よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

英語上達法

2010年08月02日 | 技術経営MOT
このところ、畏友麻生川さんが英語上達法について面白いことを書いている。麻生川さんによると「語学がかなり上達するには、絶対に海外滞在体験がないとだめだ」ということで、周囲を観察するとおおむね以下グラフのような傾向があるという。詳細はこちら



(引用:ブログ「限りなき知の探訪」)

また、「話が通じるかどうか、つまり話を聞いてもらえるかどうかは、発音だけでなく内容(コンテンツ)も深くかかわっている。そしてその境界がこの図で分かるように、曲線になっている。つまり、発音が下手でも内容が豊富な人(例:ソニーの盛田さん)などは、人がどうしても聞きたい内容なので、聞きづらい発音でも人は非常に熱心に耳を傾けてくれる。しかし、中身のない人だと、無理してまで聞いてくれない」ということになる。詳細はこちら



(引用:ブログ「限りなき知の探訪」)

実は、英語をめぐるあれこれは、自分の関心事でもあり、上図ならびに麻生川さんの観察内容と自分のものとほぼ一致する。

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本格的に留学計画を始動させたのは学部1年の頃だった。いろいろ調べると、とんでもないことを発見したのだ。当時通っていた学部の成績評価は、(優)、優、良、可、不可という5段階評価だった。これを事務に頼んで、英語の成績表を発行してもらうと、(優)と優がA、良がB、可がCとなり、自動的にグレード・ポイントがかさ上げされるのだ。

ならば、がりがり勉強やって(優)なんでたくさん取る必要はない。優と良を取ればいいのである。

大学1年の夏までには、大学院は学問の本場(と勝手に思い込んでいたアイビーリーグに行く)と勝手に夢想して、勉強は適当にすませ自転車で全国を走り廻るという、どちらかというと、「首から下」を鍛えることに専念したのだ。

「首から上」を鍛えに米国の一定レベル以上の大学院へ行くためには、もちろんそれなりの英語力が必要なので、マージャンを一切やらないことにして浮いた時間を英語に回した。英語習得のための戦略は:

1)しょせんネイティブレベルにはなれないだろう。だとしたら、下手な発音でも相手をぐっと言わせる内容を持とう。(麻生川モデル下図の右上)

2)英検1級とTOEFL600点(旧式)を当面の目標とする。(麻生川モデル上図のハイスコア組)

3)カネをかけずに安く済ませ、1)、2)を達成するコストパフォーマンスを極大化する。

この線に沿って、まず、リンガフォン(英会話上達用として当時売られていたテープ教材)の販売員をやっていた先輩をたらしこんで、全巻無料でダビングし徹底的に聞きこむ。雑誌のNewsWeekを購読して毎号かならず始めから終わりまで読む。

モチベーションを維持するために、海外に一切出ることなく英語を極めたとされる松本道弘先生の『黒帯英語』理論を学んで、「英語の学習方法の学習」から始めることにしたのだ。当時はLanguage1-2 Theoryというようなものがあった。これによると、15歳以上になってしまうと、母語(language1)の基礎ができてしまい、その母語の基礎基盤の上に外国語(language2、つまりこの場合なら英語)を構築してゆくほうが効率的ということがよく説かれていた。

たばこのプラント輸出に伴う膨大なドキュメントを英訳するアルバイトを見つけ、そこに出入りしていると、強烈に英語ができるお姉さんと知り合った。彼女は宮沢喜一元首相のお孫さんにあたる人で小中高の大半を英国と米国ですごしたという。とにかく彼女の英語は素晴らしく、もちろんいろいろ教えてもらったが、麻生川モデル上図の「小学校で現地」に接したショックは大きかった。実は、上記目標2)にしたのは、越え難い壁を早期に認識できたことが影響している。

僕の場合は、初めて海外に行ったのはインドとネパール。3人でパーティーを組んでデリーからカトマンズまで自転車で走ったのが最初だった。病気になっては現地の方々の親切に救われ命拾いをしたり、ヒッピーと夜な夜な語り合う。こんな経験は、英語の学習を遥かに超越した素晴らしいものだった。

それやこれやで英検1級はなんなく取得。学部を出てから就職したのは、某メーカーの国際部。英語の学習システムが充実しているから選んだという不純な動機からだった。ただし就職した年に、海外留学制度が廃止になってしまい、「話がちがうわっ」ということで早々に退社。

その後、20代後半でコーネル大学に留学。GMATは610点位。まあ、そこそこで、アイビーリーグの大学院としてはボーダーラインくらいだったと思う。

企業派遣はどうしても甘さがでるが、僕の場合は自費。つまり留学というプロジェクトをスタートさせたのだ。2年間、得べかりし給料を敢えて絶って、卒業後のインカムゲインで高ROI(Return on Investment)を狙うというもの。

ここでPolicy Analysis & ManagementとSloan Program in Health Services Administrationをダブルでやった。この大学は州政府がグラントした大学院の学費は他のデパートメントの半額。ただし、ビジネススクール、エンジニアリングスクール、ホテルスクールなど高額な大学院の授業も自由にとることができる。これはありがたい制度だ。

New York訛りの教授にはほとほと手を焼いた。また、熱くなって早口でまくしたてる米国人学生の英語はわけがわからない。そこで、一計。クラスディスカッションは話が込み入る前に、「自分はかくかくしかじかだと思う。その根拠は①なになに、②なになに、③なになに」とバッと言ってしまい、あとはダンマリを決め込む。そして授業が終わりにさしかかる頃を見計らって、教授にかならず1つは質問なりコメントをするのだ。

奨学金をとったりTAをやったりで、円高の影響もあり、年間生活費は100万円を切った。棲んだのは大学の敷地の中にあるKappa Alpha Societyというフラタニティーハウス。食費が込みでたったの月2万円。日本人として初のブラザー(任侠系ではなく友愛系)。朝から夜まで、とにかくだれかと一緒にいる環境なので、英語を話す機会はいやでも増える。

企業派遣の人たちは日本人同志で、納豆のようにひっつく場合が多く、これだと英語はほとんど上達しない。「日本人空間」をその場で作ってしまい、その中にはまると英語どころではない。日本人留学生の失敗パターンを見ていると、10人中7人くらいまでは、「日本人空間」に足をとられて英語が熟達していない。

3)については、大学院終了後、職を得た外資系コンサルティング・ファームのペイがよく、なんと1年ちょっとで、留学に際して発生した機会費用(遺失給与)と直接費用(渡航費、生活費など可留学で使ったいっさいがっさいの費用)を回収できた。これは留学前の給与がとほうもなく安かったことが影響しているのだが。

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もとより、留学の効用は語学だけではない。やや誇張して言えば、生活圏そのものを異質なものにして、自分が置かれた環境のミニ「パラダイム」を変えることができる。自分と留学環境で遭遇するありとあらゆる異質なモトゴトを「新結合」(シュンペーター)できるので、日々イノベーションの契機に充満するのだ。

そして、しっかりした欧米の大学院ならば、その後のキャリアにおいて開発できるコンピテンシーの基礎を培うことができる。黒川清さんは「世界デビュー」と呼んでいるが、たしかに、世界に対するチケットのようなものを手中にすることができるように思われる。(たしかに実績もへったくりもない若者にとって、このチケットはさすがにまぶしく眼に映った)

下の図は、僕の観察からひっぱりだしたある種のパターン。外国企業、外資系企業などで英語ができる日本人に長年接していて抽出したものだ。



若年のころは、仕事において英語の占める割合が大きいが、キャリアを発達させてより高度な職務に就くに従って、相対的に英語以外のコンピテンシーが占める面積が膨らんでくるのである。それにしたがい、その人の英語力はいくら素晴らしくても、高度な英語力が仕事に対して掛ってくるレバレッジは小さくなってくる。

いくつかのレッスンがある。

・英語のみをレバレッジにするようなキャリアはいわゆる「英語屋」になってしまう。

・グローバルな環境=英語環境である今日、英語の持つ国際的な環境で専門性を発揮するときのレバレッジ性は増している。

・留学の効用は短期においては英語力に現れやすい。長期においては、英語力が基礎となるグローバル・リテラシーの涵養に顕れる。

・したがって、グローバルキャリアを積みたい人にとって、発音が多少訛っていてもコンテンツで勝負というゾーンにレバレッジを掛けることが効果的。

・純粋な人ほど米国留学をすると、アメリカ崇拝・追随的に洗脳されることが多い。この点は要注意。欧米留学に前後して発展途上国での経験があったほうがいい。



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