よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

2013北海道自転車ツーリング⑦オロロンラインを駆け抜けて天塩へ

2013年09月10日 | 自転車/アウトドア

(Tさんとともに:道の駅おびら鰊番屋の前の海岸

自転車で旅する人には、いろいろな物語がある。自転車や装備も、それぞれの物語を語るし、サイクリスト本人のいでたち、雰囲気にもそれぞれの来歴や物語がよく顕れるものだ。

昨夜、いっしょにお酒を飲んだTさんも、そんなサイクリストのひとりだ。

かれは現役の漁師だ。遠洋漁業の間、長期の休みをとって、なんでも、石巻から一人で自走してきて、北海道を1ヶ月半かけて縦横に走るという。

石巻では長年漁師をしていたというTさんは、見るからに頑健な体躯に、まっくろな顔。そして、底抜けに明るい陽性気質。

3.11津波で、船、網、生活の拠点、そして趣味の自転車まで奪われ、生活を立て直すまでに2年ほどかかったそうだ。つらいこと、悲しいこと、不安なこと、焦燥感、無力感、それらのすべてをうけとめ、でも、がんばって自分を立て直して、自転車に回帰したのだという。津波で波に流されてしまったマウンテンバイクを錆びた状態で見つけ出し、やっと走れる状態にしたそうだ。

その復旧したマウンテンバイクにどろよけや4つのサイドバックを取り付け、リアにはテント、寝袋、そして、薄黄金色に光るアルマイト鍋まで携行している。生活感が濃密に漂う自転車には、どこか侵しがたい迫力がある。

去年、知床半島をいっしょに歩いたY君も石巻の出身。そしてTさんもそうだ。

これもなにかの縁だろう。

津波とサイクリストの物語・・・。

 「自転車さ乗って、前を見るんだ」

 「自転車さ、乗ってると、明るくなるっぺ」

 「自転車に乗って走っていると、自分がまとまるっさ」

訛りを臆することもなく朴訥に語るTさんの言葉には、サイクリストの至言が散りばめられている。

長いこと自転車に乗っている自分ではあるが、現役の漁師かつサイクリストの方にお目にかかるのははじめてである。

そして、Tさんから多くのことを教えていただいた。

サイクリストは、もちろん、機械としての自転車をケアするが、実は、自転車に乗って旅をするという営為は、再帰的に人間をケアするのではなかろうか。そして、自転車に乗る人は、おのれの健康のみならず、自己効力感、一貫性感覚、フロー体験、自然や周囲との充実した関係性の紡ぎだしといった内面の充実を得るにいたる。

自転車に乗って走るという行為は、実は自分の内側、そして、まわりのさまざまなモノゴトとの関係性に対するケアなのである。

                         ***

道の駅おびら鰊番屋の前の海岸

さて、留萌から稚内に至る海沿いの道はたった一本。しかも、北海道は今も昔も、どちらかというと時計回りに走るサイクリストが多い。しかも単独で走るよりは、なんにんかでツルんで走ったほうが楽しいし、ドラフティンング(前を走る自転車に密着して空気抵抗を減らす技術)をすれば体力の消耗も1~2割程度を抑えることができる。

それやこれやで、当初ひとりで走っていた自分のまわりに自然にサイクリストの輪ができ、ときに2人から5人くらいの即席のパーティーをアドホックに組みながら和気藹々と走ることになったのだ。

学部時代のサイクリングクラブの走りをちょびっと思い出す。

当世の若者サイクリストにはぎょっとするスタイルで走っている人が多い。フレームが極端に立って泥除けなど一切ないロードバイクに20kg以上のザックを担ぎ、腰が痛い、腕が痛い、首が痛いといいながらも黙々とでもけっこう高速で走るのだ。ランドナー乗りの自分から見れば、やはり、荷物は身体に負担させるのではなく、あくまで自転車本体の重心の低い部位にパッキングすることを薦めたいのだが。。

(オロロンライン独特の風景)

しかし、ひとりの青年は100mを11.2秒で走る陸上部の選手(長野県出身の青学の学生、すごい!)で、たしかにペースは速い、速い。でも今回は太くて重いタイヤを履いたランドナーではなく、700cホイール、しかも、手元でギアシフトをできる自転車なので、若さに任せてゴリゴリ走るみんなにも、なんとかついてゆくことができたのは収穫といえば収穫か。

でも、けっこうキマした!

 (特大のカツ重)

腹が減ったので、羽幌の食堂で特大のカツ重を食べる。さすがに20代のサイクリスト諸氏は、ドカ食い。自分、ちょっと食べすぎ。

オロロンラインは緩いアップダウンを繰り返し、振り返れば、走ってきた道の遥か向こうの留萌あたりの稜線がずいぶんと遠くなっている。結局、この日は、Tさんと札幌の大学生3人が、遠別の道の駅の山側にあるキャンプ場でキャンプをすることに。

 

そのときの3人にもう一人のサイクリストが加わって、すき焼きキャンプをしたそうだ。いいなぁ。Tさんの鍋が神々しく鎮座している。写真は札幌から走ってきたI君のfacebookから許可を得て借用、汗)

テントを持参していない名古屋大学のK君と自分は、3人といったん別れて、2人パーティーでひとつ北の大きな町、手塩の鏡沼海浜公園のラーダーハウスを目指して走ることとなる。

小一時間走って、鏡沼海浜公園に着いた頃は、日も暮れかけていた。温泉にはいりながら、K君といろんな話になる。K君の進路のこと、勉強のこと、彼女のこと・・・・など、いろんな話。

温泉施設でビールを飲んで、軽めの飯を食らい、ひとり200円のラーダーハウスにそそくさと入ってひたすら寝る。

ここは、簡易なプレハブ小屋。でも電気は来ている。でも布団はもちろんないので、寝袋で寝る。ちなみに、台風のときにここに泊まった、とあるライダーさんは、この小屋の中にテントを張って泊まったそうだ。

ちなみに、東京から来たデカいリュックを背負ってロードレーサーに乗るアントラディショナルなスタイルの二人は一足先に、手塩に着いていた。

彼らは一人250円払ってテントを張った。我々は一人、200円払ってこのライダーハウスに泊まった。ちょっときになる50円の差ではある。まあ、どうでもいいことだが。。

走行距離:115km

つづき

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿