日本ではMOTが「MOT大学院バブル」のように言われてはいる。このあたりの事情は板倉省吾氏が詳しく語っているとおりだ。
日本のMOTはざっくり言えば、科学、技術をビジネスに結びつけ価値をキャプチャーできる人材を専門職大学院=修士課程などで養成してゆこうという動きだ。
この動きの文脈はアメリカでは、このところMOTではなくProfessional Science Master(PSM)で議論されることが多いということに注意を向けたい。
上の図は、Professional Science Master's プログラムを展開している大学院をプロットしたもの。その拠点となる大学が赤マル急増中なのだ。
Professional Science Master's (PSM) は新しい修士号だ。産業社会で高く評価されるビジネススキルを同時に習得させながら、サイエンスや数学の発展的なトレーニングを学生に2年間で与えるというもの。
日本の事情に合わせて言うと、理工学部で4年間学んだ後、その上の博士課程前期で研究を継続しながらビジネススキル、マネジメントのメソッドを学ぶという構図に近い。まわりを観察するにつけ、日本では理工系大学院で専門性のみを狭く深く研鑽するあまり、ビジネススキル、コミュニケーションスキルに欠陥を有する(素質はあるのだが開発する機会に恵まれなかった)人材が少なくない。
もっとも多くの日本の大学の教員は、そのような環境で育つことが多いので、無意識的に同型の経路を作り、あるいはその経路に依存し、似たような人材を作ってきたと言えなくもないが・・・。
いずれにせよ、通常PSMでは学生は2年間のコースワークを義務づけていて、創発・学際領域にくわえビジネスやコミュニケーションを「またがって」学ぶとされる。カリキュラムは実際の産業社会のニーズにもとづいて作られ、優秀な学生がキャリア開発をしやすいように配慮されている。
こうのようにとらえてみると、工学部の「上に」加えられた日本のMOT大学院は名称は異なるがコンセプト的にはPMSに近似した位置取りをしているといってよいだろう。(早稲田大学のようにビジネススクールのなかにMOTを位置づけるのは、十分な志願者が集まれば、長期的な差別化戦略上は日本の特殊事情により卓見である。)
日本のMOTと異なるのはアメリカPSMの徹底振りである。米国のPSM構想では、先端科学領域での専門性は最低マスターレベルでないと話にならない、それにビジネススキルを併せ持った人材を「大量」に育成、輩出することがアメリカの国益を増進するというグランドデザインが一気通貫している。
実はPMSにおいては「大量」がキーワードだ。Top tierのアイビーリーグ+αのみでは量の確保に難点があるため、PSMは州立大学、セカンドクラスの私立大学に集中している。州立大学、セカンドクラスとはいえ、世界ランキングでは堂々たるポジションだ。このような大学に対するグラント方針は、PSMを一気に一般化するという目的に対して合理的な判断だろう。
詳細はこちらから。
日本のMOTはざっくり言えば、科学、技術をビジネスに結びつけ価値をキャプチャーできる人材を専門職大学院=修士課程などで養成してゆこうという動きだ。
この動きの文脈はアメリカでは、このところMOTではなくProfessional Science Master(PSM)で議論されることが多いということに注意を向けたい。
上の図は、Professional Science Master's プログラムを展開している大学院をプロットしたもの。その拠点となる大学が赤マル急増中なのだ。
Professional Science Master's (PSM) は新しい修士号だ。産業社会で高く評価されるビジネススキルを同時に習得させながら、サイエンスや数学の発展的なトレーニングを学生に2年間で与えるというもの。
日本の事情に合わせて言うと、理工学部で4年間学んだ後、その上の博士課程前期で研究を継続しながらビジネススキル、マネジメントのメソッドを学ぶという構図に近い。まわりを観察するにつけ、日本では理工系大学院で専門性のみを狭く深く研鑽するあまり、ビジネススキル、コミュニケーションスキルに欠陥を有する(素質はあるのだが開発する機会に恵まれなかった)人材が少なくない。
もっとも多くの日本の大学の教員は、そのような環境で育つことが多いので、無意識的に同型の経路を作り、あるいはその経路に依存し、似たような人材を作ってきたと言えなくもないが・・・。
いずれにせよ、通常PSMでは学生は2年間のコースワークを義務づけていて、創発・学際領域にくわえビジネスやコミュニケーションを「またがって」学ぶとされる。カリキュラムは実際の産業社会のニーズにもとづいて作られ、優秀な学生がキャリア開発をしやすいように配慮されている。
こうのようにとらえてみると、工学部の「上に」加えられた日本のMOT大学院は名称は異なるがコンセプト的にはPMSに近似した位置取りをしているといってよいだろう。(早稲田大学のようにビジネススクールのなかにMOTを位置づけるのは、十分な志願者が集まれば、長期的な差別化戦略上は日本の特殊事情により卓見である。)
日本のMOTと異なるのはアメリカPSMの徹底振りである。米国のPSM構想では、先端科学領域での専門性は最低マスターレベルでないと話にならない、それにビジネススキルを併せ持った人材を「大量」に育成、輩出することがアメリカの国益を増進するというグランドデザインが一気通貫している。
実はPMSにおいては「大量」がキーワードだ。Top tierのアイビーリーグ+αのみでは量の確保に難点があるため、PSMは州立大学、セカンドクラスの私立大学に集中している。州立大学、セカンドクラスとはいえ、世界ランキングでは堂々たるポジションだ。このような大学に対するグラント方針は、PSMを一気に一般化するという目的に対して合理的な判断だろう。
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