、中華文明の本質である。つまり中国では、法律はたとえ何百条備わっていてもそれを厳格に適用するという『法治』の精神はまったく理解されず、運用は関係者のさじ加減による、という『人治』が牢固として続いているのだ。従って、『人の健康より自分の利益の追求』、そして『環境保護の法律の無視』、この二つの観点はまさに中華思想をそのままストレートに実践しているだけに過ぎない、と私は考える。(参考:柏楊、『醜い中国人―なぜ、アメリカ人・日本人に学ばないのか』)

<以上貼り付け>

中華思想はいただけませんが、たとえば、「南舟北馬」、「南商北政」といって中国の南方沿海部では、プラグマティックなビジネスマインドを尊重して東シナ海から東南アジア一帯へと舟で出て行き通商することに表象される現実的な開放性には期待したいと思います。

ただし、開放性がいつのまにか「解放」性になり、覇権志向と結びつき、空母を建設して東シナ海に浮かべるというのはいただけませんが。

日本も中国も、お互いの国を訪問したことのないような人々が匿名ネットでお互いを悪しざまに罵るような言説が横行しています。このように誘導、操作されることは決して望ましいものではありません。

Face to faceでコンタクトするときに、事実上の共通言語である英語を駆使し、歴史を振り返りつつ、英語で率直に質問し、意見を表明することが大切です。今後ますます日中異文化間コミュニケーションの重要度が高まるのですから。


未来design→だれもがChange Maker!~禁断のMOT/MBA、新たなチャレンジ~

2009年07月22日 | ビジネス&社会起業


未来designとは、多摩大学MBA、東京工科大学BS、日本大学MBA、東京農工大学MOTのビジネススクールOB・OGが、ヨコの交流を展開させるために生まれたコミュニティです。

このコミュニティの発足につき、下記のイベントに社会貢献として協力し、寺子屋風のトークショー(講義というほど堅苦しいものじゃありません)を行うことになりました。

              ***

【開催にあたって 松下博宣から】

資本主義がいかに変質しても、資本主義の主人公は自己責任でリスクを取って、明日にチャレンジする創業精神に満ちたアントレプレナーです。●◎○■資本主義の変化の方向を決めるのはアントレプレナー人材なのです。

かりにあなたが会社にぶら下がるだけのサラリード・パーソンだとしましょう。ならばいますぐ社内起業家(イントレプレナー)に変身しましょう。会社の囲いからリストラにあって放たれるリスクを軽減することになります。

かりにあなたが「起業家予備軍」だとしましょう。MBAやMOTで得るスキルにレバレッジをかけてリターンを得る王道が起業です。今勤めている会社を徹底的に利用し、ノウハウを逆搾取して起業に備えましょう。そしてアントレプレナーの列に加わりましょう。

そして、できれば世の中を少しでもいい方向に変えるために努力しましょう。営利起業でも、公益・非営利性のより強い社会起業でも、本質はイノベーションを創発する当事者=アントレプレナーです。

グローバルレベルで政治も経済も今後3年間で激変します。凡人にとってその変化は危機ですが、アントレプレナーにとっては好機です。好機のつかみ方、創りかたを語りましょう!

己の才覚とリスク負担でより良い世の中づくりのために世を商(シノ)ぐ人材がChange Maker。

社会起業、営利起業の最新動向、アントレプレナーシップ&イノベーション、はたまたちょいワル副業起業まで幅広くカバーします。言論の自由は無制限!

明日の資本主義を語り、アントレプレナー、プロフェッショナルとしての生き方を熱く提言!●◎○■をデザインするのは同時代に生きる我々の特権であり、近未来に対する我々の義務でもあります。

              ***

以下、案内文面を貼り付けます。

<以下貼り付け>

未来design 特別講義のお知らせ

梅雨も明け、草木も生気を失うような暑さですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

さて、早速ではございますが、未来design主催の特別講義についてお知らせいたします。未来designとは、多摩大学MBA、東京工科大学BS、日本大学MBA、東京農工大学MOTのビジネススクールOB・OGが、従来の交流を展開させるために生まれたコミュニティです。

コミュニティ自体が“生まれたて”であり、会の方向性や規約などの枠組みは現在検討中ですが、早々に知的交流可能なイベントを実施するはこびとなりました。

 第一回目のイベントとして、農工大MOT松下教授を招き、特別講義を行います。内容は、ビジネスにおいても大きな存在となりつつある「社会起業」「コミュニティ生成」などにスポットを当てる予定です。特別講義、そして第二部の懇親会、ともに知的交流の“種”が随所にある場となりますので、エネルギーを大きく成長させるイベントにしましょう。

【開催講義】 「だれもがChange Maker!~MOT/MBAの新たなチャレンジ~」
【講師】    農工大MOT松下博宣教授(アントレプレナーシップ論、HRM論)
【開催日時】 2009年8月1日(土)16:00~17:30 (開場 15:45~)
【開催場所】 田町キャンパス・イノベーションセンター 4F
【申込対象者】 どなたでも参加できます。(ビジネススクール出身者以外も可)
【参加費】 無料
【持参品】   筆記用具、ご自身の名札 (首から下げるタイプなど)
【懇親会】 開催場所近辺で実施予定(4,000円)

【参加申込はこちら】

<以上貼り付け>

納涼会も兼ねているので、寺子屋風講演が終わってからは楽しく一杯やりましょう。

地域発・グローバルベンチャーの可能性@京都大学

2009年07月21日 | 講演放浪記
京都大学で開かれたシンポジウム「地域発・グローバルベンチャーの可能性」で、午前に講演1本をやった後、午後パネルディスカッションに参加させていただきました。フロアー、檀上問わず自由闊達な議論が行き交う素晴らしい集まりでした。

以下はメモ。

まず共感を覚えるのは、京大イノベーション・マネジメント・サイエンス研究部門のスタッフの方々は、大学で純粋培養のキャリアを積んできたのでもなく、またたんに企業での実務経験があるというのでもなくABCの融合型の国際経験豊富なプロフェッショナル系人材が中心ということです。

午後のパネルで登壇した方々もこのようなタイポロジーの方々が圧倒しています。類は友を呼ぶということなんでしょうか?

僕は、研究部会A「アントレプレナーシップとイノベーション創発」でお話をしてこの部屋にずっといたので、以下は研究部会Aの話が中心です。



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「アントレプレナーシップとイノベーション創発」というテーマアップ、素晴らしいですね。以前ここでも書いたように、アントレプレナーシップとイノベーション創発を一体のものとして扱うのが世界の趨勢です。

MOTやMBAの一大テーマでもあるイノベーション創発は、アントレプレナー人材によってもたらされるという認識をズバッと言い当てた表題に敬服です。それやこれやで、この表題を見て胸のすく思いがしたしだいです。

さて、午前中の専門部会や午後のシンポは、ほんとうに広いテーマを扱いました。スタートアップスをどう立ち上げるのか、ベンチャー企業が成長するために外部のマネジメント能力や開発リソースをどう活用できるか、VCの支援の在り方、ガバナンス、産学官連携、オープンイノベーション、金融危機の影響、ベンチャーキャピタルの視点からの国際ベンチャー、EUにおける国際ベンチャーなど、など。

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京都大学準教授の麻生川静男さんのテーマは、イノベーションを巻き起こす科学的人事手法です。

独自に取り組まれている「Synaプロジェクト」についてエッジの効いた濃いお話でした。HRMは僕の専門でもあり、今後のコラボ展開が楽しみです。



午前のセッションでは「イノベーションの新潮流:カオスの縁のソーシャル・アントレプレナーシップ」について報告させていただきました。

不肖松下の顔や腕が真っ黒なのは自転車焼けのためです。ネオン焼けに非ず笑)



日経BP社プロデューサの丸山正明さんは幅広い現場の取材をベースにした報告です。丸山さんは産学官連携をテーマにした著書を何冊もお持ちで技術の中身がよくお分かりです。

ヒット製品に結びつく要素技術を組み合わせる連立方程式にはじまり、オープンイノベーション、R&D戦略・事業戦略・知財戦略の三位一体にまで言及されました。

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牧野圭裕さん(京都大学産学官連携本部本部長、名誉教授)

京都大学における産官学連携、国際連携、そしてベンチャー支援の取り組みなどを包括的にご紹介いただきました。東京の一等地のみならず、ロンドン欧州事務所をオープンさせたのはさすがです。

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木谷哲夫さん(IMS部門寄附研究部門教授)

イノベーション・マネジメント・サイエンス(IMS)部門の取り組みについてのプレゼンテーション。日本のベンチャーの弱みとして(1)顧客ニーズの分析から入らない、(2)技術シーズを保有する人がCEOになってしまい機動的な経営ができない、(3)チーム編成、人的資源の活用が下手、との指摘がありました。

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奥原主一さん(日本ベンチャーキャピタル社長)

ベンチャーキャピタルの視点からの国際ベンチャーに関する事例紹介。販路を求めて海外に進出する事例、日本国内ではそもそも市場がないので海外で起業する事例、広く多様な人材を求めるため海外に出る事例などを紹介いただきました。

2社ほど直接的に知っている会社が登場しました。

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CambridgeのSimon Learmountさんは、Innovation and Governanceについてです。ざっとまとめるとこんな感じです。

近年、UKの産業はアウトソーシングとオープンイノベーション志向となってきている。この潮流のなかで、InnovationとEntrepreneurshipのエンジンとしてリサーチ・ユニバーシティの役割はますます重要になっている。

しかし、そのガバナンスモデルはAgency modelであって、運営原則、エージェントは明確でない。技術のブレークスルーにはアカデミック・フリーダム、リスクの先取り、イニシアティブが必要だ。政府のファンディングはAccountabilityとコントロールの強化をもたらす結果に終始しがちだ。しかし、本来はInnovationとEntrepreneurshipを増進させるような新しい大学ガバナンスのモデルが必要。

この点をきっちり研究して使えるガバナンス・モデルをデザインしインプリしてゆくことが今後の課題だ。

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パネルディスカッション:「ベンチャー企業、ベンチャーキャピタルの国際化への取り組み」のモデレーターは麻生川さん。

軽妙な触媒的トークで熱くなりがちなパネラーを小気味よくモデレートされていました。Global Literacy for Cosmopolitansを講じていらっしゃる麻生川さんのウイットが光っていました。



一本松正道さん(ルネッサンス・エナジー・インベストメント社長)、瀧本哲史さん(京都大学、エンジェル投資家)、八尋俊英さん(経済産業省新規産業室長)、須賀等さん(丸の内起業塾長、タリーズコーヒージャパン㈱特別顧問、国際教養大学客員教授)と不肖松下です。

実はこのメンバーはそれぞれの立場で深い経験と高度なイクスパティーズをお持ちの方々ばかりでして、すでにメールによる議論が1週間前くらいから盛り上がっていました。このような特設加速レーンもクリエーティブなパネル・ディスカッションには必要なのですね。

さて、須賀さんには以前、僕が自分の会社を創業したばかりの頃に親しくアドバイスを頂いたことがありました。その須賀さんを紹介していただいたのが、松田修一先生(早稲田大学ビジネススクール教授、日本ベンチャー学会会長)でした。こういうところで再会するとは、いやはや世の中狭いものです。

麻生川さんとは旧知の中ですし、瀧本さんとは共通の友人がいることが分かりました。こういった出会いや再会が、またお互いの人生の新しいページに繋がってゆくのですね。

フロアーからも活発な意見、質問が寄せられ活気に満ちたパネルでした。とても刺激的な議論を楽しませていただきました。

どなたか、このパネル・ディスカッションのメモをアップしていただけるとうれしいのですが。

          ***

最後のクロージング・リマークスは、日本ベンチャー学会会長の松田修一先生。いつものようにパワフルで的を得たお話しぶり。

今回のキリンとサントリーの経営統合は始まりの始まり。日本独自の垂直統合的な巨大企業は今後激変に見舞われる。縦型総合企業から専門水平企業への換骨奪胎がいよいよ始まる。

1960年代から2010年代までを俯瞰してモノづくり産業のトレンドを分かりやすくレビューいただき、今後のアジェンダを浮き彫りにしました。

          ***

懇親会では京都のベンチャー企業に就職するというガッツ溢れる学生さん達やいろいろな方々と美味しいワインで歓談。帰りは、松田先生と京都駅までタクシーで。道が混んでいて車中、松田先生とは久しぶりにゆっくりお話する機会が持てました。

御霊信仰、祇園祭りと山鉾巡行

2009年07月18日 | 講演放浪記


木曜日に新幹線に乗って京都へ。京都大学で行われるシンポで講演ひとつ、パネルひとつでお話するため。大変ラッキー!なことに、祇園祭の山鉾巡行の日と重なっている。

長年の懸案(夢)だった祇園祭を、こうして楽しむことができるようになったのだ。

前の晩、京都大学の時計台ホールの前にある小奇麗なパブで、シンポ関係者の方々と下打ち合わせを兼ねてビールをひっかけてから、四条方面へ繰り出すと、山鉾から流れるお囃子(はやし)が次第に大きく聞こえてくる。そして人、人、人の波。群衆の熱気にたまげる。

参拝料1000円払うと山鉾に乗せてくれるのだ。10時にお囃子の演奏が終わってから、「お囃子終わっちゃったけど乗れますか?」と頼むと、なんとタダにしてくれた。ありがたし。

四条通りに面したビルの2階に神様がお祀りされていて、その神さまの偶像が明日山鉾に移って市内を練りまわる。そこでお参りしてから2階から突き出た渡り橋を踏んで山鉾に乗る。

動く美術館には文化材が満載。とはいえ、うーん、結構狭い。山鉾に乗って笛、鐘などを奏でる衆が内向きに座っているのはなるほど、スペースの有効活用のためか。

翌朝は京都大学へ行く前に、またそそくさと四条に行く。



圧巻は辻回し
まずは道路の車輪が移動するあたりに竹を敷きつめ水を柄杓で捲く。



そして、山鉾の車輪が竹の上にやってくる。
日の丸の扇子を振る衆がヨーイヤサッと気合いをいれると、綱引きの衆が一気に山鉾を引きにかかり、バリバリーーと轟音を立てて車輪が青竹を粉砕しながら90度回転する。

この模様を至近で見ていた外国からの観光客とおぼしき女性がなんとこう叫んだ。

"Oh, My God!"

おいおい、それを京都で言うのなら、"Gods"と複数形で言ってくれよ笑)。

多神教の都、多神教の祭りなのだ。



貞観11年(869年)、当時流行った疫病を鎮めるために卜部日良麿が66本の矛を立て、神輿3基をかついで牛頭天王(ごずてんのう)を祀り御霊会(怨霊を鎮め、退散させるための儀式)を行ったのがその起源。

通説では、牛頭天王は外来のカミでインドの出自とされるが、これは怪しいものだ。幼年神ミトラのミトラ教によって屠られる牡牛の故郷イラン北部がオリジナルな故郷で、それがインドに伝搬して牛頭天王の元型となるカミに習合していったのではなかろうか。

さて牛頭天王は、疫病や災いをもたらす、いわば疫病神として祇園信仰では位置づけられる。これを鎮めて「御霊」とすることにより祟りを免れ、平穏と繁栄を実現しようというのが、この祇園祭。



目の前を動く美術館はたしかに優雅にして絢爛。しかし、その背後には、怨霊、魑魅魍魎が跋扈する呪術的な世界が展開する。

そしてそんなアンビバアレンツな二面性をそっと顕現させながら、典雅な調べに乗って32基の山や鉾は四条の通りを次々と過ぎ去ってゆく。

              ***

祇園祭りは、970年(安和3年)から毎年行うようになったと言われる。その後、応仁の乱や第二次世界大戦などでの中断はあるものの、現在まで延々と千年を超えて、祇園祭りは受け継がれているのだ。

卜部日良麿がはじめた呪術的なソーシャル・イノベーションは、こうして京都の怨霊、御霊に満ちた精神空間に埋め込まれ、京都の摩訶不思議なソーリャル・キャピタル基盤となっている。その基盤には、世界を神につくられたものと前提する一神教的な存在論は微塵もない。

梅棹忠夫 『文明の生態史観』のWorld View

2009年07月15日 | No Book, No Life


高校生のころ大江健三郎に飽きた時に、この本に遭遇した運のつきだった。当時、世界史の教師は自称マルクス主義者で、講義には教科書はまったく使わず、ひたすらエンゲルスやマルクスの話をしてそれを生徒に書きとらせるというものだった。

まあ、それはそれで唯物史観に触れることは面白かったのだが、梅棹忠夫 『文明の生態史観』を一読して一気に探検や放浪癖に火がついてしまったのだ。梅棹忠夫は、京都大学在学中に今西錦司が牽引した中国北部、大興安嶺探検など数々の探検に参加した。

自分の足腰を使って現地を体験して、徹底的に観察をして自分ならではの世界観を創ってゆく。こんな面白い生き方はない!

高校(旧軍系といいながらやたら日教組教師が多かった)を抜け出して大学に入ってからは自転車でインドとネパールを走り、その紀行文でライターデビューしたのは、実は、『文明の生態史観』の影響をまともに食らったから。

ちなみに、一緒にインドネパールを自転車で走り抜けた悪友が、抜群の記憶(録)力を発揮して当時の手記=「インドを走る!」を残している。

さて梅棹モデルでは、世界を大胆に模式化する。つまり、モンゴル高原からアラビア半島までななめに走る乾燥地帯の両どなりに、I. 中国、II.インド、III. ロシア、IV. 地中海=イスラム世界があって、さらに中心から遠ざかった辺縁の地に西ヨーロッパと日本がある。この辺縁の地だったところが中心部から文明を導入し、高度の資本主義まで築いたというのが梅棹の「文明の生態史観」であり。以下のような理論が展開される。

・東洋でも西洋でもない「中洋」(ミャンマー以西、アラビア半島以東)の発見
・日本と西洋の並行進化論
・日本の脱中国と西洋の脱イスラームは並行現象
・漁撈革命、牧畜革命、農業革命
・比較宗教学との接続

西洋に対するやるせない消化不良感に苛まれ、劣等複合がそこらじゅうに転がっていた当時の状況のなかで、たしかにこの本は、さっぱりと日本と西洋を対置させた。そしてアメリカは西洋の亜種ということで、上の図では西洋に含まれてしまってどこにも形をとどめていない。

案外、こういうところが読書人にウケたのではないだろうか。

久しぶりに通読してみて、古さは微塵も感じられない。逆に、I. 中国、II.インド、III. ロシアの経済的なテークオフ状況、IV. のイスラム世界の葛藤状況(イランや東トルキスタンなど)の今日的状況が、すっと腑に落ちる。

World View(世界観)を創っていくときの一つの見方としてお勧めの一冊だ。

さて「文明の生態史観」その後、多様な知識人の心をとらえ、いろいろな発展・拡張系の書が書かれている。

・川勝平太「文明の海洋史観」
・森谷正規「文明の技術史観」
・村上泰亮(やすすけ)「文明の多系史観」




起業家教育ひろば

2009年07月13日 | ビジネス&社会起業
面白いサイトの案内が届く。起業家教育ひろばという大学・大学院起業家教育推進のためのネットワーク。先週立ちあがったばかりだ。趣旨など:

<以下貼り付け>

「起業家教育ひろば」は、「大学・大学院起業家教育推進ネットワーク」のウェブサイトです。起業家教育に関連するさまざまな情報を提供し、大学・大学院における起業家教育を充実させることをめざします。

既に起業家教育を行っている教職員の方、これから起業家教育を始めようという教職員の方、外部講師として大学・大学院の講義に招かれる方、起業家教育を応援する支援者の方、起業家教育に興味がある学生の方などを主な対象にしています。大学・大学院起業家教育推進ネットワークが主催する各事業の告知や報告を中心にして、起業家教育の正規科目や課外プログラムなどに関する情報を提供していきます。

<以上貼り付け>

国際的な起業研究・教育コミュニティとしてはThe Global Entrepreneurship Monitor (GEM)があるが、日本では、国内コミュさえも体系的なものはなかった。

業界や日本ベンチャー学会がらみの友人、知人が多数入っている。ラーニング・デザイン、ケース、ネタ、事業計画立案手法、事業計画そのものなど、どんどん共有できればシナジーが高まるだろう。

宮城さんなど、社会起業系の人たちも発起人に入っているのがいい。シーズとニーズが具体的に絞り込まれているネットワークなので総花的でなく訴求力あり。発展を期待したい。