よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

本多静六『私の財産告白』

2011年04月18日 | No Book, No Life

とにかく書くので忙しい。といってもこのブログのことではない。自分もモノを書いて出版社やメディアからお金をいただく身なのでプロの文筆業者のはしくれである。

で、どのくらい書いているのだろうか。

ざっと一年で計算してみると、昨年は毎月の月刊誌連載、96,000文字。日経ITPro(ウェブ媒体)24,000文字、単行本1冊で88,000文字。これらの合計で一年間で算出した文字数は208,000文字。12で割って月当たりにならしてみると、平均17,333文字。さらに、月当たり原稿用紙に換算して43枚。一日当たり400字ヅメ原稿用紙1.4枚。

そうか、原稿用紙を一日一枚以上書いているのか!

これら以外にもタダやマイナスのモノカキの仕事もある。そういう意味では学術論文は最悪の仕事だ。なにせ、原稿料はなし、費用のみかかる。でも書くプロセスで強烈にモノを調べ理論化してゆくのでけたたましく面白いのだが。

だからブログってなんなのだろう?と思う。書いてなにもならないし、どうってことない。だからと言って、ブログをおろそかにすべし、というものでもない。

ブログに走り書いた雑文がきっかけとなり、どこいらの編集の目にとまったりして、取材を受けたり、原稿に繋がったりすることもままある。そうした金銭に繋がる現実的な効用よりも、ブログは、モノカキとして、少ない燃費で絶えず「書きモード」をオンにしてエンジンを回しておくアイディア、発想の「仕込み場」としての効用が大きいように思える。(日常のよしなごとをダラダラ書くというもの楽しいかもしれないが、それだとあまり仕込みにはならない・・・)

          ◇    ◇    ◇

前置きが長くなったが、研究者、貯蓄家、投資家、篤志家として本多静六はあまりに巨大だ。彼の書いた「私の財産告白」がとほうもなく味わい深い。財産形成のヒントや洞察を得るためにこの本は読み継がれている。

たしかに、つぎのような教えは値千金だろう。「収入の1/4を貯蓄せよ」、 「財産を作ることの根幹は、やはり勤倹貯蓄だ。」、 「大切な雪だるまの芯を作る。玉の芯ができると後は面白いように大きくなる。」、 「好景気時には勤倹貯蓄をし、不況時には、投資せよ。 時機を逸せず巧みに繰り返す」 

また、唸るような教えも多い。

「一生涯絶えざる、精神向上の気迫、努力奮闘の精神であって、 これをその生活習慣の中に十分染み込ませることである」(P.61)、「人生における七転び八起きも、 つまりは天の与えてくれた一種の気分転換の機会である。 これを素直に、上手に受け入れるか入れないかで、成功不成功の分かれ目となってくる」(P.110) 、「人生の最大幸福は職業の道楽化にある。 …すべての人が、おのおのの職業、その仕事に、全身全力を打ち込んでかかわり、 日々のつとめが面白くてたまらぬというところまでくれば、 それが立派な職業の道楽化である」(P.186) などなど。

ところどころ、出てくるピース・オブ・センテンスにも「おっ」と思わせる。

・人生一度通る貧乏ならできるだけはやく切り抜けた方がよい 
・ケチと気前のよさが与える後の印象 
・気の毒は先にやる 
・金儲けは理屈ではなく実際である、計画ではなく努力である、予算ではなく結果である。 
・好景気には勤倹貯蓄、不景気には思い切った投資 
・よけいな謙遜はしない 
・人の名前を正しく覚える 
・仕事に追われないで、追う 
・平凡人は本業まず第一たるべし 

          ◇    ◇    ◇

以上の驚愕すべき貯蓄、投資の大実績に加え、本多静六は、戦中戦後を通じて働学併進の簡素生活を続け、370冊余りの著作を残した大文筆家でもある。370冊!!一日原稿用紙1枚を長期に渡って自らに課したという。

一冊の文字数を少なめに見つもって60,000文字として370冊だから静六は、生涯で22,200,000文字書き連ねたこととなる。かりに、私の昨年の年間産出文字数208,000文字で割ってみると、107年となる。私のペースで書いて、107年かかるということだ!

いやはや、本多静六の書を眼の前にして、謙虚にもっと書かねばなるまいと悟った次第。


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