シリコンバレーのマイクロソフトに移動してレクチャーを受ける。
スタートアップ
ISVに関するテーマのレクチャーが最大級に刺激的だった。ジョン・フェルナンデス氏の切れ味さわやかなプレゼン。久しぶりにプレゼンテーションを聞いて、知的に興奮した。
ソフトウエア系のIT企業におけるMOT(Management of Technology)のあり方を自分なりに模索してきたが、今日はそのひとつのMS社からの明確な回答、方向づけを得ることができた。
米国のMS社は、ソフトウエアの開発のみならず、ソフトウエアの開発を行うスタートアップ企業、ベンチャー企業に対しても、総合的な支援をプラグマティックに行っている。
対象企業を選定する基準としては、
(1)ビジネス、事業形態
(2)技術構成
の二つの項目それに付随する評価軸で厳選する。
そして、支援の内容はおおきく3つにわかれ、
(1)技術支援
(2)マーケティング支援
(3)販売支援
MS社そのものはベンチャーキャピタルではないので資金調達に関しては直接関与しない方針だが、そこはシリコンバレー。関連のベンチャーキャピタルと連携して、資金調達の「支援」まで実質的に行うのだ。
こうしてマイクロソフトはスタートアップ、ベンチャー企業を育成し、長期的なパートナーとして、新規性のあるビジネスモデルそのものを包み込むのだ。包み込まれる方のベンチャーとしても、自力では限界のある技術、マーケティング、販売に関する支援をMS社から得ることのインパクトは大きい。これらを包括する力動的なスキームがMSのISVであり、ISVをレバレッジにしたMS流のひとつのMOTの具体的なカタチなのである。そしてベンチャーから見てもMOTのひとつの有力な実践形態だ。
このスキームはMOTの相互補完、相互還流、クロスオーバーシステムとも言ってよい。こんなダイナミズム、プラグマティズムがシリコンバレーという「弱い連結の場」で蠢いているのである。そしてその場においてもMSは触媒機能を果たしている。グラノベター風に言えば、「弱連結の強み」がいかんなく発揮されているように思える。
さて、このプレゼンは支援先の企業の社長をわざわざよんで話をさせるという凝りようだった。ゆえに大変リアル。泣ける。感動的。
ラビ氏はデータマネジメントのベンチャー企業、
Mimosa Systemsの社長。インドの名門、Indian Institute of Technologyを卒業後UCLAでマスターとドクターを取得している。レジュメを読んで、ひとつの言葉に目が釘付けになった。その言葉はKanpur。
学部時代に友人と3人でパーティーを組んで、デリーからカトマンズまでおよそ1500KMを自転車で走破したときに、僕たちはKanpurに立ち寄り500人以上の大群衆に取り囲まれ、騒ぎにまでなったのだ。
そんな話をラビ氏にしたら、大きな目をさら大きくして驚いていた。そりゃそうだろう。マイクロソフトにベンチャー経営の話をしにきたら、知らない日本人が自分の生まれ故郷の町を自転車アドベンチャーで訪れて騒ぎを起こした話をしたのだから。
もうひとつのプレゼンは
AKIMBOのジョン・ゴールドマン氏。タフツ大学でコンピュータサイエンスのバチャラーとマスターを取り、ハーバードのビジネススクールでMBAを取り、数社会社を立ち上げ成功させ、今はこの会社をスタートアップさせている。
プレゼンに参加しながらこんなことも考えた。
かつての古い日本では:
・制度的エリート → 中央官庁、大企業
・フツーの大勢 → 中堅企業
・変わり者、おちこぼれ → 中小、ベンチャー
っていう図式があった。というか、まだ保守的な人々のマインドの中には歴然とあるのだが。
でもシリコンバレーやボストンのルート128あたりでは
・知的エリート → スタートアップス、ベンチャー
・フツーの大勢 → それなりに多数の選択枝
・知的おちおぼれ → お役所、大企業
なんていう図式に切り替わっている。日本も変わんなくちゃ、というか、変えましょう。
さて午後はヒューレット・パッカードへ。
先進的な技術動向のプレゼンテーションが刺激的。詳細は企業秘密に属することなので書けない。一同、小学校の生徒みたいにはしゃぐ。本当にオモシロイ技術の応用はコドモを大人にさせ、オトナを子供にさせる。
ヒューレットさんとパッカードさんが生前仕事をした部屋までみせていただく。「オープンドア・ポリシー」に関してHPは有名だ。ヒューレットさんとパッカードさんが実践していたことだ。
お二人の部屋を隔てる扉、そして二人と他の社員を隔てる扉はいつも開けっ放しにされていた。その証拠に開いているとびらの影になっている床や壁の色が違うのだ。
500ドルのお金から創業した会社、HP。そしてイノベーションをとことん実行し、またとことんリスペクトする会社。胸がいっぱいになった。
今回のツアーを企画、運営していただいた関係者の皆様、ほんとうにありがとうございました!