よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

OSSとSaaSを止揚して見えてくる使用者のための仕様

2007年01月29日 | オープンソース物語
SaaS(Software as a Service)の利点は、ソフトウェアの生み出す価値をソフトウェア管理の煩雑性から切り離してユーザに提供することにある。しかし、ソースコードをユーザが持たないため柔軟性には欠ける。かたやオープンソースの利点は、ソフトウエアそのものの開放性、柔軟性にある。しかし、これらの利点の反面、ソースコードの取り回しは煩雑になりがちだ。

ようは、オープンソースとSaaSとでは、その出自、性質、特徴、そしてそれらを担ぐ勢力の主張が異なるので厄介だ。さて、こんなときに便利な思考方法が哲学者ヘーゲルによって彫琢された弁証法。つまりオープンソースとSaaSをテーゼ、アンチテーゼと見立ててアウフヘーベン(止揚)してみると面白い。その先に、これら2つのトレンドが、どのように相乗効果(ビジネスでは止揚とは言わない 笑)をあげてゆくのかを予見してみる。

ひとつめの方向は、SaaSベンダーが業務アプリケーション・オープンソースをSaaS方式でユーザに提供するようになる。プロプラなソフトではなく、オープンソース、またはオープンソースに手を加えたソフトウェアをマルチテナント・アーキテクチャでSaaS展開するという行き方だ。

プロプラなアプリケーションを扱うよりは、まずコスト構造で優位に立てる。しかも、煩雑になりがちなライセンス管理、ソースコードの保守などからユーザは解放されることになる。これはこれで、オープンソースとSaaSを繋ぐことで実現される組み合わせ型のイノベーションだろう。具体例でいえば、SugarCRM on SaaSやSugarCRM on Demandのようなものだ。

二つ目の方向は、新タイプのSaaSで「ソフトウェア・アプライアンス」とも呼ぶべきものだ。ソフトウェア・アプライアンスとは、業務アプリケーションとそれを走らせるために必要にして十分な程度に簡素化されたシステム・ソフトウェア(OS、ファイルシステム、アプリケーションサーバなど)が合体されたもの。ソフトウェア・アプライアンスによって、ユーザはソフトウェアベンダからあらゆるサービスや保守を受け、複数の保守系列、ライセンス、契約管理にともなう煩雑さからユーザを解放する。言ってみれば、ソフトウェア・アプライアンスは通常、サブスクリプション・サービス(pay-as-you-go)という形で提供され、SaaSのひとつの形態といえなくもない。でもSaaSというビジネスモデルにオープンソースをあわせ技で活用するので、新しいタイプのコマーシャル・オープンソースとも言える。

サーバー仮想化技術(server virtualization technology)を活用することにより、アプリケーションのインストールは、iPodのようなプレーヤー感覚に近いくらい簡単簡潔なものになるだろう。こうなると、もはやアプリケーションの敷居はぐっと低くなり、吉野家の牛丼のように「早い、うまい、安い」に加え、「いつでも、どこでも」の新天地が近くなる。

新タイプのSaaSまたは新しいタイプのコマーシャル・オープンソースで活用されるアプリケーションはオープンソース、またはコマーシャル・オープンソースのものを使う。基盤、ミドルウェア、言語の組み合わせは、LAMP、WAMPでもなんでもよくなる。スパーマーケットで板の上に乗ったまぼこを買うとき、主婦の目はかまぼこに向き、板には向かない。それとおなじように、ユーザはスタックを気にせず、アプリケーションのみに気をつかえばよいのだ。OSSとSaaSを止揚して見えてくる使用者のための仕様が、この新手のSaaSと見立てるのだが、さて。

新タイプのSaaSやコマーシャル・オープンソースは、「いいモノを、安く、早く、手間ひまかけずに、気軽につかいたい」ユーザにとっては福音だろう。ただし、旧来型のプロプラなソフトに十年一日のごとく依存し続けるベンダーにとっては地獄の黙示録となるだろうが。


SugarCRM Jパートナープログラムについて

2007年01月18日 | ビジネス&社会起業
SugarCRMとは深い付き合いだったが、このところ一層深さが増した。SugarCRMのヤル気まんまんの連中とはいろいろな熱い議論をずーっと続けてきたがが、日本国内向けの包括的販売代理プログラムであるSugarCRM Jパートナープログラムの発表がひとつの節目といったところか。アメリカでもオープンソース筋業界のニュースとして取り上げられている。

包括的なカナメの位置を取るパートナー候補企業のなかでも、ケアブレインズが規模的には最も小さかった。しかし、ずうたいばかりデカく、動きがトロい上場企業と比べてケアブレインズが絶対に負けないものがある。

・コマーシャル・オープンソースに関するエキスパティーズと知識
・コミュニティの存在と運営
・イノベーション・マインド
・ベンチャー・スピリット
・オープン・スピリット
・反骨精神と在野精神

それから、

・クリエイティブな仕事を楽しむ遊びごころ 笑)

従業員の数、資本金の額、会社の所在地・・・。そんなもの、関係ない。プロパライエタリなカルチャーと、高コストのソフトウェアの規格生産に過剰適合してしまった企業にはなくてケアブレインズにある本質的なものに、SugarCRMの目利きの連中は注目したのである。

ともあれ、J-PartnersはSugarCRM社が提供する販売パートナープログラムである「SugarCRM Partner Program」をSugarCRM社とケアブレインズが共同で日本市場向けに最適化した公認の販売パートナー制度だ。

やる気のある企業は、Jパートナーになっていっしょにコマーシャル・オープンソースの大波を創り出す仲間(Company)にぜひ加わってもらいたい。2/22に開く、日本コマーシャル・オープンソース・フォーラム2007にて、Jパートナープログラムの詳細を紹介するので会場にてお会いしましょう。

日本コマーシャル・オープンソース・フォーラム (2)

2007年01月14日 | オープンソース物語


僕が発起人をつとめる日本コマーシャル・オープンソース・フォーラム詳細企画が決まりました。

ちなみに、第1回日本コマーシャル・オープンソース・フォーラムのスローガンは、

        「コマーシャル・オープンソースを知る、考える、使う」

にしました。

ローカライゼーションやソフトウェア開発はモノづくりですが、今回のフォーラムはコトづくりです。そして、このコトづくりは、フォーラム(楽市楽座)という「場」を経てモノ作りへと再帰的に循環してゆきます。モノゴトの柔らかな循環構造こそが、オープンソースを媒介にする場づくりの妙味であると思います。知識経営風にちょっと難しく言えば、コマーシャル・オープンソースに関わるナレッジクリエーション、ナレッジ・フュージョンの場を目指したいと思います。

さて出展企業は以下の通りです。

* ゼンド・ジャパン株式会社 (PHP、Zend Platform)
* 日本スケーリックス株式会社 (WEB2.0メール(Ajax)+グループウェアScalix)
* ソフトバンク・テクノロジー株式会社 (SugarCRMエンジンのコールセンタ、ASP)
* 富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ(GroundWork OpenSource社、OpenLogic)
* 株式会社イージフ(Alfresco)
* 株式会社アルマス(Compiere)
* 株式会社野村総合研究所 (SuagrCRM+OpenOLAP)
* 株式会社ケアブレインズ(SugarCRM)

各社がデモやプレゼンテーションで発表するソリューションは、好奇心を掻き立てられるものばかり。オープンソース・ソフトウェアならではの組み合わせによるプロダクト・イノベーションやサービス・イノベーションが期待されます。さて、上記の企業名とソリューションを一瞥するだけで、ある種の動きが見て取れます。

(1)コマーシャル・オープンソースの動向は業務アプリ分野まで浸透しつつある。CRMのみならずCMS、ERP、Webメールのアプリ領域にまで浸透しつつある。
(2)コマーシャル・オープンソース系ベンダは、コミュニティでの共同開発と運用に注力している。
(3)これらのコマーシャル・オープンソース系のソリューションがエンタープライズの世界でも費用対効果の高いイノベーションを起こす素材として正当に評価されつつある。
(4)オープンソース・ソフトウェアが実現する機能品質部分だけをASPで提供しユーザを管理コストから解放する「オープンSaaS」が進展している。

「コマーシャル・オープンソースを知る、考える、使う」というテーマをみんなで分かち合って面白いモノゴトづくりにいそしみたいですね。これこそがオープン・イノベーションだと思います。

日本コマーシャル・オープンソース・フォーラム(cosf.jp)2007開催

2007年01月06日 | オープンソース物語
謹賀新年。

日本で初めてのコマーシャル・オープンソースに関する産官連携の国際フォーラムを来る2月22日13:00より幕張新都心で開きます。

名は体を現す!
なぜコマーシャル(Commercial)なのか?
ここが一番のポイントです。

そもそもコマース(commerce)とは、財、サービス、貨幣、情報、時間などの資源を効率的に配分し、かつ円滑な流通を図ることを通じて、人々の社会生活を質量ともに豊かにすることを目指すもの。このフォーラムの名称に「コマーシャル」つまり「商用の」とあえて入れているのは、ビジネス界では市場原理に即して、オープンソースを提供する側も、活用する側も、分かち合いをサポートする側も、それぞれの役割分担に応じて、責任の明確化とコストと利益の配分がなされなければいけない、という考え方をこめているからです。そして、この種の考え方の普及と実践こそが、オープンソースの、そして、ソースコードを扱うコミュニティ、ユーザ、ソフトウェア産業のいっそうの発展と進化に寄与するからです。

伝統的なオープンソースの弱点(その特徴と表裏一体ではあるが)をいくつか。ソフトウェアの品質保証体制が不明、ソースコードの保守の窓口が不明、一貫したロードマップがあるようでない、不安定な草の根型コミュニティ、GPLのためにビジネスで使いづらい、などなど。よってオープンソースをもっと効果的にコマースして、その弱点(特徴)を補強して進化させる「コマーシャル」という道がある。この道をいっしょに走りませんか?

こんなフォーラムの企画をSugarCRM社長で畏友のJohn Robertsに話したところ「ヒロ、そりゃ、エキサイティングだ!行くよ」ということで即決。ということでJohnもシリコンバレーから太平洋をまたいで幕張新都心まで駆けつけ、衝撃的な基調講演を行います。Johnのほかにも、コマーシャル・オープンソースのベンダ社長諸氏、COSのステークホルダ企業、千葉県のパブリックセクターの方々が僕たちの考え方に賛同してくださったのはうれしい限りです。こうして、このフォーラムは国際的な産官連携の様相を呈することになりました。

詳細説明と申し込みははこちらからです。

フォーラムとはもともとはラテン語で、古代ローマ時代で商取引・市に使われた大広場のことで、地中海世界を中心とした自由闊達でオープンな経済活動とイノベーションを下支えした仕組みです。当面、cosf.jpのfはこのようなforumを目指してゆきたいと思います。このような方向感覚をわかちあう有力COSベンダー、開発者、実践者、オピニオンリーダーの方々をお招きし、新時代のIT産業の情報発信基地=幕張新都心にて、「第1回日本コマーシャル・オープンソース・フォーラム2007」を開催いたします。

僕はオープニング(前座)で軽めの話をしてからは、会場を回遊しています。ぜひ会場でお会いしましょう!!