ちょっと前に、面白い議論で熱くなった。忘れないようにサービスのイノベーションの視点からメモ。
以下、
麻生川静男さんの見解。
<以下貼り付け>
1.日本本来の道具、工芸はAnalogである。ヨーロッパはそれに対してDigitalである。
2.その路線(Analog Japanと Digital Europe)はお互いに交じり合うことなく、どちらもそれぞれのAnalog、Digitalの器具を使っている。(私が気づいた、ヨーロッパにおけるひとつの例外は、楽器のバイオリンです。これはAnalogです。)
3.Analogの場合、P.22に図示していますように、上達のレベルは個人差が大きいのです。それに反して、Digitalの場合、最低限の機能レベルは道具そのものにビルトインされているので、その道具を使う限り誰でも(ここがポイントです)ある程度のことができるのです。(ジョウロでの水撒きと、ひしゃくでの水撒きを比較してみてください。)
4.つまりAnalogの場合、レベルはDigitalの場合より最終的には高まる可能性はありますが、そのためには長年の修行を要します。この修行の仕方(Procedure)が、日本の芸事でよく言われている 『守・破・離』だと考えられます。
5.つまり、道具自体にビルトインされていない、あるいはマニュアルとして形式知となっていない暗黙知の習得は、先人の到達したLevel of Dexterityまで、とりあえず到達するのが近道で、その後、各人が『離』の修行をすることで、さらなるレベルアップが見込めるのです。
6.しかし、こういった修行をすることのない一般人にとっては、ゼロスタートとなるわけですから、到達できるレベルは、知識が道具自体にビルトインされている西洋より、劣ることが多々発生します。
7.この観点を西洋人に説明するときは、ピアノとバイオリンで音の出し方の差を説明すると納得してもらえるでしょう。つまり、ピアノで音をだすのは(楽曲全体ではなく、単音の話です)バイオリンより遥かに用意で、だれでも鍵盤を叩けば音はでます。しかしバイオリンでは、音を出すことですら、何日もかかり、ましてや、美しい音をだすには何年もかかることでしょう。
8.日本の道具はP.21であげていますように、例外なく、このようなAnalog方式になっているのですが、これが日本人が、『各人が努力や工夫をして今まで人が到達できなかったレベルを目指す』ことに情熱を燃やす気質があったからだと思います。
<以上貼り付け>
さて、以下は私見。
○プロダクトをモノ、サービスをコトをとらえる。
○西洋人が得意なことは、モノに知識を埋め込ませてイノベーションを広範に広めること。ユーザのdexterity(巧み度、器用さ)に依存する度会いを低めて、digital思想で作られたモノが普及させてゆくこと。つまり、「最低限の機能レベルは道具そのものにビルトインされているので、その道具を使う限り誰でも(ここがポイント)ある程度のことができる」となる。普遍志向が強い。
○日本人が得意なことは、ユーザのdexterity(巧み度、器用さ)に依存する度合を当初から期待してモノを作ること。ユーザ側のlevel of dexterity上昇度は、個人差が大きくなる。芸事、~道では、高いレベルが達成されるが、普及度は特定のcommunityの内部に限られる。局所的なローカル志向が強い。
○Analog Japanは普及を目的とはせずに、縮約されたモノコトに没頭することを好む。コトに没頭するとき、~連、~講、~結、~家、~道といったコトの場(community of service practice)を生む。コトの場から再帰的にモノの在り方にフィードバックが加えられincrementalな改善がモノに加えられる。Inter-dependentなフィードバックループはincrementalな改善向き。また、時としてフェティシズムを発生させる。
例、フェティシズム系:縄文勾玉、古神道の銅鏡、仏像など。
○Analog Japanは、人のうちにコト(サービス)志向を内在化させてきた。モノ⇔コトの相互還流の改善は盛んだが、相互還流はローカル場に埋没しやすい。普遍性に拡張されることはあまり多くはない。local志向。
○日本語で運用されるlocal志向(思考)は普遍性に拡張されない。これが、近年日本発の汎用ソフトウェア、ITサービスにヒット作がない大きな理由のひとつ。
○かたやDigital Europeは、モノの内にコト(サービス)志向を内在化させてきた。digital思想で作られたモノのソースコード(楽譜、仕様書、設計図、アルファベット、ゲノムコード、ソフトウェアのまさにソースコードなど)に重点を置く。それゆえに、モノ系統のイノベーションによって、一気にモノ主導でコトをラディカルに普及させる志向性を持ち、普遍的に拡張されやすい(普遍性)。
○Digital Europeの性質はアメリカに転移して、その普遍性志向はグローバリズムと接続されることによって、IT革命には親和性を発揮してきた。
○例:IBM,MS,Sun,Oracle,GoogleなどのIT企業やバイオテクノロジー企業など。またモノのソースコードを尊重するという行き方は、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、情報技術、認知科学(NBIC)が特定のニーズに対応させるために収斂させるときには強みを発揮する。
○以上が、「外」=モジュール、標準化、オープン、「内」=インテグラル、秘匿、クローズという基幹部品(MPU,マザーボードなど)のアーキテクチャ戦略に接続されて、欧米~BRICsイノベーション共闘戦略(妹尾堅一郎)となった。
・・・・などなど。サービス・イノベーション研究はとかくアメリカ輸入型となっているが、比較文化論の補助線を引くと面白い発展性があるか!?