よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

オープンソース・ビジネス・カンファレンス その2

2006年02月21日 | オープンソース物語
COSS界で大変注目されているニュースをひとつ。SugarCRMとMicroSoftとのアライアンス。日本語メディアも取り上げている。

ちょうどこの発表があったのは、OSBCのオープニングの直後。SugarCRMとMicroSoftはバレンタインズ・デイにあわせて、"Share the Love"とプリントされたチョコレートを配っていた。

"Share the Love"は奥深い意味をしたためている。旧世代のオープンソース運動は、反マイクロソフトの色合いが濃厚で、プロプラ勢力としてのマイクロソフトの存在があったからこそオープンソース運動のアンチテーゼが成立してきたという側面があった。しかし、SugarCRMとマイクロソフトの関係は、そんな過去の桎梏、怨念に関係なく、コマーシャルなプラグマティズムに立脚している。コマーシャルなプラグマティズムに立脚した相互の利害をさらりと"Love"と表現したところに、ユーモアのセンスを感じるのだが。

さて、SugarCRMは次期CRMスイート「Sugar Suite 4.5」をMicrosoft社のソースコード開示ライセンス「Microsoft Community License(Ms-CL)」の下にリリースする。SugarCRMの顧客のおよそ35%がMicrosoft Windows Serverを利用しているので、いわゆるWAMP(Win,Apache,MySQL or SQL, php)環境で動作するSugarCRMは、両者にとって実入り部分があることになる。また、次期CRMスイート「Sugar Suite 4.5」ではWindows Server OSとの相互運用性が強化されることとなる。

Microsoft社の「Shared Source Initiative」のもとで、ソースコードの閲覧,改変,再配布が可能で,商用と非商用を問わず利用できる。SugarCRM社は,Microsoft社の「Shared Source Initiative」ライセンスを採用する最初の商用オープンソース企業となったのだ。

OSSムーブメント、OSSコミュニティを敵対視するのはやめて、互恵の関係を作ることが現実的と判断したMicrosoft社にとって戦略的な布石である。

"From Pragmatism With Love"

SugarCRM社長、ジョン・ロバーツと

2006年02月20日 | ビジネス&社会起業
SugarCRMと日本で正式に業務提携した初めての会社がケアブレインズ。提携した当初より、あきらかにSugarCRMの業界における評価は急速に高まっているようだ。いや2ヶ月単位で激変している。なにせ、ほとんどの第三者のオープンソース・ビジネスの講演でSugarCRMがリファーされるくらいだ。ベンチャー・キャピタリスト、他のOSS系ベンダ、MITの教授まで、リファーするご面々の顔ぶれも多彩の一言だ。

さてOSBCで会ったジョン・ロバーツも、大層ご満悦の様子だった。ジョンは、この日OSBCのパネルディスカションでピリッとしたコメントを出していた。

「いやー、いい話だったよ」とちょっとおだててやると、
「業界のご歴々の前で、ちょっとナーバスになったけどね」という返事。

「もうちょっと、OSSコミュニティに対するSugarCRMのスタンスをはっきり言って欲しかったけど。たとえば、distribution modelとdevelopment modelにたいする今後の方向性とかね」と聞くと、
「こればっかりは企業秘密。いろいろ聞かれて困ってるんだよね。まあ、そのうち語り合おう」というふうに。

あとはコーヒーを飲みながらのマル秘のお話。

若きコマーシャル・オープンソース業界ベンチャーの雄、ジョン・ロバーツは飄々とした風貌ながら、明晰な頭脳と進取の精神に溢れるリスクテーカーだ。こんなリスクテーカーといっしょに仕事ができてうれしい限りだ。








オープンソース・ビジネス・カンファレンス その1

2006年02月19日 | オープンソース物語
SugarCRMとのミーティングがてらサンフランシスコで開催されたオープンソース・ビジネス・カンファレンスに参加してきた。オープンソースの「ビジネス」というところがツボ。オープンソースとビジネスがどのようにつながるのか?という牧歌的な議論さえ先進的とされる日本の状況とは、まったく異質の知的世界が展開されていた。

今回のカンファレンスにあわせる形で、大きなニュースリリースの連発であった。まずは、Microsoft社とSugarCRM社とのアライアンス。あのハロウィーン文書のころのMicrosoftはOSS陣営を先鋭な警戒感のもと敵対視していたが、とうとうオープンソース陣営と融和を図りつつ、SQLサーバビジネスなどのてこ入れという現実的な戦略選択に至ったということか。OracleがSleepyCatを買収したことも会場をざわめかせた。昨年末には、OracleによるSiebel買収が話題になったが、とうとうOracleもビジネスの匂いをオープンソースに正確に嗅ぎつけ、SleepyCatを手中にしたわけだ。

このあたりの動向は、Richard M. Stallmanらによるフリーソフトウェア原理主義的運動から、オープンソース・ソフトウェアのビジネスとの連動を中心とするプラグマティックな現実路線へと展開してきたひとつの大きな節目となる。会場に詰め掛けた誰しもが、この節目を実感していたことだろう。

この節目の意味は、いくつかの補助線を引けばはっきりと分かってくる。

●ソフトウェア・プロダクトの開発体制

雇用した従業員にソフトウェアを開発させる体制はコストを押し上げるのみならず、ソフトウェアにとって生命線ともいえる創造力の発露に限界をきたす。いろいろなスピーカーがOSS Ecosystemというワードを頻繁に使っていたが、OSSの同時並行的、自律分散的なグローバルな開発体制が明らかにアンチテーゼ以上のものに見られている。既存のソフトウェア企業はかつての疑問符つきの見方から、OSS開発体制を驚愕の眼、羨望の眼で見るようになってきている。簡単に言えば自分たちもオープンソースソフトウェア開発コミュニティを持ちたい、ということだ。

●コミュニティの価値

つまり、オープンソース・ソフトウェア・プロダクトの開発体制そのものであるコミュニティの価値が認められつつある。コミュニティの価値というのは市場で期待される経済価値、つまり値段ということになる。既存のクローズドな開発/マーケティング体制に代わり、オープンな開発/マーケティング体制を採用する場合の費用対効果、資産価値はどうやって算出するのか?なるほど、あるパネラー感嘆するように、「コミュニティの形成方法、価値算出なんてどのビジネススクールでも教えていないよ」と言っていたが、今後の極めて重要な研究領域となるだろう。Community Imperativeというセッションでは、暗中模索の状況が浮き彫りになっていた。ただし、模索しながらもとにかくヤルというのは素晴しいことだ。

●ソフトウェア企業のフロンティアとしてのOSS

このようにソフトウェア開発、マーケティングというテーマから見るとき、オープンソース・コミュニティは新しいフロンティアを想起させるにはもはや十分だ。市場ではなく、フロンティア。市場においては、商品やサービスは、それらが提供するソリューションの価値が需給関係において決定されるが、OSSコミュニティの価値を左右しているのは「期待」なんですね。

会場で知り合ったアメリカ人の記者とこんな雑談になった。

「いやー、ソフトウェア産業にとってOSSというのはフロンティアなんですね」

「そうそう、かつてゴールドラッシュのときに、大挙して西部を目指していろんなやつらがやてきたように、今はオープンソースが西部のフロンティアのようなものだね」

OSS企業のエグゼキュティブ、既存のソフトウェア企業、デモ発表者、ベンチャーキャピタリスト、業界アナリストが集う雑踏は混沌としている。そのカオスのなかにこそフロンティアがところ狭しとひしめいているかのようだった。

オフィシャルガイド「実践!オープンソースCRMアプリ~SugarCRMを使い倒す~」を共著出版

2006年02月12日 | No Book, No Life
新著を翔泳社から出版。編集いただいた外山圭子さんにはお世話になりました。3/3にはこの本の出版に合わせてセミナーを開くのでみんなで集まりましょう。

                  ***

世界中で爆発的ブームを起こしているSugarCRMの全貌を一気に公開。破壊的イノベーションのメカニズム、コマーシャルオープンソース、今後のCRM 業界、ソフトウェア業界の方向に一石を投ずる画期的な情報の集大成。導入開発テクニック満載の日本で唯一のSugarCRMオフィシャルガイド。 SugarCRM日本語プロジェクトを産学官連携体制で牽引し、有償版の日本代理店を担当するケアブレインズによる待望の一冊。

                  ***

と、まあ、プロモーション的な能書きはさておき、今回の出版のきっかけも雑談から。この本で単・共著含めて11冊目の出版となるが、だいたい出版社の人やまわりの人との雑談から本づくりは始まる。共著した内田隆平と、ああだこうだ雑談会議をしているときに、こりゃオモシロイ!よっしゃオープンソースSugarCRMをネタにして本を書こう!ということになり、いろいろな不思議なシンクロニシティの繋がりで出版社の翔泳社から出すことになった。

アウトプット系活字人間から見れば、本書き、モノ書きは排泄生理作用みたいなものだ。体の奥のほうにたまってくる毒素を書いて排出しなければ、体とアタマがうっとおしくなる。だから書く。書かざるをえない。

その意味でブログは排泄物を捨てて、発酵させる昔の地方にはよくあった汲み取り式の便所みたいなものか。排泄物を体外に出して身体をきれいにしておくカタルシス(catharsis)の場みたいなものだ。さらに時間がたてば、ブログ便所は芳醇な香りを沸き立たせる。今度の本はこのブログでああだこうだオープンソースについてメモしたきたことも大きな素材になっている。(とくに序章と第4章は)

さて、歴史、文学、哲学、民俗学、宗教という人文系のジャンルではなく、参与的観察が決め手になるビジネス書というジャンルに限定すると、本を書くという排泄作用は、えらくはしょっていってしまえばこんなになるか:

           1冊の本を書くという排泄作用 = f (a,b,c)

             ただし、

             a. ビジネスに身をさらす
             b. 本や論文、膨大なサイトを読みまくる
             c. シンクロニシティを楽しむ

a. ビジネスに身をさらす

クリエイティブなビジネスの最前線は情報、知識、イノベーションのバザールみたいなものだ。なので面白いビジネスの最前線には知的にオモシロイ人が戯れ集う。そしてオモシロイ人によってさらにオモシロイ情報、知識がもたらされ、分かち合いが進み、つぎつぎに増殖してゆく。こうなってくるとその「場」はちゃんこ鍋的増殖炉みたいな様相を呈しはじめる。面白いのは、ちゃんこ鍋的増殖炉には、強力な文脈(コンテクスト)的磁場が生じるということだ。新規性に富むコンテンツは、このコンテクスト形態形成場から生まれ、ビジネスプランにもなれば、本にもなる。まずは、こうした経験のちゃんこなべのような坩堝のなかに身を置いて経験価値を蓄積してゆく。

b. 本や論文、サイトを読みまくる

ビジネス経験からもたらされる情報や知識は断片的、刹那的なものが多い。なので、ちゃんこ鍋のなかにどのような食材や調味料を入れるのかという編集作業がいる。また、編集するには体系的な分析の視点やモデル、先行研究を下敷きにしてさらに独自性を加えたオリジナルな視座が必要となってくる。だいたい1冊の本を書くときは、200冊/本くらいの書物や論文に目を通したり、良質なサイトを探索して読み込んだりする。ただし、ビジネス書といえども長きにわたる読書経験の累積的総和が、本の奥行きや幅に影響せざるをえないので、やはり書斎にどのくらいの蔵書を溜め込んで充実した書物との付き合いをしてきたか、なんてことも影響するだろうが。

c. シンクロニシティを楽しむ

シンクロニシティにはおおむね3種類ある。ひとつめは、書き手=テキストのものづくり人間、読み手=市場、それらに介在する出版社=コンテンツビジネスのエージェントの繋がりをもたらすシンクロニシティである。こればかりは運のようなものがある。非常に優れたコンテンツを持った人だが出版社との縁に恵まれず著作がない人もいば、たいしたコンテンツでなくてもやたら本を出すモノカキもいるにはいる。

二つめは、aとbの間で生まれてくるシンクロニシティ。読みたい、読むべき本や論文がまわりの人からポンと降って降りて来たり、同じような関心を持った人達とパッと縁ができて意気投合して話が進んだりする。共著者どうしがお互いのブログを読み合うというのもいい。

三つ目は、Web2.0風にいえば、Collective Knowledge(みんなの知識、知恵の集積)との同時的関わりあいともいうべきもの。ひとりの閉じた蔵書だけではなく、みんなの知識や知恵のオープンなコミュニティとのシンクロニシティとでもいっていいか。これらのシンクロニシティの踊りのなかでフロー体験が惹起されると書くという作業に没入することになる。




北九州市病院局にて「格差」再考

2006年02月11日 | 講演放浪記
北九州市病院局主催の講演会にて、ヒューマンリソースマネジメントとクリニカルラダーの講演をする。北九州市病院局は、北九市立医療センター、門司病院、若松病院、八幡病院、戸畑病院などの市立病院を取りまとめている行政組織。

人間コマーシャル・オープンソースを自称している以上、なるべく講演依頼にはこたえるようにしている。この日はコマーシャル・オープンソースCRMについてのクライアント先の仕事を終えてから、夜の便で羽田から福岡へ飛ぶ。

さて最近の講演の中では、よく「格差」について言及する。1億総中流といわれた高度成長期中期から後期までの時代は終焉を迎え、長いバブル経済後の調整期を経て、景気が上昇基調に転じている昨今、所得水準の上下格差が以前に比べると分かれてくる時代になって来ている。

「下流社会」は、所得が低いだけではなく、生活能力や働く意欲、学ぶ意欲に欠け、「だらだら歩き、だらだら生きている」ような階層集団が「下流社会」を形成しつつあると論じる。その一方で、富裕層は、子の教育に大金を注ぎ込む傾向があるという。その結果、富は親から子へと受け継がれ、貧しさもまた相続される。所得格差が教育や学歴の格差を生み、それがさらなる格差拡大と階層化を助長するというのだ。

ではいったい格差社会化現象は医療サービスにどのような影響を与えつつあるのか?一言で言えば、国民が受ける医療サービスの質に今後大きな差が生じてくる。ここに公的病院の苦悩がある。圧倒的多数の公的病院は、医療サービスを提供する相手のパブリック=公衆を均質的な中流と想定してきた。ところが、今後は自己負担分の負担に耐えない層や、潤沢な自己負担をしてまでも良質なアメニティで高度な医療サービスを求める層などが混在することになる。

公的病院は赤字ならば構造上、税金から補填されて資金繰りがつき倒産しない。よって長期慢性疾患のような赤字病院が全国に散らばっている。ところが、その税収が不振なゆえに、独立採算のもとで黒字経営へ転換することへのプレッシャーは近年とみに高まっている。したがって、採算にシビアな経営をすればするほど採算がとりづらい医療サービスは継続しにくくなり、医療費の支払い能力のない患者は受け入れがたくなってくる。

国民皆保険制度は、長きにわたって中流社会のゲートキーパーの役割を果たし、公的病院は、医療サービスのゲートとしてパブリックヘルスの大きな担い手だった。公的医療が「格差」を是認するとき、この国の階層分化はぬきさしならない状況になるだろう。







不思議の国のWeb2.0、はて?

2006年02月07日 | オープンソース物語
このところ、周囲でよくweb2.0がささやかれたり、議論されている。で、いったいなんなのかWeb2.0とは?

初めてこの言葉を耳にしたとき、なにか新しいネット系のソフトウェアの新バージョンかなにかを連想した。実はこの用語、明確な統一的な定義があるわけではなく、ある種の方向性や期待感を示すファジーな用語である。方向性や期待感を示すファッショナブルな言葉としてネット界隈をめぐっている。もとはと言えばティム・オライリーあたりが唱え始めたコンセプトだ。

ティム・オライリーによると、Web2.0とはO'ReillyとMediaLiveが主催したブレインストーミング・セッションで生まれたコンセプト。2001年秋の米国ITバブル崩壊を生き残ったwebソリューションの特性、そして今後発展するwebソリューションの特性トレンドといったことろだ。

このブレインストーミング・セッションでは、Web2.0を実現するソフトウェア開発企業は以下のような特徴を持つとされた。

   ・パッケージソフトでない費用対効果の高いスケーラビリティを有するサービスを提供する
   ・より多くの人々が使うにつれてリッチになるユニークで創るのが難しいデータを提供する
   ・ユーザを共同開発者として位置づけ信頼する
   ・コミュニティとして共同体的インテリジェンスを生み出す
   ・顧客のセルフサービスによってロングテールをレバレッジする
   ・単一のデバイス・レベルを超越したソフトウェアを提供する
   ・ユーザインターフェイス、開発モデル、ビジネスモデルを扱いやすく軽くする

アメリカで騒がれると、わけがわからないまま金科玉条のごとく崇めたてまつる変な風潮が日本には跋扈しているようだ。早くもWeb2.0を社名にした会社もあるそうな。

コマーシャル・オープンソース・ソフトウェア(COSS)、そしてオープンソース・ソフトウェア・コミュニティ(OSSC)の動向は、もちろんずいぶんWeb2.0の脈絡と重なる部分は大きい。だからといってWeb2.0の文脈にすり寄ってトレンディーな議論をしたところであまり得るものはないんじゃないか。なぜなら、実質のある現実の動きを、たんなる方向感、期待感の寄せ集めのコンセプト中で議論してみても、事後的なつじつまあわせ、整理整頓になりがちだからだ。

ネーミングやイメージに惑わされることなく、変わるもの、変わらざるものの根っ子を押さえて、webとの付きあいかたを地道に進化させてゆく姿勢そこ重要なのだと思うのだが、さて。




   

元気企業っていったいなんだ?

2006年02月03日 | 技術経営MOT

千葉市からケアブレンズが元気企業に選ばれた。

といっても、ケアブレインズは店先で「いらっしゃいませ!」と叫んだり、重い荷物を運んだり、ひたすら足腰を使う肉体系営業をやるような元気企業ではない。また、各種社内イベントを派手に演出して楽しげな、元気風のムードを誘導したりするトレンディー系の会社でもない。

むしろ、eラーニング、オープンソース、コンサルティング、スクールなど情報、知識、知恵をつくったり、伝えたり、わかちあったりするプロフェッショナル・サービス志向の会社なので、どちらかと言うと社内の雰囲気は静かな方じゃないか。

ワサワサとうるさいような元気ではないが、知的な元気さを活力の源として、クライアントやお客様を知的に元気にしたい。そんな意味合いでの「元気」を目指しているので、千葉市産業振興財団の推薦をありがたく受けることにした次第。

元気のもとは、なにをさておき、やはり「あそび」から来る。機械でも、人間でも適度な「アソビ」がないと、めいっぱいはたらくことはできない。まあ、「あそび」から「はたらき」がrecreateされるからrecreationと言うのだ。






Open Source Business Conference in San Francisco

2006年02月01日 | オープンソース物語
再来週サンフランシスコで開かれるOpen Source Business Conference(OSBC)は刺激的なテーマ、キーノート・スピーチ、プレゼンテーションで満載だ。昨年も盛り上がっていたが、今年のサブタイトルは"Opensource Capitalism"つまり、オープンソース資本主義となっている。いやはや、刺激的な文言だ。

5-6年前までは、バークレーやスタンフォードあたりで新左翼運動(New Left Movement、ああ懐かしい響き)に身をこがしたオジサン連中が、OSS運動の本質は原始共産制にあり、マイクロソフト社に代表される覇権型ソフトウェアベンダからの搾取(exploitation、ああこれも懐かしい響き)からソフトウェア・ユーザを解放する階級闘争なのだ、という主張があった。

このような主張(実はかなり共感する)は、オープンソース資本主義というコンセプトの登場によって、オープンソース原理主義というように相対化されつつある。良くも悪くも資本主義、プラグマティズムの国=アメリカでは、現実的に資本主義の構造と機能のなかに組み込まれることを、みずからの進化のためにOSSは選択しているのである。

さて、キーノート・スピーチをするOSS企業の顔ぶれを眺めていると、同じOSSでもCOSS(Commercial Open Source Software)企業が多くなっているのが分かる。資本主義と相性の良いオープンソースとは、オープンソースをネタにビジネスが展開できるということ。さらに、ビジネスの展開において資本市場からエクイティ・ファイナンスで資金を吸収し、そのリターンを投資家に還元できるということだ。COSSのなかでも、Dual Lisence Modelがひときわ目立っている。

2004年から2005年にかけて、COSS系ベンチャー企業への投資は200%増の活況を呈している。それに対して、伝統的な、つまりプロプラエトリなクローズド・ビジネスモデルに対する投資はジリ貧の一途である。米国のプライベート・イクイティ・ファイナンスは明らかに、次の投資テーマのひとつとして、COSSを射程のなかにしかと納めている。

そうなると、勢いがよくなるのがアメリカのビジネスの常。ドドッといろいろなCOSS系ビジネスモデルを考えつき、足腰頭を使って、市場に参入してくる。そしてイノベーションが沸き起こる。このあたり、OSSやCOSS系のストラテジストの間では、「オープンソースがオープンイノベーションを巻き起こす!」といったレトリックが多用されている。

もちろん、自己正当化のための表層的レトリックにとどまるものではない。ソフトウェア・ベンダ企業との雇用関係に距離を置く自律分散的な個人がコミュニティに集散し、地球規模のワイガヤ、モノづくりをやって、スグレモノのソフトウェア・プロダクツをこしらえてしまった、こしらえつつある実績を見れば、オープンイノベーションという表現は誇張でも正当化でもなく、本質を突いた表現でさえある。

さて、このように資本主義、現実主義の文脈に自らを近寄らせ、資金フローの中に、オープンソースが入ることによってOSSビジネスが盛りあがり、さらなるイノベーションが立ち上がっているというコマーシャル・オープンソースの構図が、西海岸では活況を呈している。そして、この構図が、今年のOSBCには明らかに見て取れる。さすがに、OSBCの主催者は、先月あたりからフリーソフトウェア系のフリーク、OSSベンダ、OSSストラテジスト、ベンチャーキャピタリスト、起業家、政府関係者、奇人、変人、知的放浪者、ヨタ者をどどって集めて盛況ぶりをアピールしている。

再来週には、出張をかねてOSBCに顔を出してみる。さぞオープンソース的知的/ビジネス的刺激が充満しているだろう。とても楽しみだ。