よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

SugarCRM ver4.5はSFA/CRM進化の先端を切り開く

2006年08月31日 | オープンソース物語
SugarCRM 4.5日本語版を9月下旬から出荷する。

SugarCRMはオープンソースのCRMソフトSugar Open Sourceの商用版にあたる。今回リリースする新版では新技術をフル活用した機能が満載。そして各種機能をパーソナライズする使いやすさという点でも一皮むけている。

これらのイノベーションのネタはオープンソースの世界に拡がるバザールのような
SugarCRM Forumから生まれている。世界のどこかで、変人の誰かがこんな機能が欲しいと言うと、奇人の誰かが作ってしまう。それに賛同する新しいモノ、コト好きなメンバーがいっきにその機能を盛り上げたり、わんさか改善したりする。もはやオープンソースの世界に棲息する奇人、変人の共通言語は英語だ。世界(英語の意味空間)と日本(日本語の意味空間)を結ぶ場が、産学官連携で運営しているSugarCRMオープンソースフォーラムでもある。

たとえば、Ajaxを利用しドラッグ&ドロップ操作が可能になったほか,DBMSとしてMicrosoft SQL Serverを使用できるようになった。Ajaxはすぐれモノだ。AjaxはAsynchronous JavaScript + XMLの略で,サーバーと非同期通信することによりWebブラウザだけでページを再読み込みすることなく動的なユーザー・インタフェースを実現できる技術。

Ajaxテクノロジーを組み入れることによってSugarCRM 4.5では「Googleパーソナライズド・ホーム」や「Windows Live」のように画面上のモジュールをドラッグ&ドロップして配置をカスタマイズしたり,ポップアップウインドウで画面表示をカスタマイズしたりできるようになった。ほんの数回のステップでアプリケーションの外観や感触、操作性を簡単にコントロールできる。

組織学習やナレマネ支援という視点からは、フォーラム機能の実装が目玉。SugarCRMのフォーラムでメンバーが情報をヤリトリする。SFA、CRMというフォーマルかつ目的志向的な場にワイガヤ井戸端会議というインフォーマルな場がくっつく。エントリされたワイガヤ情報は取引先、バグトラッカー、ケース、商談、プロジェクトなどのあらゆるトピックと連携する。

またSugar 4.5は、ユーザがどの言語の情報でも保存、検索、取り出しを行えるようマルチバイトの文字集合やUTF-8をサポートし、国際化に対応する機能を拡張している。





森での生活は森との戦いだ

2006年08月20日 | 自転車/アウトドア
仕事と自転車、山登りなどを組み合わせて北海道に2週連続で行った。本来なら間の1週間を自転車ツーリングにあてて、北海道づけといきたかったが、ファイナンスと重なったので、それもできず、北海道を2回行ったり来たり。

やっと、ひとまとまりのファイナンスがらみの仕事をやり終えたので、盆の休暇を兼ねて週末は清里の森の山小屋へ。山小屋といっても米国製のトレーラーハウスを森の中の敷地に置いただけの粗末なものだが、衣食住の3要素の確保は必要にして十分。テントで寝泊りするアウトドアの延長線でしつらえた小屋なので、食事を作り、食べ、近隣の温泉に浸かってごろんと寝るだけというシンプルライフの拠点。

森の木漏れ日あふれるテラスで、ネットにつなげたパソコンを使って優雅に本の原稿を書くこともあるにはある。でも去年は母親が病気で倒れたこと、仕事で忙しかったことと、時間のある時はもっぱらサイクリングをしていたことが重なり、この小屋での滞在はなし。

ああ、もったいない!
森の生活はどこへ行った?

ネーチャー・ライティング志向がいくぶんある読書人はヘンリー・D・ソローの「ウォールデン森の生活」などに淡い憧れを持って森を訪れるという。ソローの本を片手に遠くに思いながら、森と思弁的、仮想的につきあうのもよい。ただし、実際の森とのつきあいは、存外、肉体的、具体的である。肉体的、具体的に森と向き合うのはけっこうしんどいこともある。

山小屋の屋根掃除がそれだ。

その小屋で、5年ぶりくらいに屋根の掃除をした。そして驚嘆すべき出来事に遭遇。広葉樹の落ち葉が屋根にたまり、5回くらい季節のめぐりの洗礼を受けて、落ちたまった葉の集積は、なんと屋根の上でこってりと黒々とした「土」になっていたのだ。

街中の家では、屋根の上に土が溜まるなんて、ありゃしない。広葉樹林の森のなかの屋根だからこそ起きる現象。その腐葉土に根を張った木の実からは、茎がのびて、葉さえも茂らせている。森は人造物をゆっくりとだが静かに侵食して「森」に戻そうとしているのか?森に侵入してきた人工に対するささやかな反撃なのか?

いずれにせよ、森にはパワーがある。森林浴などは、今風に言えば癒し系パワーの活用なのだろうが、森は、身勝手な森への侵食者に対しては、無言ながらも容赦のない静謐な反撃に余念がない。森での生活は、森との戦いでもある。

ダニエル・ピンク、「ハイコンセプト」

2006年08月16日 | No Book, No Life
旭川の書店にて購入、飛行機の中などで読む。

右脳・左脳のやや浅めのアナロジーや日本のゆとり教育の礼賛はマトはずれだが、この本の妙味は斬新なパラダイムシフトを描写する編集力とプラクティカルな参考文献、参考サイト、参考セミナーなどのレファレンスだ。著者自身の似顔絵や写真をページに登場させるという趣向も、露悪趣味に陥ることなく、この本が主張する共感や遊び心の発露ということでかろうじて文脈を保っている。

デザイン(desing)、物語り(story)、共感(empathy)、遊び(play)、生きがい(meaning)、調和(symphony)といった6つの方向性、感覚をイノベーションとして取り込むことが企業としても個人としても重要なオプションとなる。ここまでの主張を断片的に行っていたのでは読者は飽きる。この本の新しさは、クリステンセンに代表されるイノベーション論のカテゴリではなく、認知科学的なカテゴリから論じている点から生まれている。そして、著者ダニエル・ピンクによると、これら6つのセンスは右脳の機能をうまく左脳の機能とバランスさせることによって発揮させるとこができるという。

この本のライティング・スタイルは、だれもがうすうすと感じているであろう世の中の動きを、わかりやすい口語のキーワードで整理し、豊富な事例で描写し、現在の全体像と、将来の方向性をデッサンするというもの。この叙述方法は、この本も強く意識しているアルビン・トフラーの「第3の波」あたりが嚆矢となる。このように、この本はポップなパラダイム本の伝統を継承してもいる。

ただし、ポップなパラダイム本の類書と異なるのは、訳者はいざ知らず、筆者本人は認知心理学、脳科学などの広範な文献を丹念に押さえて論を展開していることだろう。これらの切り口は、認知心理学や脳科学の知見から見ればたわいのないものだろうが、とかく戦略論に走ってきた経営やビジネス書の書棚と見比べると、確かに新鮮さは感じる。日本人によるビジネス書でチクセントミハイをきちんと引用できている本はないという状況では、この本は、経営、ビジネス、自己啓発領域で、うまくニッチを作り上げている。

経営とは認知する主体としての人と組織の行動の累積である。今後、「認知する主体」に寄り添うほどに、経営本、ビジネス本も、自己啓発本や記憶本、アンチ・エージング本に続き、ポップなノリで認知心理学や脳科学の知見を動員する時代になるだろう。

この本は、巧みにダニエル・ゴールマンのEQ論、コンピテンシー理論にもフックをかけながら、実は、前述のデザイン、物語り、共感、遊び、生きがい、調和といったことに対する感性、そしてそれらを開発したり応用したりする能力こそが、富の源泉であり、高い所得を確保する有力な手段であるとする。

ではどんな仕事か?言い換えれば、新興のアジアの国々でできないような仕事。コンピュータではできないような仕事。非物質的な高次元の欲求を満たすような仕事。このようなハイタッチ、ハイコンセプトな仕事こそが、今後コモディティ化の波に飲み込まれることなく高い付加価値が労働市場から評価されて高所得をもたらす、と。このような文脈ではキャリア開発、仕事観について新しい視点を汲み取ることができるだろう。

さて原書では"meaning"となっているが、残念ながら、この訳書は「意義」と訳出している。これは素直に、「意味」と訳すほうがこの本の文脈でのニュアンスはもっと豊かになるだろう。義という漢語は、教条的な型にはめられたjustificationの含意があるが、意味の「味」には、認知する側の自由なかかわり、真価を見極めて味わうappreciationの含意があるからだ。

訳者(翻訳のスーパーバイザー)の大前研一さんは、1988年に「遊び心」なんていう本をイメージチェンジの一環を兼ねて出版している。このところ、大前本の筆力は落ちているが、この訳本は、「遊び心」の脈絡で読むと実に面白い本じゃないか。






オープンソースの市場浸透度と戦略

2006年08月07日 | オープンソース物語
オープンソース・ソフトウェアの市場浸透度ととるべき戦略を比較した面白いチャートをひとつ。

縦軸に市場浸透度、横軸に市場でのステージをとる。簡単に言えば、縦軸は、どのくらいのユーザに使われているのか。横軸は、ユーザの特性をあらわす。キャズム理論に準拠して、左から右へ、イノベータ、アーリーアダプタ、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティと推移する。ミソとなるのは、アーリーアダプタからアーリーマジョリティへと推移してゆくときには、大きな「溝」=キャズムが存在するということと、ステージの特性ごとに、とるべき戦略が異なってくるということだ。

イノベータを創出しようというステージの戦略は?

徹底的にイノベータに訴求する。コマーシャル・オープンソース・ソフトウア(COSS)においては、ダウンロードの件数とコミュニティの大きさが2大業績評価指標となる。つまり、ダウンロードの件数を爆発的に飛躍させ、コミュニティに首をつっこむメンバーの質と量を増大させることが、イノベータを創出することに直接的に繋がる。

さて、イノベータと呼ばれる新しいモノ好き、変化が好きな人々によって高い評価を得て十分浸透してくると、次のステージは、アーリーアダプタに訴求してゆく。アーリーアダプタとは、イノベータよりも人数は多く、イノベーションの成果を着実に活用してゆこうとする適応者、適応企業をさす。

アーリーアダプタ・ステージでの戦略は?

このステージでは、先進的なニーズを持ち、COSSのプロダクトやサービスを応用してゆきたいというワンツを持つ企業に対してフックをかけてゆく。早い話、このステージでは、目利きの企業や、先を見ることができる企業を顧客にして、ファースト・セールの後に、いかにサービスやプロダクトでセカンド・セールを達成するかがポイントとなる。

ダウンロードの件数は、ある意味でファンの基盤の厚さを示す。COSSにおいてはファンと顧客とは異なる。ファン・ベースの潤沢さはダウンロードの件数とコミュニティの規模でとらえられるが、顧客はズバリ、顧客からペイアウトされた現金で把握されなければならない。

顧客からペイアウトされるキャッシュがプロダクトやサービスの売上げからもたらされれば、損益計算書の売上げとなる。その顧客が投資という形でCOSS企業に出資するのであれば貸借対照表の純資産の部に計上される。(新会社法では資本の部ではなく、純資産の部)

いずれにせよ、アーリーアダプタ・ステージの戦略は、継続的にファンづくりに注力しながらも、先進的な顧客づくりへリソースを集中してゆくことである。このような視点でSugarCRMを眺めてみるのも面白い。




札幌にて講演

2006年08月06日 | 講演放浪記
2週連続で北海道。金曜日に羽田を立ち、土曜日は札幌コンベンションセンターにて講演。今回は、クリニカルラダーを骨子として、医療サービスをサービスサイエンスとヒューマンサービスの視点から眺めて縦横無尽に語り尽くすという企画。

翌日、支笏湖の美笛の森を訪れる。キャンパーは皆、湖のほとりへと押し寄せるが、湖畔以外にも、このエリア一帯の自然美は満ち溢れている。

たとえば、原生林。なんと美笛の森には、見たこともないような巨木が所々立っているののだ。しかも、厳しい風雪に耐えてきたためであろう、幹や枝はとてつもなく力強く、強烈な造形を体現している。

図太い枝が喘いで空に手を伸ばしている。
ちからいっぱい枝を伸ばし、なにかをつかもうとしている。
古木はなにを掴もうとしているのか。
適者生存の確率か。
宇宙から降り注ぐ大いなるエネルギーか。

この季節、その原生林の中を巡る風はほのかに甘い芳醇な香をたたえている。この森の林冠には、時間の流れがやわらかに渦巻き、夏のひと時の淡い空間が緑色の物語りに覆われている。

千葉県ITフロンティア産業支援協議会

2006年08月03日 | 技術経営MOT
ひょんなことから会員に推挙され、初回の会合に出席。

この会の規約を見て、その志の高さに驚嘆することしばし。いわく、「IT・エレクトロニクス産業分野における新たな事業の創出等を通して、千葉県におけるIT・エレクトロニクス産業クラスターの形成・発展の促進を図るため、企業、大学、団体、行政機関等の連携による「千葉県ITフロンティア産業支援協議会」を設置し、千葉県経済の一層の発展を図る」

シリコンバレーあたりでは、産学官の連携は見事なまでに人脈はじめにありきで、プライベートなランチあたりからはじまり、あっというまにアライアンスや商談がまとまったりする。シリコンバレー型産学官の連携運動は自立・自律的で、人脈たよりである。

それに比べれば、日本の産学官の連携運動は、官が一番後ろに来るのは、この表現だけにとどまり、実態は官の主導による運動だ。日本のそれは、音頭を行政がとらなければならない、とらざるをえない、というのがコトの本質である。官が引っ張っている限り、なにも起こらないという冷めた見方もある。

しかし、会員となってしまってからには、なんらかのクリエイティブな提案を行いたいものだ。