よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

衆議院選挙:日本の新しい闇将軍 Japan's New Shadow Shogun

2009年08月30日 | 技術経営MOT
衆議院選挙。偏向国内メディアよりは海外メディアのほうが、鋭い分析を展開している。

とくにForeign Policyの論評が光っている。「日本の黒幕将軍」という記事がそれだ。この記事は民主が勝って、その後、民主党内の政治勢力がどのように形成されてゆくにかに絞って論評している。

<以下貼り付け>

Japan's New Shadow Shogun

One idea -- allegedly favored by Hatoyama -- is for Ozawa to move into the post of party secretary-general. In this role, Ozawa would discipline DPJ backbenchers and prepare the party for the next election -- a task that might perfectly suit his talents. But a Secretary-General Ozawa would surely be tempted to question the Cabinet and influence its policies from the outside. This would undercut one of the DPJ's core principles: streamlined, transparent, accountable government.

<以上貼り付け>

ただし、裏事情に対する洞察までもは流石に触れていない。

潮目は、今振り返れば今年の3月3日だった。この日、アメリカの寡頭勢力は、小沢一郎氏を、日本の検察を遠隔操作して、逮捕し、収監して汚職政治家の烙印を押して葬り去ることに失敗した。

民主が圧倒して政権を奪取してから、小沢流の二重権力政治が台頭して今まで小沢氏を苦しめてきた勢力に対していよいよ政策転換反対勢力・旧勢力への反撃を開始するだろう。民主党の友愛(fraternity)というレトリックは、なるほど、鳩山氏の口から出れば、国内向けメッセージとしては、それはそれで小泉以降、劣化した日本を修復しようとするソフトイメージの宣伝ではある。しかし、日本権力中枢に対しては実は「憎悪」(hostility)の裏返しのような表現だ。



上図でも明らかなように、分裂を繰り返し対立軸が曖昧になった末の2大政党制時代のトバ口にようやく立った末の衆議院選挙。

民主党の圧勝。中枢の官僚、検察にとってこれほど都合のよくないことはない。「友愛」が表の政策キャッチワードならば、「憎悪」こそが、裏のバズワードであり、この実行部隊長が小沢になるとForeign Policyは予測するのである。

さて、ジェイ・ロックフェラーはアメリカの名門大学にちりばめられている友愛組織(fraternity house)を熱心に支援してきた人物である。ジェイ・ロックフェラーは東京武蔵野にある国際基督教大学にも留学しており、それなりの知日家にして、小沢スポンサー。またオバマのスポンサーでもある。

民主党が唐突に友愛(fraternity)を掲げたのは、なるほど、米国寡頭勢力の権力中枢がデービッド・ロックフェラーからジェイ・ロックフェラーに移管するタイミングでジェイ・ロックフェラー寄りの姿勢を対米向けに発していると見れば納得がゆくだろう。

鳩山氏がPh.D.を取得したスタンフォード大学にも友愛組織(fraternity house)が多数存在する。fraternity houseは表向きギリシアの伝統に立脚しつつ、主流派キリスト教の伝統からは明確に距離を置く後世の欧州のフリーメーソン系の系統に立つ。したがって、友愛(fraternity)という用語は日本国内ではピンと来ないが、対外的、とくに欧州、米国、中国の留学組など知識階層向けにはプラグマティックなメッセージ性が強く出ている。

The New York Timesのweb版に鳩山氏のオピニオン記事が載っている。ここで、友愛(fraternity)とは次のように、米国主導で昂進してきたグローバル資本主義、市場主義資本主義の行き過ぎに対する調整を意味するという。

<以下貼り付け>

Fraternity as I mean it can be described as a principle that aims to adjust to the excesses of the current globalized brand of capitalism and accommodate the local economic practices that have been fostered through our traditions.

The recent economic crisis resulted from a way of thinking based on the idea that American-style free-market economics represents a universal and ideal economic order, and that all countries should modify the traditions and regulations governing their economies in line with global (or rather American) standards.

<以上貼り付け>

米国寡頭勢力の従順な傀儡でい続けた自由民主党の表裏を知悉している小沢氏は、アメリカ寡頭勢力から警戒されているし、タフな交渉相手であると評価されている。

「小沢一郎が実質の日本国王だ。帝国との厳しい交渉をして来た本当の民族指導者(ナショナリスト、the nationalist)だ」と副島隆彦教授は言う。また彼の熱心な読者でもあり、シンパでもあろう山本尚利教授も民主支持のスタンスを示している。

戦争屋=CIAの対日介入のストッパー役として小沢氏を位置付けているのは、口が裂けてもマスコミが書かないことだが、本質的な見立てである。この文脈のなかにこそ、友愛(fraternity)の戦略的な意味が込められている。

途上国の社会起業・起業家支援を考えるワークショップ

2009年08月27日 | ビジネス&社会起業
NPO法人国際社会起業サポートセンターからのお知らせです。

<以下貼り付け>

主催:NPO法人国際社会起業サポートセンター
   東京工業大学国際的社会起業家養成プログラム

「途上国における社会起業・起業家支援を考えるワークショップ:
東工大院生の2つのビジネスプランに対する支援について
1)バングラデシュにおけるバイオガスプラント・プロジェクト
2)インドネシアにおける無線メッシュ技術によるインターンネットインフラの構築」

日時:9月24日(木曜日)午後6時30分~8時30分
場所:東京工業大学大岡山キャンパス 西9号館6階 607 セミナールーム

東工大国際的社会起業家養成プログラムでは、留学生に対して社会起業のためのビジネスプラン研修を過去2年間実施してきた。

また、国際社会起業サポートセンターは、留学生が将来自国で社会起業を立ち上げることを支援する目的で設立されたNPO法人である。今回、2人の留学生が作成した優れたビジネスプランが現地調査終了・実証実験段階に入ったのを契機として、これらのプロジェクトの立ち上げをどの様に支援するか検討するためのワークショップを開催しますので、是非ご参加ください。

参加対象者:研究者、援助機関・NPO関係者、投資ファンド関係者、、CSR担当者、開発途上国に関心のある方参加希望者は、メールで下記までご連絡ください。

inoue.k.aj@m.titech.ac.jp
問い合わせ:

井上和雄
チーフコーディネーター
東京工業大学大学院 社会理工学研究科
社会工学専攻 国際的社会起業家養成プログラム 大岡山 西9号館 711号室
152-8552 東京都目黒区大岡山2丁目
12-1郵便BOX W9-88
E-mail:inoue.k.aj@m.titech.ac.jp

<以上貼り付け>

CIA暗殺サービスのアウトソーサー

2009年08月24日 | 技術経営MOT
<以下貼り付け>

CIA、アルカイダ暗殺計画を民間業者に委託 (CNN)米紙報道

ワシントン(CNN) 米中央情報局(CIA)がブッシュ前政権下で進めていた国際テロ組織アルカイダに対する秘密計画で、指導者らを狙った暗殺計画を米民間警備会社ブラックウォーター(現社名Xe)に委託していたことが分かった。20日付の米紙ニューヨーク・タイムズが伝えた。

アルカイダへの秘密計画は今年、パネッタCIA長官が就任後に存在を知り、議会に報告したうえで中止を指示した。ただ、同社の関与についてはこれまで明らかになっていなかった。

情報筋によると、CIAは01年に始まったこの秘密計画と当局との間に「距離を置く」ため、ブラックウォーターへの業務委託を決めた。同社が関与したのは06年半ばまでだが、その後も別の業務で他業者への委託が続いていたという。ある米当局者によれば、同計画には「数百億ドル」の予算が使われたが、ブラックウォーターに支払われた金額は不明。

報道を受け、CIA報道官は「計画は依然として機密扱いだ」と述べ、詳細についてのコメントを避けた。そのうえで、「パネッタ長官は、対テロ作戦について議会に知らせる時期が来たと考えて報告し、計画がうまくいっていないとの判断で中止に踏み切ったまでだ」と説明している。

ブラックウォーターは、前政権下でイラクでの軍事作戦などに参加していた。07年9月に起きたイラク民間人射殺事件を機に同国からは撤退したが、その後もアフガニスタン作戦にかかわる業務などの受注は続け、今年2月からは社名をXeに変更している。

<以上貼り付け>

以下コメント。

戦闘において傭兵を活用するのは、古代メソポタミア地域から2000年以上の伝統的手法。暗殺という「サービス」もアウトソーシングするのが定石。

とくに1960年代以降の戦闘要員、特命要員のロジスティクスは外注が巧妙化してきている。

Xe社(旧ブラックウォーター)は戦争が発生するたびに組織を拡大させている。とくに共和党スジと太いパイプを有しており、今回のリークは民主党による共和党への圧力増加の一環。今後、共和党に対するネガティブ・リークは節目節目で出てくるはずだ。

戦争ビジネスはイノベーション創発の一大中心地。各種兵器のプロダクト・イノベーション、その製造方法についてのプロセス・イノベーション、そして、あまり語られないが、兵器の運用、展開、使用に関するサービス・イノベーション。とくに実戦インプリメンテーションにおける「サービスの進化」はすさまじい。

MITのクスマノ教授のワーキングペーパー「Product, Process, and Service: A New Industry Lifecycle Model」(M Cusumano, S Kahl, FF Suarez)のような研究を戦争サービスに適応してみることは重要だ。

Xe社(旧ブラックウォーター)は、米国国務省が契約する戦闘ブラックウォーターは、アメリカ政府の国務省が契約する実戦インプリメンテーション・アウトソーサーの中でも最大規模。特にイラク戦争でのアメリカ軍の正規兵士の慢性的不足により傭兵の需要が増したことから急成長をとげた。

Xe社副会長を務めるコーファー・ブラックは、911の際にCIAの対テロセンター(Counterterrorist Center) の所長であった人物。

年4万人以上の戦闘員=社員は犯罪者の前科を持つ者、過激思想の保持者、反社会的行為の常習者、熱狂的黙示録的思想、キリスト教ファンダメンタリズム思想を持つ者が多い。もちろん戦闘マニア、細菌マニア、爆発物マニア、常習的加虐マニア、殺人マニアの巣窟でもある。

このような特殊人的資源を前線に供給し、政権から対価を得る戦闘派遣業は必然的に共和党とそのバックにある戦争によって利益を創造する寡頭勢力と癒着していた。

CIAの影響力を削ぎたいオバマ政権は、今後もさまざまなキャンペーンを打つことになろうが、CIA、宗教保守、その背後の戦争利益誘導の寡頭勢力との闘争関係に注視する必要がある。

MOT関係者ではめずらしく独特な日米関係史観、権力構造史観を持つ早稲田大学山本尚利教授によるこの論評も面白い視点を提供している。

「技術立国日本は危機的な状況」とオープン・イノベーションのレトリック

2009年08月20日 | 技術経営MOT
オープンイノベーションに関する見解は以前ここでも書きました。経済産業省の『中長期的な研究開発政策のあり方~ 競争と共創のイノベーション戦略~中間とりまとめ』は、MOT関係者にとって一読の価値があります。

<以下貼り付け>

朝日新聞記事

経済産業省は19日、中長期的な産業技術政策のあり方についての提言をまとめた。「技術立国日本は危機的な状況にある」と警告し、複数の企業が協力して行う研究開発などの強化が必要だとしている。

 経産相の諮問機関である産業構造審議会の小委員会がまとめた。提言は、日本は07年の特許の新規登録件数が世界1位なのに、実際の製品開発や市場開拓に効率的に結びついておらず、欧米に後れをとっていると分析。経済危機を受けた企業の研究開発投資の落ち込みも加わって危機的な状況に陥っていると指摘した。

 こうした状況を打開するために、複数の企業や研究機関が共同で研究を行う「オープン・イノベーション」や、実際の製品化を見すえた基礎から応用までの一貫した研究開発の強化が必要だとしている。

<以上貼り付け>

以下意見です。

たしかに技術経営関係者の間では、「技術立国日本は危機的な状況にある」との見解には深刻なものがあります。そして上記のような多くの評論は、さらなる「オープン・イノベーション」の必要性を強調して終わります。

以前このブログでも述べましたが、危機の元凶は「オープン・イノベーション」の不徹底にある、という論法はよくわかります。

ただし、この種のメッセージを解釈するときには注意すべきことがあります。それは、「オープン・イノベーション」には産学官にわたる多様な当事者がいるわけで、この主張の便利なところは、「オープン・イノベーション」を進めてこなかった罪科を少数のセクターやプレーヤーに帰属させることなく、不作為の分散ができるということです。

まさに総論反省、各論言い訳ありあり、という問題を大局的に述べるのには「オープン・イノベーション」は実に好都合なレトリックとなります。

現下、日本で「オープン・イノベーション」が声高に唱えられ、喧伝されている背景にはこのような事情が存在しています。したがって上記のような「オープンイノベーション」を説くレポートや書物を読むときには注意が必要です。


社会科学の対象としての日本教

2009年08月20日 | 日本教・スピリチュアリティ

日本教とはいったいなんなのか?日本の宗教を理解するためには、3段構えのアプローチが必要だ。第一段目は、日本の多元・多層・多神的な宗教的心象風景が広がっていることへの理解だ。第二段階は、その心象風景の奥底に息づいている行動様式への理解である。そして第三段階は、このような行動様式が日本的制度にいかに影響を及ぼしているのかについての理解である。

第三段階としては、たとえば日本的人事と日本教の関係など。
日本教と日本的人的資源
仲間主義と日本教


第二段階の行動様式を日本教と見立てて日本教:小室直樹、橋爪大三郎の対話でコンサイスに議論されている。第三段階へいたる道のりで押さえておくべきポイントがまとまった形で討論されているので日本教を考究する社会科学学徒必見。

<以下メモ>
              ***

日本に入ってきた宗教はすべて日本教に包摂されてきた。たとえば仏教。天台宗最澄によって戒律を消去して日本の仏教はインドで生まれた仏教とまったくことかったものとなった。本来ありえない仏教の姿になった。さらに江戸時代の檀家制度を経て仏教はますます換骨奪胎されてゆく。でも仏教徒と名乗る人々は多い。こうして仏教は、日本教仏教派となった。

たとえば儒教。儒教式葬式は中国では一般的だが、日本ではない。日本に入ってきて儒教は宗教ではなく道徳の変形となってしまった。こうして儒教は日本教儒教派となった。

日本教は、役人や支配階層が宗教を創ってきたという側面がある。また日本人はそれらを受け入れてきた。これは通常の一神教の宗教とは隔絶された生き方だ。一神教では、なにをさておきまずはGODが存在し、神の命令で世界が創られた。

日本教ではなにが大事とされるのか?それは、日本の国民の好みである。人間そのもの重視。日本人として普通に暮らすことが大事。ユダヤ・キリスト教でははじめにGODありきで、かれらの宗教観からすれば日本教は奇妙奇天烈。

日本教では人間がはじめにありき。神仏をたてまっつっても人間の都合にあわせていいように変形させられてきた。日本教では神が人間に命令するわけではない。

欠陥だらけの日本人なのだが、神は究極的に人間のために存在するという大前提を古来から敷いていた。表面的に神仏をたてまつっても本質的には人間中心。日本人としての仲間が最も重要なのである。

日本教には日本人の行動を拘束するという性格がある。ところが日本教では行動を外形的に規定しない。日本人が言う無宗教というのは日本教です、というのと同じ。イスラム教では外形的な行動を決めるので日本教とイスラーム教は対蹠的。したがって日本では日本教イスラーム派が成立することはなかった。

ヴェーバーは社会を近代化し、宗教を近代化することによって「勤勉」が西洋では実現された、と論じた。

主神である天照大御神はスサノヲが暴れた時に繭をつくって働いていた。キリスト、ゼウスは決して働かない。働くのは罰なのである。日本教では労働は罰ではない。先祖の先祖からみんなでいっしょに働くことが大好きだった。現在でも定年になってしょぼんとなってしまう人が多いが、ヨーロッパでは喜びいさむ。普通のヨーロッパ人にとっては、働くことと自分のやりたいことは違っている。

働くことに価値があるということは極めて宗教的。日本民族は資本主義国家として成功する条件が古来あったのだ。山本七平は、石田梅岩、鈴木正三などを引いて仏教、儒教の影響で勤勉が成立し、ひいては日本資本主義成立の契機となったと説いた。しかし、勤勉はそれよりはるか以前から日本民族に埋め込まれた宗教、文化だったのだ。

空気が支配するのも日本教の特徴である。空気とは人々が漠然と思うようなこと。ドグマ的断定がなくても、なんとはなしに良いと思うことが広まる。空気は、言葉にならないし合理的でない。にもかかわらず、日本人の意思決定や行動を拘束する力を持つ。

たとえば、三国同盟の時代、枢密院でさえ「ことここに至れば賛成せざるをえない」といって非合理的に、時の空気に流されてしまったことがあった。歴史上、空気によって重要な意志決定がなされた事例は山本七平の「空気の研究」に詳しい。

日本教では、個人の意見を表明する、議論をするという行き方は尊重されない。昔から討論ができない文化。信長ほどの独裁者でも、「自分がこう決めた」とは言わなかった。日本人は自分で決定したがらない。

近代西洋的な考え方とは対蹠的。マゼランは「自分がこう決めた」と言えばそうなった。絶対の神、絶対の価値という考え方に慣れていれば、そういう人に従うのは自然なこと。

キリスト教は2回日本に入ってきた。キリシタンの時。明治時代。キリスト教信者数は増えていない。キリスト教のみを徳川幕府が禁止するほど大きな影響をキリスト教は日本に与えた。イスラーム教は禁止されなかった。完全な宗教であるイスラーム教は日本教とは隔絶しすぎていたのだ。

踏み絵は偶像だが、キリシタンは踏み絵を踏むのをためらった。本来なら被造物、偶像を蹴っ飛ばす。すなわち、キリスト教を日本人は理解していなかった。こうしてキリスト教は日本教キリスト派となった。

明治維新の時は日本教ファンダメンタリズムが出現した。正典の存在、正典の記述の絶対的重要視、正典の記述を行動の思考の絶対規準にすることが、ファンダメンタリズムの基本。

明治時代、日本神話を初等教育のなかに組み込んだのは日本教ファンダメンタリズムの発現だった。日本教がファンダメンタリズムに徹した。神話を教えながらも近代的なもの。こうして日本が近代国家として誕生した。明治日本では、宗教と政治とが分離して国家が誕生したのではなく、宗教と政治が一致して日本国家が誕生した。

ところが大東亜戦争敗戦後、天皇の人間宣言が行われた。実はこのときに日本は近代化の契機を失ったといえる。その後、経済は発展したが価値観は混迷。平成になってからは経済さえも低落している。

結論。一人一人に行動様式がなくなってしまった。このような時代だからこそ、宗教教育ではない宗教理解が重要。とくに、一神教のなかでもキリスト教の勉強が必要だ。

<以上メモ>

社会科学の対象として宗教に接近する比較宗教の視点で日本を分析するとき、「日本教」という驚嘆すべき概念を提出した山本七平。かってタコツボ学会では一顧だにされなかったのだが、小室直樹そして橋爪大三郎によってこの議論が復活するのは日本の社会科学にとって歓迎すべき傾向だ。

日本制度、日本的教育、日本的価値観、日本的人的資源管理など、「日本的~」とつけたがるローカル志向の社会科学の骨格の議論が、実は日本教。しがたって日本教の議論には新しい視点の普遍性獲得の契機がある。


『徳義有聞、清慎明著』、日本共同体1300年の蓄積 

2009年08月18日 | 日本教・スピリチュアリティ


<佐倉の歴史民俗博物館にて>

奈良時代の律令制度を読むと、今から約 1300年前の昔にも勤務評定や人事考課の評価制度があることが分かる。膨大な数におよぶ公務員のマネジメントは今も昔もシリアスな問題だった。

奈良時代の律令制度の元となった唐の律令には、「建中告身帖」という規定集がある。この「告身」とは、現代風に言えば国家公務員に発令する辞令規定。

官吏の勤務評定を「考」といい、「課」とは「善」や「最」からなる評価項目をいう。この「考」は年度末に一度行われ、一年間の勤務評価を「一考」といい、功労と功罪を考査することを「応考」という。

「律令」考課令 50(一最以上条)によると公務員の人事考課は9段階で行われてたようだ。

評価項目の一つである「善」には 4つあり、これを「四善」といい、官吏としての善行を査定した。

   徳義有聞  ( 道理をわきまえていて、名声の高いこと )
   清慎明著  ( 潔白で慎み深くはっきりしていること )
   公平可称  ( 私心をさしはさまず、称えられること )
   恪勤匪懈  ( 職務を忠実に勤め、怠らないこと )

また、「最」は全部で 27項目あるため 「二十七最」といい、それぞれの職務内容に関係した勤務姿勢を査定したがここでは省略。

                ***

・一最以上有四善。為上上。 
 →(一最を満たし、かつ四善あれば上々とせよ)
・一最以上有三善。或無最而有四善。為上中。
 →(一最を満たし、かつ三善あれば、または(最なくとも)四善あれば、上中とせよ)

・一最以上有二善。或無最而有三善。為上下。 
 →(一最を満たし、かつ二善あれば、または(最なくとも)三善あれば、上下とせよ)

・一最以上有一善。或無最而有二善。為中上。
 →(一最を満たし、かつ一善あれば、または(最なくとも)二善あれば、中上とせよ)

・一最以上。或無最而有一善。為中々。 
 →(一最のみ、または一善のみあれば、中々とせよ)

・職事粗理。善最不聞。為中下。
 →(職務はほぼこなすも、善が一つも聞こえてこなければ、中下とせよ)

・愛憎任情。処断乖理。為下上。背公向私。職務廃欠。為下中。 
 →(感情に任せて仕事を行い、仕事の処理判断が道理に背いていれば、下上とせよ)

・居官諂詐。及貪濁有状。為下々。…(以下略)
 →(公に背き私事に向かい、職務が廃れて欠けるようなことがあれば、下中とせよ。官職にいながら偽り、貪欲で汚れた様が仕事に現れれば、下々とせよ)

                ***

古代の人事考課の目的は官僚制度を維持することにあった。しかし、昇進は勤務年数に比例して自動的になされることが多かったため、実質的な「年功序列制」を下支えしたもの。ただし、劣悪な人材を排除し、優秀な人材を取り立てるというメリットクラシー性もあったはあったが、この性質は次第に希薄となっていった。

「善」や「最」の定義からも分かるように、評価対象は業績ではなく、態度である。善き仲間の一員として制度維持に貢献する態度、姿勢を積極的に評価し、業績要素を軽んじると、その組織は、本質的に機能組織ではなく共同体となってゆく。

共同体化させることが本能的に好きだった日本人は当時のワールド・スタンダードの唐律令制を外形的にコピーして機能組織の素振りを垣間見せるが、「運用」面で着々と共同体化の知恵を蓄えていった。

外形的には機能組織だが、内面的には共同体。この二重性を同時に合わせ持たせたところが古代支配階級のひとつの知恵だったのだろう。「いっしょに居て仲間になること」の"ヒューマニスティックな原理"、つまり、一神教を受容しない多元・多層・多神的な人間中心主義=日本教はこうして運用を通して制度化されることとなる。そして1200年後の明治時代に一気にこの特質が、日本の人事制度一般に拡がっていった。大東亜戦争敗戦後の人事制度変化は表面的なものであると見立てられる。

外形的には機能組織だが、内面的には共同体という伝統(日本的風土病でもあり免疫でもある)は、現代日本の官僚制度をはじめとして、軍隊、民間企業にも通底するように継承されている。


起業家の幻想

2009年08月17日 | No Book, No Life

The Illusions of Entrepreneurship: The Costly Myths That Entrepreneurs, Investors and Policy Makers Live By

この本は、けっこう本音で書かれている。本音で書きすぎたのか、結論はいたって常識的なものだ。投資回収をきちんと行うためには、白人で男性であり、高学歴で高所得の起業家がスタートアップさせた高成長分野の企業で、すでに投資家による投資実績のある企業を選べ、というもの。 

これ、米国投資家の間では、とるに足らない常識。

また著者のリサーチによると、起業家が女性、黒人、低学歴や貧困者の場合は成功確率が低いということも示している。

これも、米国投資家の間では、とるに足らない常識。ただし差別的な受けとられ方をするので活字にはされない。業界人がレストランなどに集まった時にはけっこう出る話題ではある。

ただし、著者が言うような「女性、黒人、低学歴や貧困者」が起業して投資家に利益をもたらす確率は低いかもしれないが、Base of Pyramidの底でそれなりの起業スキルを学習して、Self employしてゆくのは貧困脱出という目的を達成するためにはポジティブなインパクトがある。現にマイクロファイナンスの仕組みをうまく使って貧困から脱出している事例は、バングラデッシュ、インドでは数限りない。

いくら論理実証的なリサーチをベースにしても、「考え方の考え方」、「感じ方の感じ方」がステレオタイプにはまっていると、生産的な結論は出ないものである、ということを語っているのではないか、この本は。


ベンチャービジネス戦略論が経済産業省のモデル講座に

2009年08月12日 | 技術経営MOT

<タコツボを 割ってはじまる イノベーション>

後期にやる「ベンチャービジネス戦略論」の講座が平成21 年度 産学連携人材育成事業(起業家人材育成事業)大学・大学院起業家教育推進ネットワーク起業家教育モデル講座事業、通称起業家教育ひろば)からモデル講座として指定されました。

本件、詳細は経済産業省発表ニュースリリース

趣旨は、大学・大学院において実施される起業家教育のモデルとなる講座を育成するため、先駆的・特徴的な起業家教育の講義を「モデル講座」として指定し、講義への外部講師の招聘、講義の一環で実施されるイベント、課題活動等のプログラムを実施するにかかる費用を支給するというもの。

ありがたいことです。MOTを体現する傑出した人材、イノベーションを起こすプロフェッショナル、起業家、ベンチャーキャピタリストなど多彩な外部リソースをスピーカーとして招聘し、この分野を専門とする有識者とも講座の内容を共有して、ブラッシュアップすることができます。

とかくタコツボ化しやすい講座をゴツンと割って、コンテンツを共有し外部のクリティークに晒しつつ、ディフューズさせてゆくことは起業家教育における産官学連携のオープン・イノベーションのひとつの行きかたです。

技術経営、起業のソリューションをプロデュースするベンチャービジネス戦略論の馬力・場力がぐっと上がることになるでしょう。もちろん教育・研究サービスの受益者としての学生が一番得をしますので興味のある人はぜひ。


助産師外来・院内助産所の開設と病院経営

2009年08月09日 | 健康医療サービスイノベーション


すこし先の話となりますが、12月12日(土)と 来年1月 9日(土)に日本助産師会に招待いただき講演します。

助産所は助産師の方々が開業できる非営利組織であり、そこで活躍される助産師の方々はソーシャル・アントレプレナーです。また既存の病院の中で、院内助産所を立ち上げ問題解決を行う助産師の方々はソーシャル・「イン」トレプレナーとでも呼ぶべき貴重な人的資源です。

いずれの場合も、安心・安楽な助産技術を地域にディフューズさせて、ソーシャル・キャピタルを健全たらしめる明日の日本のゲートキーパーです。

またきわめてハイタッチでデリケートなヒューマン・サービスを多様なパートナーが共創(co-creation)するという性質は、サービスマネジメントという点からもチャレンジングなものです。

<以下貼り付け>

病院経営の視点からみた助産マネジメント ~助産師外来・院内助産所開設のキーポイント~

産科医師の不足から出産難民や妊婦の緊急搬送困難などが大きな社会的問題になっている昨今、正常経過をたどる妊産婦に対しては助産師が責任を持って支援する助産師外来や院内助産所の開設が社会から強く要請されています。

助産師外来や院内助産所の開設や円滑な運営には、助産師個人の助産技術の向上はもとより、病院内の産科医師や他部署からの十分な理解を得て、連携体制を整え、支援してもらう組織作りが大切です。

今回は、助産師外来・院内助産所を「経営」という視点からとらえ、助産師外来・院内助産所を開設することは病院経営にどんな影響をもたらすのかについて、経営の専門家からお話をうかがいます。また、ワークショップでは、効果的な病院経営につながる人員配置やケア提供の在り方を参加者とともに具体的に考えていきます。

病院経営にかかわっている方、行政として助産師外来・院内助産所の開設を促進している方等にも広く呼び掛け、多数のご参加をお待ちしています。

【日 時】大阪会場 平成21年12月12日(土)10時~16時
     東京会場 平成22年 1月 9日(土)10時~16時
【場 所】大阪:アメジストビル5階研修室  大阪市都島区都島本通2-2-16
     東京:日本助産師会2階研修室   東京都台東区鳥越2-12-2
【対 象】病院長・看護部長・産科師長・産科主任などの病院管理職者、
病院事務関係者、行政機関の関係者等
     50名(先着順)・・・病院からは複数名の参加をお勧めします
【参加費】会員8000円 非会員10000円

【プログラム】
 講  義:助産師外来・院内助産所の開設と病院経営
      ~助産師外来・院内助産所の経営学的分析~
      講師:東京農工大学大学院 教授松下博宣
講師:神奈川県立保健福祉大学 教授村上明美
 ワークショップ:成功する助産師外来・院内助産所の経営
         ~理想的な助産師定数の算出と経営効率~ 
      進行:日本助産師会 専務理事 岡本喜代子氏
      ファシリテーター:助産師問題対策特別委員会委員
【お問い合わせ】日本助産師会 TEL 03-3866-3054  FAX 03-3866-3064
【申し込み】日本助産師会ホームページから


<以上貼り付け>

マントラとしてのイノベーション、オープン・イノベーション

2009年08月07日 | 技術経営MOT
イノベーションという語は日本では呪術的なマントラ(真言)と化しているようです。先日出たIT系のセミナーでも、講演したスピカー4人のテーマはすべてIT産業のイノベーションについて。

そして、キャッチワードがオープン・イノベーション。イノベーションという呪術的語法に辟易とする人々は、イノベーション(笑)とも書くそうです。もっともな話です。



オープン・イノベーションとは2003年にチェスブロウが言いだしたコンセプトですが、明示的な方法論として確立されているわけではありません。



技術力があってもプラットフォームを主導して君臨できなければビジネスでは負ける、というのがこの本のもっともな主張。

ゲームのルール、そしてルールが適用されるプラットフォームを作り、自分が定めたルールで競えば断然有利。インテル、マイクロソフト、アップル、グーグルなどです。

モノ=プロダクツからコト=サービスへとプラットフォームの主戦場は急速にサービス化。断然有利になるように(1)市場ニーズ、ビジネスビジョン、イノベーションのシナリオを穏密に立て、(2)IPで権利を囲いこみ、(3)IP活用のシナリオに乗せる、と説きます。逆をやってきたのが多くの日本のIT企業。

オープンなふるまいでリスクを減らし、しかしコアとなる技術はビジネスモデルがピークアウトするまで死守。DRMをやめようと叫びながらFairplayを外部にライセンスして公開しないスティーブ・ジョブズのようなインテリジェンス(諜報諜知能力)が問われます。

アプリケーションのIPとクローズドなビジネスモデルがピークアウトを迎えると、収益源をサービスに展開しつつ、仕様を徐々にセミオープンにしてゆくマイクロソフトのような狡猾さも求められます。