よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

あなたがメディア!ソーシャル新時代の情報術

2011年10月07日 | No Book, No Life

上の表紙でキレイに装飾されている"Mediactive"という造語が面白いです。ネット上で湧き上がっている地球規模の創発的な会話にいかに参加してゆくのか?そのためのノウハウ、注意点、警鐘、提言などがよくまとめられています。

Mediactiveが英文原著の題名ですが、そこは発想豊かでメディア起業家のギルモア氏、kindle版とともに、本と同じタイトルのmediactive.comといサイトを立ち上げて、紙媒体、電子媒体、ネットが連携して読者を巻き込むようなアイディア共有、共創の「場」を作っています。とても参考になりますね。

あまりノウハウ本は読まないのですが、この本を例外的に面白いなと感じたのは、ノウハウにとどまらず、①時代状況分析にまで大きく立ち入っている、そして、②メディアとの接し方、使い方を「現代のリベラル・アーツ」としてとらえている着眼点が斬新だからです。

この本の妙味は、著者の体験(成功もあれば失敗も)、主張、観察が混然一体となりながらも、メディアを巡るジャーナリズム論、起業戦略、政策分析、イノベーション論が要所にちりばめられているという点です。

なるほど、ネット評論、ジャーナリズム評論、新技術紹介の本はあまたありますが、この本の著者ダン・ギルモア氏の切り口は、類書にはないユニークなものです。つまり、イノベーションと起業という2つの軸を基本に据えて、自身の参与的経験(これがまた特異なもの)と観察(ジャーナリズムをアリゾナ州立大学で教えているだけに鋭い)を議論を展開している点が類書と大きく異なる点です。

ところで、私は専門家のはしくれとして、今まで専門書などを13冊ほど書いてきています。なので、出版社が主催する(ミカジメる)紙メディアとしての「本」書き、「本」づくりの生態系に長いこと棲息してきました。

さて、この本を読んでいる最中に、ある私の本の読者から、ブログ経由でびっくりするような連絡が入りました。なんと、絶版になっている私の本(定価3200円)がアマゾンで1万円もの値段がついていて、それを買い求めたとおっしゃるのです。

そこで、Mediactiveという文脈でこの一件を考えざるを得なくなりました。

1万円もの大金を負担して私の本を入手していただいたのはありがたいお話ですが、その読者の方が高いコストを払ったことに一抹の罪悪感を感じました。

よくよく考えてみると、①絶版本なので私には印税は入ってきません。その読者の方は、②新刊書市場でエクスクルードされた古本が集積するアマゾンの古本市場で、③余計なトランザクション・コストを負担して、④古くなった紙に張り付いた私の知的財産=テキストにアクセスしなければならなかったのです。

上記①、②、③、④のバリューチェンには問題ありありですね。専門書の著者として、いっちょMediactiveになってあげようじゃないか!結論として以下のアクションに結びつけることにしました。

アクション1: 読者に負担をかけるのはいけない。絶版になった本のテキストを電子書籍化して格安でダウンロードして読者、著者ともにメリットが生じる仕組みを創ろう。その一部を社会的な活動をしているNPOに寄付すればソーシャル・エコ・システムにもなる。出版契約書を精読してみると、このアイディアに抵触する条項は、ない。

アクション2: このブログ、ホームページ、facebook、Twitter、それと日経BPでやっている連載など、もうちょい綺麗につないで「ソーシャル」にしていこう。リアル系の授業、講演、コンサルティングなど「ソーシャル」なアクティビティとの連携の高密度化。

アクション3: 次に出す新刊本は、本というよりソーシャルな「場」としてデザインしてpublishする。

というわけで、この本が触媒になってMediactiveアクション(?)が生まれてきそうです。自分のアクションに繋がったという点で、期待以上にこの本では良い読書ができたと思います。

この手の本の読み方は、いかに個別の文脈の短期的なアクションに吸い上げるのか、だと思います。


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