よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

米国債デフォルト:緊急レポート

2011年07月31日 | 恐慌実況中継

Oregon州のPortlandでブログを書いています。

Stanford University, Portland State University, The Portland University, Washington University,Cornellなどの気鋭の社会科学系研究者とプライベートなミーティングをしました。資本主義の未来について議論する集まりですが「米国債のデフォルト」について話題が集中しました。

①ジョージソロスがファンドをやめたこと、②事実上の金の売買の停止宣言の織り込み化。これら2つがなにを意味するのか?

 米国では7月15日に施工された金融規制法「ドッド・フランク法」によって、金の売買が規制される環境が整いつつあります。この法案は未認証取引業者ディーラーを対象にして、金などのデリバティブ商品の売買を停止するというものです。市場のセンチメントは、当局がその可能性を否定はするものの、米国の連邦債務上限の引き上げに合意に至らないこと、そして今回合意に至っても抜本的な解決策はないとのこと(つまり米国債デフォルト)を織り込みつつあります。

このフォーラムでは、デフォルトは100%あり得るという見解を示す研究者が多かったです。ジョージソロスはこの未曾有の事態に顧客と自己のポジションを守るために、早々にファンドを閉じて、顧客へのリターンを確定させました。当然、金融の大混乱(ペーパーマネー価値の暴落)を見越した行動です。

このような動きを実に正直に反映して、金の価格がこのところ高騰しています。(マネーは嘘をつきますが、Goldのほうが長期的には正直です)だから、米国政府(いずれ日本もそうなるだろう)はペーパーマネーから実物(金、銀、プラチナなどが代表格)へマネーがシフトするのを必死になって防ぐことになるでしょう。

米国は計画倒産に備えて着々と手を打っています。抜け目ないユダヤ系知識人は、シビアな政策分析の結果、そっと資産防衛に走っています。「おれはこうやっている」「こっちのほうがいいよ」、そんな本音の意見交換ができただけでもPortlandへやってきた価値があろうかというものです。

 

今や、米国の政策分析系の研究者は米国債のデフォルトについて、まずまちがいなくあり得る、問題はその時期、ということでほぼ見解が一致しています。日本のマスコミもチラホラこの問題を扱い始めていますが、まだまだ本気度が低いです。(地震、原発、なでしこetc...がニュースの中心で、ある意味目くらまし)

このような時にどう対処したらよいのか?それについては「恐慌実況中継」の中で繰り返し書いてきたので、時間のある方は過去のエントリーに目を通してください。(損はしないと思います)


原発事故後の官邸・国会の怠慢に満身の怒りを表明、児玉東大教授の国会証言

2011年07月29日 | 健康医療サービスイノベーション

今、仕事でアメリカのPortlandに来ていますが、日本を離れたときと相前後して重要極まりない証言が国会でなされました。

このブログの1カテゴリーの「健康医療サービスイノベーション」では、放射線物質、放射線の健康被害について3.11以来、日本のマスコミが伝えないマイノリティ情報を整理、分析してきています。

TwitterなどのSNSで拡散されている模様ですが、ことの重要さに鑑みて当ブログでも貼付けておきます。その映像はこちら

http://www.youtube.com/watch?v=O9sTLQSZfwo&feature=youtu.be

「原発事故後の官邸・国会の怠慢に満身の怒りを表明、児玉東大教授の国会証言。昨夜(7/29 AM1:00)ではアクセス数400が、今朝(AM9:30) 2万アクセスを越えた衝撃映像」


 


福島第一原発で働く20代の若者の話

2011年07月26日 | ニューパラダイム人間学

国民的快挙をたたえる賞が国民栄誉賞であると言われている。なでしこジャパンの快挙の一方で、福島第一原発の現場で働く若者を取材した記事が、A young man sacrificing his future to shut down FukushimaとしてThe Independentに載っている。

翻訳する時間がないので、既に翻訳を試みているブログから引用させていただく。そのモト記事はこちら


<以下貼り付け>

デイビッド・マクニール記者のインタビュー記事だ。

 契約社員ではなく正社員。保険にも入っている。月給18万円。4月からは「昼飯代」で1日1000円、プラスされるようになったそうだ。

 「ワタナベ」さんは、こう語った。
 「核燃料は溶けてしまっている。メルトスルーを起こしているかは分からない。8溶融した核燃料は)炉の底にある。それがメルトアウトし、水に接触したら、重大な危機になる。エンジニアたちはそれを抑え込もうと懸命に働いている」

 "The fuel has melted, but melted through or not – we don't know," Mr Watanabe says. "It's at the bottom of the reactor. If it melts out, and meets water, it would be a major crisis. The engineers are working very hard to get it under control."

 現場の人は、こういう認識を持って、日々、復旧作業にあたっているのだ。「水蒸気爆発」が起きるかも知れない、と思って。

 「ワタナベ」さんは「結婚はあきらめた」そうだ。「もしも彼女に仕事のこと打ち明けたら、私の将来の健康と、子どもに何が起きるかと心配するだろうから。どんな仕事をしているか、隠すことはできない」

 Whatever happens, Mr Watanabe has abandoned any hope of getting married. "I could never ask a woman to spend her life with me," he says. "If I told her about my work, of course she will worry about my future health or what might happen to our children. And I couldn't hide what I do."

 (一時、病院に入院して雲隠れした清水前社長について)「こういう現場で一度だけ作業したことないし、現場の問題を経験したことがないから、事故が起きたら本能的に逃げるしかなかったんだろうね」。「ワタナベ」さんは清水前社長に、軽蔑でなく同情しているのだそうだ。「ああいう人に厳しく当たると、自殺してしまうかも知れない」

 "[Mr Shimizu] had never worked onsite before or experienced any problems, so when trouble hit his instinct was to run away," Mr Watanabe says. He says he feels no contempt for the disgraced company boss, only sympathy. "If you pushed a guy like that too hard, he might commit suicide."

 こんな「ワタナベ」さんの答えに、マクニール記者は記事の結びでこう書いている。

 「理由はともかく、ワタナベ氏は東電の経営者たちと比べ、とてつもなく大きな謙遜と人間性への気遣い、ユーモアを示している。ふつうの会社の事務員とほとんど同じ給料で、彼と彼の同僚たちは、ふつうの生活への希望を犠牲にしているのだ。彼自身、首相にも県知事にも東電の社長に会ったこともない。子どもを持てないし、早死にするかも知れない。別世界に生きたら、ウォールストリートのトレーダーくらいお金をもらえるかも……そんな話をしたら、彼は笑った。
 「仕事を辞めたら、たぶんペンとタオルを買うと思うよ。こんな仕事をしてるんだから、それぐらい持ったっていいじゃないか」
 
 Whatever his reasons, Mr Watanabe displays infinitely more humility, concern for humanity and humour than the men who run his industry. For roughly the same take-home pay as a young office clerk, he and his workmates have sacrificed any hope of normal lives. He has never met the Prime Minister, the local prefecture Governor or even the boss of Tepco. He will never have children and may die young. In another world, he might be paid as much as a Wall Street trader, an idea that makes him laugh.

"I'll probably get a pen and a towel when I retire," he says. "That's the price of my job."

 同紙の東京特派員のマクニール記者は「共感のペン」の持ち主だ。だから、彼のインタビュー記事は、いつも私たちの胸に響く。

 国民栄誉賞は「なでしこ」だけでなく、フクイチの現場作業員一同に出すべきである。

<以上貼り付け>

ペーソスに満ちた話。

このブログでは、原発事故の健康被害(含む将来予測)についてフォローしてきている。

内外の情報格差は歴然としていて、特に、客観的かつ科学的立場に立つ医科学者の分析をレビューして見れば、今後被害は10年~50年(それ以上になるだろう)という長期に渡って末広がりに拡大してゆくだろう。

昨今、放射性物質の環境への放出によって麦わらを食べた牛の肉の感染が、マスコミをにぎわしているが、まだまだこんなものは序の口とみるべきだろう。

秋口から収穫される新米は、東日本のほぼ全域で汚染が確認されることになり、一大パニックを引き起こすことになるだろう。

放射性物質の汚染は、地上、海中、水中のすべての生き物に影響を及ぼす。とどのつまり、食物連鎖の頂点にいすわる人間に、長い時間をかけてじわり、じわりと濃縮されてくる。

そんな阿鼻叫喚のなかで、月収18万円の若者が福島第一原発で粛々と職務をこなし、将来の結婚さえも諦め、失職したら、ペンとタオルを買うというのだ。

ワタナベ君は、「慈悲の怒り」の人だろう。


怒りを忘れた人のために、上田紀行著「慈悲の怒り」

2011年07月19日 | No Book, No Life


「慈悲の怒り~震災後を生きる心のマネジメント~」を著書の上田紀行先生@東工大から贈呈いただきました。

サインまでしていただき、ありがたいものです。我ながらミーハーですね。

感想などちょっとまとめてみます。

◇    ◇    ◇

慈悲と怒りとは無縁な心象であると、多くの人々は薄々ながら前提を置いているのではなかろうか。ところが、本書の題名に端的に顕れているように、これらは決して対立する心象ではなく、怒りとは慈悲のひとつの表明形態なのである。


この本の題名を目にして、まず思い出したのが奈良は東大寺戒壇院の広目天像だ。それは瑞々しい慈悲の奥底に沸々と湧き上がる犀利にして、峻厳な怒りの情念の美術的な表象である。

怒ることを忘れてはいないか。日本は「怒り」を仏教哲学・美術にて昇華している稀有な国。欧米社会では、聖人、聖者で怒っているケースはまずない。

さて、特段、広目天像については言及はないのだが、しかるべき対象(おおむね人ではなく社会システム)に対しては決然と怒りの念をもって対処しよう、というのが本書における筆者の主張のひとつだろう。 

ところが、多くの日本人にとって、コトはそうそう簡単ではない。3.11以来、我々の心は、慈悲と怒りにも増して、悲しみ、嘆き、痛み、無力感、絶望、猜疑などの幾重にも折り重なった感情の絡み合いに脚をとわれているのではないか。

そんな問題意識のもと、本書の入り口では3.11以降の状況がわかりやすく整理されてゆく。すなわち、このような複雑、輻輳した状況だからこそ、「心のマネジメント」の大切さを訴えるのだ。 

心のマネジメントの第一歩は「モヤモヤ感」の切り分けだという。そして、しかるべき対象には決然と冷静に怒りの気持ちを臆することなく抱いて行動してゆくことが求められる。

行動する文化人類学者として著者は、ダライラマをはじめとする幾多の宗教的指導者との対話を通して、この然るべき「怒りの念」をナイーブに排除しないことを提言している。 

著者は、独自の「心のマネジメント」論を展開する上で、日本人の行動様式を規定する「空気」の存在を議論の俎上に乗せる。「社会の中に、その空気というものがまずあって、状況が最初に決められていると、我々はその状況や空気に寄り添うようなことしか言わず、状況そのものを変えるような発言や行動をしません」(p65)という。 

空気に拘束・呪縛され続けてきた日本人の姿が大東亜戦争の歴史などを簡潔にまとめられている部分は、なるほど納得である。 納得、というのは単なる迎合ではない。以前、空気と大東亜戦争について書いたことがあるからだ。(経営に活かすインテリジェンス~第2講:プロフェッショナルがインテリジェンスを学ぶ理由

そのうえで、著者は「『寄らば大樹の陰』、『長いものに巻かれろ』、なのだと、日本社会は『空気』の支配から逃れるどころか、その支配システムを強化することになります。それだけは絶対に避けなければなりません」(p144)と警鐘を発している。正鵠を得た意見だ。 

本書は、読者の自覚を試す貴重な一冊である。すなわち、各自読者が、なにを「空気」として感じ、どのような「空気」を吸っているのかという自覚の程度によって読後感は変わってくるだろう。 

一読者として勝手ながら、次のように読んだ。 

3.11災厄以降、ますます、この国の「空気」を操作・支配してきたもののひとつとして、原発のまわりの構成されてきた、政治、産業、官僚、大学、報道の利権複合体制の存在が白日のもと明らかになった。

安直な原発推進or反対の素朴な二項対置の議論に飛びつきまえに、この政・産・官・学・報の利権複合体という日本の中枢に巣食ってきた魑魅魍魎を合理的思考をもってして分析することも「慈悲の怒り」の所作の第一歩なのではないか、と。 

この本をいただく前の5月に、「原発過酷事故、その『失敗の本質』を問う」 を書いた。「慈悲の怒り」とはほど遠いものだが、自分なりのモヤモヤ感を払拭しつつ、やり場のない怒りを冷静なふりをして書きなぐったものだ。この本を読んでから、前記の文章を書いたら、もっと格調高いものになったのかもしれないが・・・。

「癒し」、「生きる意味」、「肩の荷」と続いてきた筆者の思索に今回、「慈悲の怒り」が加わった。理不尽な制度、社会システムにこそ、「慈悲の怒り」を抱き、果断に変革を迫ってゆかねばならないだろう。

怒りを忘れた人間は、唄を忘れたカナリアも同然だ。

モヤモヤ感がある人、最近、怒ってない人にとって、おススメの一冊だ。


Hearts of Gold

2011年07月18日 | よもやま話、雑談

岩清水梓選手が掲げていた国旗に書いてあった文章。

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「東北のみなさんへ 忘れたことはありません。

いつも自分にできることを考え​ています。

今回「良い結果を届ける」その一心でした。

メダルを持ってみなさんのところへ会いに行きます。

待っ​ていて下さい。

応援ありがとうございました。

共に歩もう​! 東北魂!!」

◇   ◇   ◇

こういうのをheart of goldっていうんですね。

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Hearts of goldの笑顔がすばらしい!


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「その者、青き衣を纏いて 金色の野に降り立つべし」


これからの助産所経営

2011年07月10日 | ビジネス&社会起業

梅雨が明けて、これからガンガンと暑くなってきそうです。

7/24に(社)日本助産協会で「起業家の視点でとらえる助産所経営~使命と理念を踏まえた経営戦略押さえておきたい財務知識」について講演します。

いのちをとりあげ、母子の「いのち」に寄り添うのが助産師です。助産師の方々の起業を手助けして、「いのち」のためになれればいいと思います。

<以下貼り付け>

今年度の助産所部会企画の研修会は、(1)開業助産師にとって最も重要なテーマである「安全」を優先した内容とすること、(2)最新情報を講義に入れ込むこと、(3)経営的な内容を押さえることをポイントに、これまで継続してきた「開業セミナー」を一新し、タイトルも「これからの助産所経営」としました。

特に、2 日目のグループワーク&ロールプレイでは緊急時の助産師の判断や対応等について、助産所部会委員が中心となって、より実践的な内容を身につけられるよう計画しています。

助産師を取り巻く社会的な問題、最新知識を幅広く学ぶことと、より実践的な助産師の判断力を深く学ぶことのできるチャンスです。今年は東京・大阪 2 会場で行います。助産師に必要な安全ポイントにもつながる内容ですので、ぜひ、ご参加ください。

<以上貼り付け>

 


アントレプレナーシップとベンチャー企業経営@日本工業大学技術経営研究科

2011年07月05日 | 技術経営MOT

‎7月23日から日本工業大学技術経営研究科@神保町の夏学期にて、「アントレプレナーシップとベンチャー企業経営」全15回の集中ワークショップ開きます。

以前開発した理工系人材向け起業家育成コースや、コーネル大学の起業家支援メソッドをふんだんに取り入れた内容です。

どうも日本の技術者は、タテ割り組織に囲い込まれて自由闊達なクリエイティビティを存分に発揮できていない。多様性、相互作用、創造的破壊の諸相に晒されていないとイノベーションは創発しない。こんなことを前専攻長の佐久間陽一郎さんと議論して、このコースをやることになったのです。

このような問題意識もあり、この講座では、拡大アントレプレナー人材の養成、涵養に力を入れています。

①イントレプレナー

サラリーを得る組織内(企業、公的研究機関、大学など)でリソースを組み換え、新しい価値を創出する人材。

②トランスプレナー

各種コミュニティをベースに組織横断的に様々なリソースを橋渡しして、新しい価値を創出する人材。

③アントレプレナー

独立して自らリスクを取り、新しい価値を創出する人材。

このコースからは、五十嵐博一さん 顯寛さん資料1資料2)などの起業家が輩出しており、今年もどのくらいエッジが立った奇人変人が集うか楽しみですね。ケースメソッドを用いるコマは高木さんに担当頂きます。

(神保町での古書渉猟も楽しみです)