よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

CTスキャナ/MRIをめぐる医療サービスイノベーション

2010年04月29日 | 技術経営MOT
5月10日に下記の要領で寺子屋セミナーが開かれます。

<以下貼り付け>

展著しい医療機器、そのなかでも特に急激な発展と普及を経てきたCTスキャナやMRIに関するイノベーションは医療サービス・イノベーションにどのような影響を及ぼしてきたのでしょうか?また未来にわたってどのようなインパクトを医療、そして社会に及ぼすのでしょうか?

当該研究分野の第一人者のJerome Galbrun氏から、最新動向を踏まえた報告を共有したうえで議論を深めます。尚、今回はすべて英語で行われます。

セミナー詳細と申し込みはコチラから。

Outline

Healthcare innovation has been supported by the emergence of new diagnostic tools and treatment procedures, recently triggered by the influence of patient advocacy groups. This presentation elaborates a dynamic view of innovation in medical technology and explains how physicians can contribute to emerging innovations, described as a service innovation function, beyond product development and patents. In Japan, with healthcare costs rising sharply, the benefits offered by advancing technology versus the fiscal cost have become a crucial area of public and policy debate.

When & Where

- 4pm May 10th 2010
- Campus Innovation Center in Tamachi

Speaker Profile

Jerome Galbrun was a senior finance manager in corporations including Hewlett-Packard and General Electric Healthcare. He is a Six Sigma Master Black Belt and has led more than 800 Six Sigma GE projects. He was Marketing Manager for GE Healthcare Europe from 2003 to 2006. As well as various lecturing activities in Tokyo, Mr. Galbrun is currently a researcher and Ph.D. candidate at the Tokyo Institute of Technology. His focus is on innovation processes in medical technology both in Europe and Japan. Mr. Galbrun received a Master from the Graduate Business School of Lyons, France. From 2000-2006, he received education courses from the Harvard Business School and the Wharton Business School.

<以上貼り付け>

ジテンシャLOVERS

2010年04月26日 | 自転車/アウトドア


このところ、「山と渓谷」の『自転車人』が元気ですね。

大隈講堂の前のWCC(早稲田大学サイクリングクラブ)の面々ではありませんか。

何代くらいの連中なんだろう。

めったに見かけないようなランドナーやキャンピングがうようよ。

ツーリング自転車復活の兆しか。

サービス・イノベーションの経営学 その5

2010年04月26日 | 技術経営MOT


2010年05月号 (通常号) ( Vol.20 No.5)

5回目は、「医療サービスの構造機能モデルで俯瞰する」p424~

今回は、医療サービス・イノベーション創発を鳥瞰するいくつかのモデルを創ってみました。

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ところで、表紙の「竜馬がゆく」がいいですね。竜馬は、幕藩体制のなか、藩が規定するキャリアビジョンを否定して(脱藩して)、みずからのキャリアを大胆に創ってゆきました。

一見、組織は、キャリアビジョンやキャリアパスを提示できたほうが、メンバーに安心感や可能性を与えるように思われます。高度成長期の企業ならばさしずめ、終身雇用や年功序列といったところでしょうか。しかし、異分子にとってそれらは自由な発想と行動を束縛する「タガ」にしかすぎません。

人的資源管理論というと、人事制度(等級制度、評価制度、賃金制度)を引っ張てきて、終身雇用や年功序列制度の「合理的」なるものを論証しようとする研究が多いですね。そして、日本的経営の特殊性やグローバル人事との差異もよく論じられます。制度設計は、反面、「タガ」の桎梏づくりでもあります。

組織のなかで、桎梏づくりに熱心な制度屋さんががんばりすぎると、イノベーションは衰退してゆきます。そして、その桎梏を内側から否定して破壊しようとする動きが出てきます。シュンペータの言を借りれば、創造的破壊でしょう。「タガ」をはずして大きなビジョンに向かって行ける竜馬のような人材を創りたいものです。

ただし反対勢力から抹殺されてしまってはもともこもないので、そうされないようなインテリジェンスが必要です。

規格、標準、特許をめぐる知財戦略とインテリジェンス(諜報謀略)の統合

2010年04月20日 | 技術経営MOT
5/13日(財)本規格協会で講演します。とあるルートから依頼があり、独自のCompetitive Intelligenceの視点からディスカッションを提供します。

論題:「規格、標準、特許をめぐる知財戦略とインテリジェンス(諜報謀略)の統合」
日時:5/13(木)13時15分~15時15分
場所:財団法人日本規格協会
    港区赤坂4-1-24 

                ***

規格、標準、特許を駆使する知的財産戦略において我が国は、欧米の優良企業(覇権産業)ならびにそれらのフォーラム、コンソーシアムの動向と比べ、遅れをとってきました。その反省もあり、近年日本でもテクニカルな規格、標準、特許を駆使する知的財産戦略が、産業界でも議論されるようになり、技術経営大学院などでも講ぜられるうようにはなってきています。

日欧米の企業戦略立案に関与してきた私の視点からは、知財に関するテクニカルな知識やスキルだけでは十分に対応できないとの認識を持っています。なにが必要なのか。知財戦略の上位レイヤーに位置するインテリジェンスというグローバル・ビジネス・リテラシーが必要なのです。

そもそもインテリジェンスを「情報」、「情報活動」などという薄っぺらい用語に訳してしまったのがそもそもの間違いです。インテリジェンス=諜報謀略です。このような文脈で、インテリジェンスとは、「個人、企業、国家の方針、意思決定、将来に影響を及ぼす多様なデータ、情報、知識を収集、分析、管理し、活用すること、ならびにそれらの素養、行動様式、知恵を総合したもの」と定義することができます。

知財活動を戦略的に昇華する位相には、インテリジェンス=諜報謀略が存在しますが、このことを議論する論客は稀有でしょう。大東亜戦争後、覇権国である米国は、日本国内から操作的に、インテリジェンス=諜報謀略活動を消去してきたことと無関係ではありません。

このようなことを含め、最近の国際標準化動向や知財戦略の背後に蠢くかけひき、トラップ、覇権志向、交渉の裏舞台を含め、議論を提供します。

                ***

農業起業のオルタナティブなデザイン

2010年04月17日 | ビジネス&社会起業
少子高齢化、過疎問題、収益を上げづらい農業ビジネスモデルなどの問題が複合して、休耕地、耕作放棄地が全国的に増加しています。また、低い食料自給率を食の安全保障の観点からとらえ問題視するむきもあります。

農地を占有し、農家が労働力を投入し、農作物を栽培・収穫して、JAなどの流通機構を通して販売し利益を得てゆくという零細垂直統合・プロダクションモデルのみで、農業を構想するのには限界があります。またあまり楽しいものではないでしょう。

日本国内では、従来型ではないオルタナティブな農との関わり方をしている動きには3つくらいのパターンがあるように思えます。

(1)付加価値流通モデル
都市の住民は、安全で美味しい農作物を欲していて、近年有機作物やオーガニック・フードなどを個の欲求をもとに求めるニーズには大変大きなものがあります。大地を守る会は、この受給ニーズのギャップをキャプチャーしておおいに発展しています。

(2)「場」共創モデル
また、土や緑といった自然から遠いところで人工物に囲まれて生活する都市住民には、土や緑への回帰を目指す傾向もあります。もちろん、畑、水田、果樹園とて人工物ですが、これらのコンポーネントは自然に根ざしたものなので、多くの人間は自然度の高い環境に接すると安らぎ、弛緩を感じます。これらの需給ギャップを埋めるビジネスモデルとして、八ヶ岳青空農園大山千枚田保存会などがあります。

(3)ボランティア・モデル
また、東京農工大学の学生が行っている黒森もりもり倶楽部は過去の休耕地を都会の学生のリソースを活用して、過疎地域を活性化させています。梨県の黒森集落にて活動する都市農村交流サークルで、小麦をはじめとした作物の栽培や聞書き調査(ESD)、一般参加者を集った農作業体験企画等を行っています。

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農作別を栽培するのみならず、農地リソースを活用して、農村と都市を繋いで共進(co-evolution)させてゆく。安全で美味しい農作物を共創(co-creation)する。農にかかわるリソースを農村と都市の間で交流させてゆく。このように、農をめぐるシーンにはグリーン・ツーリズム、エコ・ツーリズムなど、実に様々な共創的なサービス・モデリング(co-service modeling)の可能性があります。また各地の農業大学校は無料で農業起業を支援しています。

とくに首都圏近くの農業支援プログラムは注目度大でしょう。零細垂直統合・プロダクションモデルを中心にプログラムがたてられているのはしょうがないとして、上記のような農業起業のオルタナティブなデザインという視点を持って、農業支援プログラムに参加すると面白いと思います。

千葉県では、千葉県農業大学校が行っている農業塾。山梨県では、山梨県農業大学校が提供する各種農業起業研修コースがあります。



旅用自転車 ランドナー読本

2010年04月12日 | 自転車/アウトドア


4月に刊行される「山と渓谷」社の自転車人編集部『旅用自転車 ランドナー読本』に不肖松下が乗っている1974年製片倉シルクと小生のことが紹介されています汗)

追記:そのいきさつは、Mixiの知人の紹介で多摩川関戸橋のフリマにふらっと行き、平野監督と『自転車人』の編集長がおうちにやってきてアツく語り合ったことが不思議なご縁となりました。

出てるのは1974年製片倉シルクの全体と部分写真(20ページあたり)とインタビュー記事「ランドナーと人物」(70ページあたり)の2箇所です。

近年、めっきり旅用自転車が下火になっている中、平野勝之氏に誘われ、ボランティア(出稿料、肖像権使用料など一切なし!)として登場となった次第です。

この本がきっかけとなり、衰微しつつある旅用自転車 ランドナー復興の一助にでもなればと思います。

よろしければ、本屋さんによった時など御覧下さい。

異邦人の日本社会観察

2010年04月09日 | よもやま話、雑談
昨夜は旧友と、とくと語り合う。

彼はパキスタンの高校を卒業後、アメリカに渡ってCornellへやってきた。そこで僕らは友達になった。Electronic Engineeringで卒業後、オーストラリアに渡りTelecom Australiaではたらき、その後、日本へやってきて Deutsche Bank、Nikko CitigroupなどでFinance Technology and Managementのプロフェッショナルとして辣腕ぶりを発揮している。グローバルなキャリアを積み、奥さんはUKで教育を受けた日本人。

Riba(金利)をとることはイスラムの教えでは否定されているが、彼はリベラルなムスリム。クルアーンは英語で読み、結婚式は明治神宮で挙げた。

異邦人による日本社会の参与的観察には、『日本奥地紀行』のイザベラ・バードや『英国人写真家の見た明治日本』のハ-バ-ト・G・ポンティング を引くまでもなく、貴重な見解が多く含まれるのだ。

その彼の日本観察がとても面白かったのでメモ。

・日本は1990年代からほとんどなにも変わっていない。
・ひとりあたりGDPはどんどん落ちてきて、完全にピークアウトしているのに、大方の日本人はそれに気付いていない。あるいは、認めようとしない。
・日本人男性サラリーマンは教養ある会話ができない。
・年間自殺者3万人が10年以上の国の住人はハッピーとは思えない。
・用もないのに夜会社にだらだら残っているのは不思議としかいいようがない。
・日本にくる前は、日本女性は差別されているという先入観があったが、実は女性のほうが元気でクリエイティブ。
・家庭も持たない、地域との接触もなく、会社だけの人が多い。その会社が不況でギクシャクして結局、すがる絆がなくなっている人が増えている。
・年功序列が日本人のクリエイティビティを奪っている。

う~ん、なるほど。

・年寄りをリスペクトする、仲間を大事にする、街を綺麗に保つ、環境を安全に保つ、などのイスラムの教えが徹底されているのが日本。

イスラームの浸透が極端に低い日本ではあるが、なぜかイスラムの教えに沿って社会づくりをしてきたように見える、という観察は鋭い。イスラム神秘主義の話になったことは、相当酔もまわってきたのだが。Amin!の日本観察は実に面白い。

iPadと電子出版→ライターイノベーションの萌芽

2010年04月03日 | 技術経営MOT


アメリカではiPadを買うための行列騒ぎが起こっているようですが、たぶん日本でもそうなるでしょう。しかし、iPadは、たんなるユーザの立場で買ってしまうと、気持ちよくAppleに囲い込まれてしまうビジネスモデルなので要注意。で、発想を転換してなんらかの収益源を求めるスタンスで眺めてみることをおすすめしています。

いくつかアイディアがあります。ここではテキスト提供業(売文業、ライター稼業)の立場から。何冊かの本の著者として、また現在も紙媒体や電子媒体にテキストを提供している身にとって、iPadと電子出版の動きにはことさら注視してきています。

なかでも注目の動きは株式会社アゴラブックでしょうか。池田信夫さんの電子出版はすでに始まっている、のエントリーは面白いです。

<以下貼付け>

3月1日付で「株式会社アゴラブックス」を設立し、私が代表取締役に就任した。役員兼社員5人の超零細企業だが、4月から電子書籍の刊行を始める予定だ――といっても、設備は何もない。インフラはGoogle Appsで1人年間6000円。システム管理もすべてアウトソースするので、固定費はゼロ。失敗した場合のリスクもほとんどない。

iPadは今月下旬に日本でも発売されるが、それを使って読む電子書籍が日本にはほとんどない。このまま放置すると、日本は音楽流通や映像流通のように欧米に大きく引き離され、中国にも抜かれるおそれが強い。しかし日本の業界の実態を知っている人ほど、ビジネスを始めようとしない。電子書籍は、これまで挫折に次ぐ挫折の連続だったからだ。その原因はいろいろあるが、大きくいって次の3つだろう:

1紙の本に匹敵する見やすい端末がない
2出版社がコンテンツを出さない
3流通ルートがない

このうち1は、iPadやKindle(秋には日本語版が出るようだ)で解決されるだろう。2は意外にそうでもなく、出版不況が深刻化する中で「座して死を待つより電子出版に活路を求めたい」という出版社は多い。角川歴彦氏のように著書を全文公開する経営者もいるし、Google Booksに4000点も提供した出版社もある。

たぶん一番むずかしいのは3で、これまでの電子出版がこけた最大の原因もこれだ。実は今でもそういうウェブサイトはあるが、ほとんど売れていない。ところがオタク系サイトは繁盛しており、並みの出版社よりもうかっている。携帯の読書サイトの大部分もオタクとマンガとエロで、これも高い収益を上げている。

<以上貼付け>

従来10%程度の印税で満足させられていた(!?)のですが、電子出版では中抜きを排除するので、本の単価X部数の70%位が身入りになるそうです。こんな話を聞くと、僕にかぎらずライター稼業は、電子出版に食指が伸びることでしょう。東販、日販などの取次会社(日本独自の業態)は全出版物の80%をも取次をしています。小売店である街の本屋さんは、返本がだいたい50%くらいあり、返本された本のリスクは出版社が負担しています。

つまり、取次会社は優越的地位の濫用に近いことをやっているといわれてもしょうがないでしょう。とはいえ、バリューチェーンの川上にいる著者、出版社も、川下にいる書店も、「それをいったらおしまいよ」ということで疑問に思っていても、なかなか言えなかったことなのです。



また、iPadは「出版のユニクロ」の出るチャンスのなかでは次のようなことが述べられています。

<以下貼付け>

アップルの発表したiPadは、さまざまな話題を呼んでいる。アマゾンのKindleがハードウェアもソフトウェアも英語版しかないのに対して、アップルは日本語ホームページも立ち上げて日本で売る姿勢を見せており、3月に発売されるときは日本語表示も入力も可能だ。しかし残念ながら、日本語の本を読むことはできない。書籍ソフト「iBooks」の日本語版がないからだ。日本で発売されるiPadは、iPhoneを4倍程度に拡大したものにすぎないのである。

iBooksを表示させたiPad。日本のアップルのサイトでは、iPadの情報はあっても、iBooksの情報はない。ただ、そのうちiBooksが出る可能性もある。今でもReaderboxというiPhone用の書籍ソフト(有料)があるので、青空文庫などの無償で配布される本は読める。問題はiPadで売れる本が出てくるかどうかだが、今のところその見通しはほとんどない。ある編集者によると「出版業界の状況は非常にきびしく、日販(大手の取次)が在庫を減らすため『総量規制』で中小の出版点数を絞っている。この状態で日販の頭越しに電子出版など開始したら、『おたくはiPadで売るから、うちで扱わなくてもいいでしょ』などと意地悪されるのを恐れて、電子出版に踏み切れない」という話もある。

この背景には、日本の特殊な書籍流通システムがある。書籍は委託販売で、小売店で売れ残ったら返品できる代わり、再販制度(価格カルテル)で定価が決められている。在庫リスクを負うのは、取次ではなく出版社だ。最近では返品率は50%近くに達し、返品の山に埋もれて倒産する中小出版社が続出している。また定価のうち出版社に支払われる割合は、大手出版社と中小では差が大きいと言われている。

このように問屋が価格をコントロールする定価販売システムでは、小売店にはリスクはないが、価格競争でもうけるリターンもない。これはユニクロ(ファーストリテイリング)の登場前の衣料品業界と似ている。ユニクロの柳井正社長は、このように「小売店を生かさぬよう殺さぬよう」利用するシステムでは成長できないと考え、製造直販に踏み切った。在庫リスクを取ることによって、利益も100%取るシステムを構築したのである。

<以上貼付け>

何冊か出版の企画を持っていますが、電子出版の可能性を試してみたいと思いますね。ついでに言うと、iPadと電子出版が重なる領域には山のようにビジネスチャンスが眠っています。ファーストムーバーになれば、いろいろ機会を先取りできます。つまり、起業として可能性がある領域があります。

先日友人からPh.Dの論文をもらったのですが、学位審査に通ってしまえば、結局査読した先生方数人とゼミの関係者10~20人くらいの読者しか得ることができず、出版という観点からPh.Dの論文はまったくワリにあわないとボヤいていました。なるほど同感です。

たとえば、博士論文をニッチな専門分野ごとにカテゴライズして電子出版で配布するのであれば、著者、読者ともにハッピー、かつ低コストで電子出版を行う事業者の運営コストをカバーできる可能性はあります。

ニッチながらも「三方良し」のビジネスのビークルはどうするのか?フォープロフィットでゆくのならば株式会社でしょう。あるいは、公益性を徹底重視し、創業者がIPOやM&Aによるイグジットをことさら狙わないのならば、近々できるだろう「社会事業法人」(税制優遇、無配当株式)という手もあるでしょう。

医療機器メーカーに求められる戦略の立て直し

2010年04月02日 | 技術経営MOT
とある医療機器メーカーの社長さんとお会いした。先端医療に食い込みをはかっているのですが、ヒット商品になるのかどうか、まったく不安で、いいアドバイスが欲しい人のことでした。

医療機器メーカーは戦略の立て直しが迫られているようです。これについては、Hope is on the Way
経済産業省の健康安心イノベーションプログラム担当による活動記録
がピリッとしたことを書いています。

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まずは医療機器市場全体のアウトルックから。

 世界の医療機器市場は2000年に1600億ユーロ、シェア内訳がEU 26%、米国37%、日本15%、その他22%であったのに対し、2005年の時点で全体の市場は1870億ユーロに拡大したにもかかわらず、内訳はEUが34%、米国が42%、日本が10%、その他14%と、世界の市場が伸びている中で相対的に日本のシェアが縮小傾向にあることがわかります。
 
 では、日本国内ではどうなっているかというと1985年前後、海外企業シェアが20%前後で推移してきたのに対し2007年には40%程度に倍増、それに正比例して国内企業の日本市場におけるシェアは少なくなっています。

 一体どんな問題が起因しているのでしょうか?

 少し前の資料ですが、この業界が抱える問題点を的確に指摘した資料が国家産業技術戦略検討会が平成12年4月にまとめた「医療機器産業技術戦略」にまとめられていました。いずれも大切であり解決しなればならない問題なので敢えて列記します。

・国による一元的・一貫した協力な研究開発支援体制の欠如
・組織的な医工連携システムの欠如
・国立研究所・国立大学医学部・国立病院における研究者のインセンティブがないこと
・臨床・教育における医用光学の重要性の認識が低いこと
・人材の流動性が低い
・ベンチャー企業が育ちにくい環境
・大学医学部と企業との共同研究が円滑でないこと
・迅速で質の高い臨床試験実施体制の未整備
・有効性、安全性、品質表か技術の未開発
・薬事法による規制、保険制度
・テクノロジー・アセスメントが行われない
・リスクの高い製品に対する素材・部材等の国内供給が困難なこと
・規制の国際未整合
・戦略的な知的財産権対策
・アジア地域への取り組みが不足

 そしてそれらの問題を認識するのと同時に、厚労省、文科省、内閣府、経産省でも様々な政策検討がなされてきました。バラバラに、バラバラに、バラバラに・・・そして10年後の今も問題点は何ら解決されてませんでした。


 がっかりだ。

<以上貼付け>

 しかし、がっかりばかりではいけない。現場のコンサルティングではいろいろは処方箋を書きますが、戦略に関するヒントほんの一部だけ、ここにも記しておきます。

世界の優良医療機器メーカーの基本戦略はプラットフォームによるロックイン。まず日本の業界慣行から離れて世界の動向を見ることが大事です。

1)プロダクト戦略
内=インテグラル(擦り合わせ)、クローズド、技術秘匿、外=モジュラー、オープン、標準化による製品アーキテクチャ。この2段構造で、内側のキモは隠しながら、外側は標準化して、他のシステムと連携しやすいようにオープン化してゆく。

2)知財戦略
プロダクト・イノベーションのゆきかたは、当然、内側の急所技術にはIPをかけて秘匿、保護する。技術軌道上に関所をつって防衛する。または関所から先は自社しかいけないようにする。先に書いたように、外側はモジュラー、オープン、標準化路線を採用して、ユーザーにとっても他のシステム、機器メーカーからも連携しやすくする。

3)Diffusion戦略
以上の相乗効果として普及戦略が立てられる。マーケティングとはプロダクトの見込み客づくりだが、その見込み客づくりを、特許、標準化を駆使する戦略的知財マネジメンでおこなってゆく。

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もちろん、イノベーションエコシステムとして、先端医療分野での産学公連携は必須。ただし、タコツボ的連携はダメです。標準化、知財、医療イノベーション、戦略を総合的に見れる目利きというか、参謀役が必要です。そのためには、大学病院はオペレーションを立て直すとともに、R&D機能の根っこになる知財部や産学連携部門を強化してゆくべきでしょう。