7月にドイツのシュタインバイス大学の技術経営系大学院のアウトリーチ活動に参加することになりました。この活動に参加するのは僕自身のアウトリーチ活動でもあります。詳細はこちらのサイトです。
7-8月にかけて、東京農工大以外にも日本工業大学MOTや札幌市立大学大学院でレクチャーするので、忙しくなります。
さて、シュタインバイス大学は、knowledge and technology transfer partnerと謳っているように、産学連携スキームの大陸欧州でのプラットフォーム的役割を果たしています。
この一連のプログラムの中で、「ものことつくり」のマーケティングについてファシリテートします。使用言語は英語です。ドイツと日本の学生、社会人が一同に会して約1週間、多摩地域のベンチャーやスタートアップスのフォアフロントでインタビュー、ディスカッションし、戦略提案をまとめるという企画です。
準備は大変ですが、楽しみです。
「ものことつくり」のマーケティングってなんでしょうか?マーケティングといっても、コトラーがいうような4Pだとかのクラシックなフレーミングではありません。むしろ、先端的なものつくり系グローバル企業は、既存のフレーミングを破壊するようなイノベーション志向のマーケティングや技術経営3.0(松下の勝手な造語)を先鋭化させています。
ものつくり企業における新しいマーケティングないしは技術経営3.0とは、一言で言うと、マーケティングの「ものつくり」への浸潤、入り込みです。マーケティングが創るものっていったいなんでしょうか。
答え、意味。そして意味を共有する見込み顧客。
つまり、ものつくりへの意味の埋め込みが本質的に重要になってくる。
iphoneを買う人、プリウスを買う人、facebookを使う人、NPOが提供するソリューションを使う人・・・。多くの消費者はsomething differenetな意味を求めています。消費者なんてよぶよりも、もはや、意味の共有者、もっといえば、意味の共創者っていうほうがあっている。
つまり、ものつくりのプロセスの中に、意味つくりのマーケティングが埋め込まれて実装される、ということです。具体的には、意味志向のマーケティング機能が、製品アーキテテクチャ、デザイン、技術標準化、知財戦略、プラットフォーム戦略、事業戦略の中にシステミックに統合されてゆくという姿です。
アップルは、その意味で極めて先端的ですね。アップルはCPUとOSを垂直的に統合したなんてよく説明されますが、ほんとうに垂直統合させたのは、意味(外形的にはプロダクトデザイン、内面的には利用価値)でしょうね。
垂直統合といえば、最近はビジネス版「失敗の本質」の代名詞のような語感がありますが、これからは垂直統合企業の新しい出番だと思います。今求められているのは、意味を垂直的に統合するプロダクションであり、ビジネスモデリングです。
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ダメものつくり:機能・品質重視→意味つくり失敗→付加価値つくり失敗
これからのものつくり:脱ものつくり、つまり、感性・質感・意味の重視→ものつくりプロセスへのそれらの埋め込み→意味のもの(artifact)への埋め込み、つまり「ものこと」化→新しい付加価値つくり成功
顧客を基点にして、意味を共有し、バリューチェーン内の様々なユニットの価値共創(value co-creation)が本質的に重要になってきています。
従来はバリューチェーンの下流でのマーケティングが主流でしたが、マーケティング機能が上流へと遡及してゆき、「ものつくり」を「ものことつくり」へと変化させていく、そのドライビング・フォースです。換言すれば、マーケティングのリフレーミングです。
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さて、近年、研究、教育以外のはたらきとして特に注目されている大学のアウトリーチ活動ですが、日本の大学ではあまり注目されていないようです。母校のコーネル大学ではアウトリーチを以下のように説明しています。
Outreach programs solve real-world problems by linking people to Cornell's rich resources. Students, faculty, and staff share their expertise and energy with schools, businesses, government, community organizations, individuals, and families.
つまり、
コーネル大学のリソースにみんなを結びつけることによって、現実世界の問題を解決すること。学生、教員、スタッフが、大学、ビジネス、政府、コミュニティ、個人、家庭と専門知識技術とエネルギーをシェアすること。
こう考えればスッキリします。