よしなごと徒然草: まつしたヒロのブログ 

自転車XアウトドアX健康法Xなど綴る雑談メモ by 松下博宣

原発事故と新生児、幼児への健康障害

2011年04月30日 | 健康医療サービスイノベーション

日本助産師会で過去、4回も講演させていただいており、また今年も講演の予定が入っていますが、新生児、幼児、母胎の健康にはことさら強い問題意識を持っています。

このところ、放射線物質、放射能と健康被害について内外の研究者と意見交換をしています。Fukushimaの件は、海外のhealth service, public health, disaster management分野でも俄然注目をされています。

国内の既存マスコミから流れてくる情報は、統制情報、作為的にマニュピレート(操作)された情報が幅を利かせています。原発事故の被害状況(原発の施設状況、大気、環境に放出されている放射性物質、健康被害など)は、政・産・学・官の利権構造に報(主流メディア)が組み込まれている構造から発せられているので、原発擁護派による暗黙的情報マニュピレーション(操作)やマヌーバ(工作)が織り込まれています。

もっともこれは昨今始まったものではなく、「原発・正力・CIA」(有馬哲夫 2008)で明らかにされているように、衆議院議員の正力松太郎、讀賣新聞、日本テレビ、CIAが原子力に好意的な新米世論を日本に形成、誘導した1950年代から延延と半世紀以上にも渡っているものです。

さて、小佐古敏荘東大教授が、内閣官房参与を務めた人が「子ども20ミリシーベルトは間違っている」と断言して辞任したことにより、本件を巡る事態は流動的になってきました。たぶんドタバタと政権交代を経て、規準が厳しくされることでしょう。しかし、タイミングが遅すぎました。

以前このブログの「放射線・放射能と人の行動」で書いたように、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム、SPEEDIのデータ公開のやり方がまったく間違っています。4/25から事故発生以降1カ月以上たって公開されはじめましたが、過去に予測されたデータを後になって公表するのはまったくもって本末転倒。予測データは「その時」に公開されなければまったく意味はありません。本件については政府・関連機関が情報を隠蔽、操作してきたと指弾されても弁解の余地はないでしょう。

放射線物質、放射能汚染は、大人より子供、そして子どもでも発達過程が若ければ若いほど微量でも長期的に影響することが疫学的研究により明らかになりつつあります。また、現在の乳幼児の女の子が将来、妊娠して出産する場合、新生児の健康に影響を及ぼすことも、チェルノブイリ、その他のケースの分析で明らかになりつつあります。

明らかになったのではなく、明らかになりつつある、と書かざるをいない理由は、(1)25年前に起きたチェルノブイリ原発事故でさえも、その長期的な影響は現在にいたるまで延々と継続している。(2)IAEA-WHOのライン(注1)以外の政治的な意図を持たない疫学的調査では、IAEA-WHOラインとは異なる健康被害(より深刻)の状況が報告されているからです。(参考サイトは以下)

ここでは、年齢範囲がひろい子どもではなく、新生児、幼児の健康被害に限定します。新生児、幼児の健康被害の実態は、「直ちに」現れるものではなく、長期的なタイムスパン(複数の次世代にまで)で現れるものです。

 (A)汚染状態、予測を知り得て退避行動をとった時の損害

 (B)汚染状態、予測を知り得えないで退避行動をとることができなかった時の損害

ここにおいて、(B)-(A)が問題となります。健康被害は損害賠償請求の対象となりますが、熊本・鹿児島・新潟の水俣病、富山県のイタイイタイ病などの経緯を見てわかるように因果関係の立証は容易ではありません。

今後必要なことは、まず正しい情報に接することによって自分とこどもの身を守ること。その上で学術コミュニティにも果たさなければいけない責任があります。たとえば、上記の利権構造とは分離された長期的な調査です。新生児、乳幼児に関しては以下のデータが重要になります。

(1)新生児の健康状態を出生前からモニタリングして経時的に追跡することの徹底。

(2)妊娠前後の時期から出生時まで母親と新生児はどこにいたのかに関する調査。

(3)母胎について推定被ばく量を統一的な手法(母乳や検体の放射線物質含有量など)で調査すること。

この種のサーベイは国とは明確に分離され、拮抗力を有する第三者機関が行う必要があります。できれば特定の利害に左右されない国際的な機関と提携してやるべきでしょう。早々に着手する必要があります。


           ◇   ◇   ◇


関連する参考サイト、ニュース、報告、意見などを貼っておきます。

(注1)Chernobyl: A Million Casualties

3.11の1週間前の3月5日に収録された毒物学者ジャネット・シェルマン博士へのインタビュー。このビデオの中には1959年にIAEAとWHOとの間で結ばれた協定についてのコメントが入っています。この協定は、二つの機関が互いに互いの承認無しには研究発表を行ってはならないことを取り決めたもの。残念ながらWHOは、原子力を推進するIAEAの同意なしには、例えばチェルノブイリ事故による人々の健康への影響に関する報告を行うことが出来ないという現状にあり、欧州ではこの協定の廃棄にむけた市民運動があります。

IPPNW「チェルノブイリ健康被害」新報告と、首相官邸資料「チェルノブイリ事故との比較」との驚くべき相違


IPPNW(核戦争防止国際医師会議-1985年ノーベル平和賞受賞)のドイツ支部がまとめたチェルノブイリ原発事故25年の研究調査報告が4月8日に発表されました。英語サイトはここです。 レポートのリンクはここです。論文の中でも特に重要である、5-11ページの「論文要旨」、「WHOとIAEAにより発表された公式データの信頼性欠如に関する注記事項」、「核戦争防止国際医師会議と放射線防護協会は要請する」の和訳をここに紹介します。チェルノブイリ事故25年、その人体と環境に対する夥しい被害の全容がこの研究により明らかになっています。そして、首相官邸のホームページで公開された、日本政府のチェルノブイリ事故への見解がこういった最新の見解と大きく相違することを指摘します。

WHO と IAEAにより発表された公式データの信頼性欠如に関する注記事項 (報告8ページ

国際原子力機関(IAEA)と世界保健機関(WHO)により2005年9月に組織された「国連チェルノブイリ・フォーラム」 において、発表されたチェルノブイリの影響に関する研究結果は、きわめて首尾一貫性の無いものだった。たとえば、WHO と IAEAの報道発表は、最も深刻な影響を受ける集団では、癌と白血病により今後最大4000人が死亡する可能性があるとしている。しかしながら、この論文の根拠としたWHO の報告では、実際の死者数を8,930としている。これら死者数はどの新聞記事にも取り上げられることはなかった。WHO 報告書の引用元を調べると、癌と白血病による死者数の増加として1万~2万5千人という数字に行き当たる。

 これが本当ならば、IAEAと WHOの公式声明はデータを改ざんしていると合理的に結論づけることができる。IAEAと WHOによるチェルノブイリの影響に関する説明は実際に起こっていることとはほとんど無関係である。


「子供の許容被ばく線量高すぎる」と疑問 (動画)
(04/27 テレ朝ニュース)

ノーベル賞も受賞した国際的な医師の団体がワシントンで会見し、文部科学省が子供の1年間の許容被ばく線量の目安を「20ミリシーベルト」に設定したことに反対の意思表示。

 アイラ・ヘルファンド医学博士:「衝撃的だったのは、日本政府が福島の子供たちの許容被ばく線量の基準を高く設定したことだ」

 ヘルファンド博士は、「子供の場合、がんになるリスクが成人よりも2倍から3倍高くなる」と指摘して、許容される被ばく線量の基準を引き下げるよう要求。アメリカでは、原子力関連施設で働く人の1年間の許容量の平均的な上限が年間20ミリシーベルトとされています。

福島第1原発:放射性物質放出 毎日154テラベクレル (4/25 毎日新聞)

 国際評価でレベル7という最悪の原発事故が、四半世紀を経て東京電力福島第1原発でも発生した。

 「予断を許さないという点で、チェルノブイリより深刻だ」と笠井篤・元日本原子力研究所室長は指摘する。

 チェルノブイリ原発事故で放出された放射性物質は520万テラベクレル(テラは1兆倍)と推定されている。爆発で一気に放出された分、発生から約10日間でほぼ止まった。これに対し、福島第1原発事故では37万~63万テラベクレルとチェルノブイリ原発事故の約1割で、経済産業省原子力安全・保安院は「大半は原子炉内に閉じ込められている」としている。しかし、内閣府原子力安全委員会によると、事故から約1カ月後の今月5日時点で1日当たり154テラベクレルが放出されている。今も本来の冷却システムが復旧しておらず、余震による影響や水素爆発が懸念され、新たな大量放出も起こりかねない。

 事故処理にも違いがある。チェルノブイリ原発はコンクリートで建屋を覆う「石棺」で放射性物質の拡散を防いだが、福島第1原発は1、3号機で格納容器全体を水で満たす「水棺」の検討が進む。東電は、原子炉の安全な状態である「冷温停止状態」まで最短6~9カ月かかるとしているが、見通しは立っていない。

 福島第1原発では、がん発症率が0.5%増えるとされる100ミリシーベルトを上回る放射線を浴びた作業員は23日現在、30人に上る。被害の実態はまだ把握できないが、松本義久・東京工業大准教授(放射線生物学)は「チェルノブイリ原発事故では各国の研究機関が綿密な健康調査をした。日本政府は、住民や作業員の心身両面の健康状態を追跡する態勢を早急に確立すべきだ」と訴える。【中西拓司】

ドイツ連邦政府が行なった調査によると、1980年かから2003年の23年間に、5歳以下で小児ガンと小児白血病を発症した子どもについて、ドイツ国内の22基の原発を含む16の原発の立地点から子供たちの居住地までの距離と発症の相関関係が調査された。

約6300人の子どもたちのデーターから得られた結果は、原発から5km以内に住む子どもが小児ガン・小児白血病ともに他の地域と比べて高い発病率を示していた。小児がんで1.61倍、小児白血病で2.19倍という有意な結果で、統計的に高い発症率であることが明らかになった。>

「原子炉閉鎖で乳児死亡率激減」 最大で54.1%マイナス 米研究機関が発表
(2000年4月27日東京新聞より)

 【ワシントン26日大軒護】放射線の健康に与える影響を調査している米研究機関は26日、原子炉の閉鎖により周辺に住む乳児の死亡率が激減したとの調査結果を発表した。


 調査は免疫学や環境問題などを専門とする医師、大学教授などで組織する「レイディエイション・パブリック・ヘルス・プロジェクト」(RPHP)が、1987年から97年までに原子炉を閉鎖した全米7ヶ所の原子力発電所を対象に、半径80キロ以内の居住の生後1歳までの乳児死亡率を調べた。


 調査は、原子炉閉鎖前の死亡率と、閉鎖2年後の死亡率を比較しているが、それによると、87年に閉鎖したワイオミング州のラクロッセ発電所では、15.3%の死亡率減少だった。もっとも減少率の大きかったのが、97年に閉鎖したミシガン州ビッグロック・ポイント発電所周辺で54.1%の減少だった。減少は、がん、白血病、異常出産など、放射線被害とみられる原因が取り除かれたことによるものとしている。

『規制値の再整理』 中部大学武田邦彦教授のブログ



今こそ日本を起こせ!

2011年04月28日 | ビジネス&社会起業

須賀等さんが塾長を務める丸の内起業塾が、「今こそ日本を起こせ!」というテーマで集中講義(含むディスカッションなど)を行います。

以前書きましたが、復興には起業家精神が求められます。(震災復興会議あたりで要領を得ない議論をして、震災復興税を提案するだと?バカを言うのもやすみやすみにしてください。この会議では、このさい米国債のほんの一部を売ろうということを誰も言わないのでしょうか?)

さて、大東亜戦争敗北からも溌剌たる起業家精神の発露があったからこそ日本の復興、その後の経済成長が実現しました。ただし、今回の状況は資本主義の変質・崩壊過程で起こっているので、起業にも社会性、弱者によりそう「新しい公共」への積極関与が問われています。市場主義や競争原理を金科玉条のものとしないオルターナティブな起業スタイルの出番です。

いっちょ、やったるか~!という人がいたらぜひ参加しましょう。

<以下貼り付け>

松下先生:
先般は貴書評誠に有難う存じました。
津波・大地震、それに福島第一原発事故と大変な1か月でしたが貴Volunteerは如何お進みでしょうか?

さて、2004年以来小生主宰・塾長を務める 丸の内起業塾第七期を5/18-7/20の毎週水曜夜700PM~900PMで新丸ビル10F 東京21C Clubにおいて合計10回、この時期だからこそ「今こそ日本を起こせ!」のテーマで3年ぶりに開講する運びとなりました。(下記ご参照ください。応募要項もdownloadできます)
http://www.odyssey-com.co.jp/venture/index.html

(尚、今回は当塾では福島の東京近辺に避難・仮住まいされている罹災者3名を上限に、今後事業再開・新規起業予定の方に入学金/授業料無償で入塾を受け入れることを福島県東京事務所と相談しています。


さて、恐縮ですが広く本メール回付戴き、当塾塾生候補になられそうな貴学関係者・学生お知り合い・貴顧客先等で参加ご推奨(企業派遣含)・ご紹介戴ける方おられれば是非ご紹介・ご推奨戴きたく、何卒宜しくお願い致します。(塾生は三菱地所等数社の大企業・中堅/ベンチャー企業の新規事業・経営企画等担当企業派遣者と起業家・起業希望者・関連専門家等とで半々くらいの構成を予定しています)。尚、学生さんの参加の場合は特に入学金は免除致します。

内容的にはこれまでも220名以上の卒塾生を出し、大変好評で多くの卒塾生の成功・成長実績を出しています。

例えば:

銀座ミツバチプロジェクト田中氏(1期)/高安氏(6期)
http://www.gin-pachi.jp/
セミナーズ(ラーニングエッジ社) 清水氏(3期)
http://www.learningedge.jp/
ブレークポイント社 若山氏(2期)
http://www.breakpoint.co.jp/
Alc 浜田氏 (福岡1期)
http://www.alc-net.co.jp/index.html

内容はかなり実務・実戦サイドにfocusしおり必ずやコスト以上の成果(もとよりコストはNPO的に相当割安にしていますが)を上げることができると存じます。

(添付応募要項ご高覧・回付の上、入塾希望者の方は事務局浦田さんに  s.urata@c-9.co.jp
直接ご連絡戴ければ幸甚です)。

以上取り急ぎ、お願い・ご案内まで。

須賀
http://www.odyssey-com.co.jp/venture/index.html
(丸の内起業塾第七期 5月18日~毎週水曜夜10回開講決定! 塾生募集中)

http://www.interliteracy.com/philosophy/001/suga.html
http://blog.goo.ne.jp/marumasamaru2010/e/1e22694af7021c9d5ffebeba7b8e5e1f
(拙著(共著「ケースで学ぶ実戦・起業塾」(木谷哲夫編著・日経新聞出版2010刊)
http://www.aiu.ac.jp/japanese/university/university04.html (国際教養大学)
http://blog.odyssey-com.co.jp/kuroinu/2010/03/post-bc38.html
http://ims.icc.kyoto-u.ac.jp/?p=148
http://www.berry.co.jp/blog/?blog=yumiko (須賀由美子/Radio Berry FM栃木)
http://www.tullys.co.jp(タリーズコーヒージャパン㈱ 特別顧問)

<以上貼り付け>


利根川、小貝川方面120kmサイクリング

2011年04月24日 | 自転車/アウトドア

3月に愛媛大学医学部付属病院へ仕事に行った。その帰りに予定していた四国~山陽の「しまなみ海道」チャリティ・サイクリングが震災の影響でやむなくキャンセルとなってしまい、その代わりに利根川、小貝川方面を120km走ってきた。

このチャリティ・サイクリングをご支援いただいた皆様、ありがとうございました。

このところ、震災、津波、原発事故と重なり、新学期のあれやこれや、原稿書きなどがたまってしまい、自転車に乗れていなかった。反省。

HDC(全国在宅歯科医療・口腔ケア連絡会)の有志が、こぞって被災地におもむき、亜急性期、生活支援気のボランティアを一生懸命に行っている。

MLには胸を締めつけられるようなシビアなこと、悲しい出来事など、次々とポスティングされている。朝一番でタメ読みしてから走り、このチューリップ畑の風景に遭遇。

ここは、もしかして地上の天国なのか?毎年訪れている場所だが、こんなにも素敵な場所に見えたのは初めてだ。

地震のために15cmくらいの段差ができている。

北印旛沼のサイクリングロードは地盤がもともと軟弱なため、いたる所に亀裂、崩落が。

このあたりは震度6弱を記録したが、道はズタズタだ。

北印旛沼。なにもなかったような湖面のたたずまい。

崩落現場には復旧工事のあとが。

利根川にでると、リトルリーグの子どもたちが野球の練習をしている。

ほのぼの。幸せな風景。

利根川のサイクリングロードが乗っかっている堤も、強烈にやられていた。

しかし、復旧工事が進んでいる。

気持ちの良い舗装がバラスになっている。さすがクロスバイクやロードの人たちは入ってこれない。

こういうときは650AX26インチ1・3/8のランドナーは重宝する。

布佐の栄橋で利根川を渡り、茨城県へ。

ここまで約50km。ほぼノンストップでここまで走ってきたので腹がペコペコ。

カミサンにつくってもらった特大サンドイッチをベンチに座ってパクパク食べていると、なんと地震が。

やだね。

そして、小貝沿いのサイクリングロードをひた走る。


折り返し地点の間宮林蔵記念館。「よみがえるカリスマ平田篤胤」(荒俣宏・米田勝安)に間宮林蔵と平田篤胤には交友があったと書かれている。

この記念館のいいところは無料開放。しかも、林蔵の生家の茅葺の家で昼寝、ごろ寝もできる。傑出した秀才、探検家、学問を究めた行動の人、林蔵のことを思いつつ、しばし縁側でごろ寝して休息。(不謹慎)


間宮林蔵の銅像が庭に立っている。

利根川水系の下流には香取市があり、伊能忠敬は香取の出身。そして林蔵は、直接、忠敬の門をたたき、当時最先端の測量技術を学んだそうだ。

その結果、林蔵の測量の精度があがったという。忠敬がスケジュールの都合上全ての蝦夷地を測量できなかったので、残りの蝦夷地を間宮が代わりに測量して測量図を作ったそうだ。その結果、蝦夷以北の地図は最終的に忠敬の測量図と間宮の測量図を合体させたものになったという。

帰り道は、向かい風。はーはー、ぜーぜー。

おまけに左膝のアウトサイドがキリキリ痛みはじめた。とほほ。

速度は15km/時に減速。120kmはさすがに身にこわえるわ。

でもはしらにゃならんのだ。

約束の旅。


 


ソーシャルビジネスについても考える「被災地報告会」

2011年04月18日 | ビジネス&社会起業

今一生さん達が、4月21日(木)午後6時30分~@千葉大で、

 長く続く復興支援のためのソーシャルビジネスについても考える「 被災地報告会」を開きます。詳細はこちらへ。

<以下貼り付け>

■震災1ヶ月後の石巻の被災地報告会

東日本大震災から1ヶ月後の4月11-12日、被災地の一つである宮城県石巻市を中心に取材してきました。

その様子は、昨今テレビや新聞で報じられているような復興や希望のきざしが見られるような落ち着いた状況ではなく、「有事」そのものでした。

東京発、全国行きのマスメディアは、支援物資も十分に届かない避難所や民家がたくさんあることを十分に伝えていません。

そこで、現地の画像を豊富に紹介し、地元の現況が正確にわかる報告会を行います。まさに今必要な支援の内容や、今後の復興支援に必要なソーシャルビジネスモデルについてもお話しします。

メディアが伝えない被災地のリアルな姿を知りたい方。少しでも被災地を支援したいけど、何をしていいかわからない方。その他、宮城県出身で地元の現況が気になる方など、どなたでも参加できます。

<以上貼り付け>


本多静六『私の財産告白』

2011年04月18日 | No Book, No Life

とにかく書くので忙しい。といってもこのブログのことではない。自分もモノを書いて出版社やメディアからお金をいただく身なのでプロの文筆業者のはしくれである。

で、どのくらい書いているのだろうか。

ざっと一年で計算してみると、昨年は毎月の月刊誌連載、96,000文字。日経ITPro(ウェブ媒体)24,000文字、単行本1冊で88,000文字。これらの合計で一年間で算出した文字数は208,000文字。12で割って月当たりにならしてみると、平均17,333文字。さらに、月当たり原稿用紙に換算して43枚。一日当たり400字ヅメ原稿用紙1.4枚。

そうか、原稿用紙を一日一枚以上書いているのか!

これら以外にもタダやマイナスのモノカキの仕事もある。そういう意味では学術論文は最悪の仕事だ。なにせ、原稿料はなし、費用のみかかる。でも書くプロセスで強烈にモノを調べ理論化してゆくのでけたたましく面白いのだが。

だからブログってなんなのだろう?と思う。書いてなにもならないし、どうってことない。だからと言って、ブログをおろそかにすべし、というものでもない。

ブログに走り書いた雑文がきっかけとなり、どこいらの編集の目にとまったりして、取材を受けたり、原稿に繋がったりすることもままある。そうした金銭に繋がる現実的な効用よりも、ブログは、モノカキとして、少ない燃費で絶えず「書きモード」をオンにしてエンジンを回しておくアイディア、発想の「仕込み場」としての効用が大きいように思える。(日常のよしなごとをダラダラ書くというもの楽しいかもしれないが、それだとあまり仕込みにはならない・・・)

          ◇    ◇    ◇

前置きが長くなったが、研究者、貯蓄家、投資家、篤志家として本多静六はあまりに巨大だ。彼の書いた「私の財産告白」がとほうもなく味わい深い。財産形成のヒントや洞察を得るためにこの本は読み継がれている。

たしかに、つぎのような教えは値千金だろう。「収入の1/4を貯蓄せよ」、 「財産を作ることの根幹は、やはり勤倹貯蓄だ。」、 「大切な雪だるまの芯を作る。玉の芯ができると後は面白いように大きくなる。」、 「好景気時には勤倹貯蓄をし、不況時には、投資せよ。 時機を逸せず巧みに繰り返す」 

また、唸るような教えも多い。

「一生涯絶えざる、精神向上の気迫、努力奮闘の精神であって、 これをその生活習慣の中に十分染み込ませることである」(P.61)、「人生における七転び八起きも、 つまりは天の与えてくれた一種の気分転換の機会である。 これを素直に、上手に受け入れるか入れないかで、成功不成功の分かれ目となってくる」(P.110) 、「人生の最大幸福は職業の道楽化にある。 …すべての人が、おのおのの職業、その仕事に、全身全力を打ち込んでかかわり、 日々のつとめが面白くてたまらぬというところまでくれば、 それが立派な職業の道楽化である」(P.186) などなど。

ところどころ、出てくるピース・オブ・センテンスにも「おっ」と思わせる。

・人生一度通る貧乏ならできるだけはやく切り抜けた方がよい 
・ケチと気前のよさが与える後の印象 
・気の毒は先にやる 
・金儲けは理屈ではなく実際である、計画ではなく努力である、予算ではなく結果である。 
・好景気には勤倹貯蓄、不景気には思い切った投資 
・よけいな謙遜はしない 
・人の名前を正しく覚える 
・仕事に追われないで、追う 
・平凡人は本業まず第一たるべし 

          ◇    ◇    ◇

以上の驚愕すべき貯蓄、投資の大実績に加え、本多静六は、戦中戦後を通じて働学併進の簡素生活を続け、370冊余りの著作を残した大文筆家でもある。370冊!!一日原稿用紙1枚を長期に渡って自らに課したという。

一冊の文字数を少なめに見つもって60,000文字として370冊だから静六は、生涯で22,200,000文字書き連ねたこととなる。かりに、私の昨年の年間産出文字数208,000文字で割ってみると、107年となる。私のペースで書いて、107年かかるということだ!

いやはや、本多静六の書を眼の前にして、謙虚にもっと書かねばなるまいと悟った次第。


ケースで学ぶ実戦起業塾

2011年04月13日 | No Book, No Life

以前、「ケースで学ぶ実戦起業塾」という本について雑文を書きましたが、日本ベンチャー学会から依頼があり、正式な書評を学会誌向けに書きました。

ブログに走り書きしたものが、学会誌に飛び火するとはなんとも面白い現象です。このところ、ブログがモトになって書評になることが続いています。

この学会誌も早いところ、webに移行してほしいものです。欧米の一流学会では、論文提出、審査、掲載、会議開催まですべてオンラインが主流です。「ベンチャー学会」とうたっている以上、もっとスピード感を高めて、顧客=会員満足度を高めてほしいものです。

 とまれ、記念に貼っておきます。

<以下貼り付け>

日本ベンチャー学会誌:Venture Review No. 17. pp75-77.March 2011.

『ケースで学ぶ実戦起業塾』 

Case Studies: Starting and Running Your Own Venture

木谷哲夫編著 日本経済新聞出版社 2010年 

1本書の特徴 

本書の執筆陣は、京都大学産官学連携本部寄附研究部門 のイノベーション・マネジメント・サイエンス研究部門 に所属して起業、ベンチャー支援に実務経験を有する研究者達である。専門家向けというよりはむしろ、起業に関心のある学生、起業家予備軍のために書かれた一冊だ。書名に「塾」とあるように、本書が展開するステップに沿って、考えながら読める構成となっている。

経営現象を専門的に記述するときのスタンスは大きく二つに別れる。ひとつめは純粋な観察者の視点に立って、客観的に、あるいは論理実証的に記述する行き方だ。ふたつめは、経営に深く関与した経験がある者が、自らの経験を基にして、そこから抽出される事例、パターン、モデルなど記述する行き方である。前者の記述スタイルの典型は経営学者のそれだろう。経営学者にとって、実務としての経営にタッチすることは積極的には求められない。ゆえに、請求書を発行したことのない人、経営計画書を書いたことのない人、人を採用し首にしたことのない人、イノベーションについて当事者として取り組んだことがない人でも、大学院を出て経営に関する論文などを書けば経営学者の一端には入れる。後者の記述スタイルの典型は、経営に積極的に関わり、携わってきた実務家ないしはプロフェッショナルのそれだ。この本は、後者に属する執筆者によって書かれたものである。

さて、ここで注意しなければならないことは、起業経営(Entrepreneurial management)におけるプロフェッショナルな経験というのは、凡百な企業の研究開発担当者、管理職、事業部門長、新規事業創出担当者、ベンチャー投資担当者、会計士、税理士、起業評論家、ベンチャー評論家などのレベルではないということだ。起業経営におけるプロフェッショナルな経験とは、そうそう間口が広いわけではなく、以下のように限定される。

(1)ハンズオン投資を行いイグジットまで持っていった経験。(投資経験)

(2)自らリスクを取って起業し、かつイグジットさせた経験。(起業経験+イノベーション経験)

(3)グローバルレベルでのイクスパティーズが蓄積されたコンサルティング・ファームでのコンサルティング経験。(コンサルティング経験)

 

この本の著者チーム、つまり木谷哲夫、瀧本哲史、麻生川静男、須賀等は、上記の稀有な起業経営プロフェッショナルの条件を満たしている。本書の第1の特徴は、そのような経験を具備する執筆者によって書かれている、そのこと自体である。

第2の特徴は、本書のタイトルが「実践」ではなく「実戦」とされているところに顕れているように、起業という戦場で活用できるプラクティカルな内容に重点を置いている点である。海外発のケースの羅列では、環境、制度など与件が異なりすぎるので日本国内で起業する向きにとっては有効な知見を得にくい。この点、本書のケース群は異なる。著者4人が濃厚に関与した日本国内の起業事例を中心にして丹念に絞り込まれた記述は有用な洞察の宝庫である。

第3の特徴は「事業の作り方」を解説している点だ。本書は、ビジネスモデル作りに重点を置き、ヴィークルとしての各種法人の作り方は二の次としている。このスタンスは全章を通して一貫しており、25事例の紹介と相まって、事業やビジネスモデル作りの勘所が読者にビビッドに伝わるような編集となっている。

2本書の構成

この本の構成を概観する。まず第1章「勝てる土俵で戦う~ビジネスアイディアと起業マーケティング」(瀧本哲史執筆)は、いわゆる起業家発想法の本質が分かりやすく述べられている。私見によれば、起業マネジメントにおいては、成功要因より失敗要因の方が圧倒的に多く、その意味で失敗パターンに気づくことが起業家のリスクマネジメント上、より重要である。その意味で、失敗する起業家はどこでつまずくのか(019ページ)は示唆に富む。

第2章「他力を活用する~チームビルディング~」(木谷哲夫執筆)は、スタートアップスのいわゆる人的資源論だ。まさに「はじめの10人がベンチャーの成否を分ける」、「はじめの10人が会社の性格を決定づける」、「大学は人材獲得源として活用すべし」などというような着眼点が光っている。

第3章「合理的なリスクを取れるまで計画する~ビジネスプラン~」(木谷哲夫執筆)は、単調になりがちな事業計画づくりのフローを、「合理的なリスク」を取るという視点で論述する。成功の確率をいかに上げてゆくのか、というテーマはリスクマネジメントなのである。

続く第4章「市場の目で技術を見る~知財と技術マネジメント~」(麻生川静男執筆)では、技術経営(MOT)の視点で主として知財と技術マネジメントが論じられる。技術経営領域で頻繁に用いられる概念が初学者にもわかりやすいように平易に解説されている。

以上の議論を受けて、第5章「会社の成長に合わせて進化する~成長の管理~」(須賀等執筆)はスタートアップス経営の本質である成長のマネジメントについて深堀りする。筆者自身がハンズオン・キャピタリストとして深く関与したタリーズコーヒージャパンのケースが味わい深い。「どうだ、俺と組まないか?」「はい、よろしくお願いします」という会話から急展開されるリアルな事例に思わず読者は引き込まれるであろう。

終章となる第6章「出口戦略を常に意識する」(瀧本哲史執筆)は、イグジットに焦点をあてて議論を加えている。日本人一般に欠けているもののひとつは、入り口で出口を構想するシナリオプランニング能力である。瀧本は、おそらくはこのような認識に立って、すべての段階においてイグジットを積極的に意識せよ、との具体論を展開する。本書の構成上、この章は終章ではあるが、実質的には序章でもある。終章(イグジット)を吟味して序章(エントランス)に取り掛かれ、というメッセージが込められていると理解したい。そのエスプリを味わうためには、終章を読んでから全部の章を改めて読んでみるのもよいだろう。

さらに、全編を通して25事例もの日本国内の生きたケースが掲載されていて、これらの事例がバランスよく各章の議論に埋め込まれている。ケースというと、ケースを記述する際の構造に神経質になる向きもあろうが、本書のケースは厳格なフレームによって構造化するものではなく、各筆者の個性が多様に反映されている。このようなケースの記述があってもよいと思う。

具体的には、第1章に2事例、第2章に4事例、第3章に5事例、第4章に12事例、第5章に1事例、第6章に2事例が掲載されている。このように章立ての文脈に沿って、日本国内の起業事例が紹介されているので、各章のポイントが腑に落ちる構成となっている。「そういえばこういう事例があったな」と想い出し、個別の文脈で起業家や起業家の卵たちが、判断する際に、大いに参考になるはずだ。 

3 内容の吟味と検討

 「はじめに」でも論じられているように、先進各国におけるマイクロカンパニーないしは「自分経営」の動向は意味深長である。そして、米国や欧州では大会社を辞めて個人ベースで生きる人の割合が増加しており、組織から個人への「民族大移動」が起きているという。これらの動きを受けて、執筆者代表の木谷は、「日本でも、その動きが周回遅れで起こっている。この『中抜き』の時代に大事なのは、『会社経営』ならぬ『自分経営』の視点である」と述べ、「起業という選択肢は、他の人と共同し、大きな事業機会にチャレンジできる魅力的なものだ」と論ずる。

 この部分について付言する。2010年12月の時点で有効求人倍率は、従業員5000人以上の大企業では0.47倍(リクルート調べ)だが、300人以下の中小企業では4.41倍(アイタンクジャパン調べ)である。このデータからも読み取れるように、大企業への就職は厳しい状況だが、ベンチャーを含む中小企業では1人の求職者に対して4社以上が求人を出している「売り手市場」なのである。しかし、中小企業への就職希望者は低迷し、狭き門の大企業のみに就職希望者が殺到し、内定が出ないと学生は苦悩の声を上げ、その情景をマスコミは盛んに「就職氷河期」であると喧伝している。就職先としての中小企業、ベンチャー企業志向が低迷していることと、起業率の低迷は無関係ではあるまい。いったいこの情景に「自分経営」はあるのだろうか、という疑問を呈するとき、「周回遅れ」の「周」とはたぶん1周ではないように思われる。日本民族の「民族大移動」は大企業志向にとらわれ、目詰まり現象を起こしてはいまいか。

 さて、前述したとおり、本書はハイレベルな実務家による著作物ではあるものの、ライティングスタイルについていささか気がついた部分を挙げておこう。

(1)社会起業(Social Entrepreneurship)という切り口がない

本書はfor-profitのビジネス起業を中心に構想しているが、social(社会的)インパクト、社会イノベーションといった昨今の社会起業の動向に関する記述が見当たらない。これらのテーマに対しても一瞥を加えておいた方が、本書の相対的位置づけが明確になったことであろう。

(2)知財を活かす「三位一体の戦略」(246ページ)

「知財戦略の三位一体とは、①研究開発戦略(技術戦略)、②事業戦略、③知財戦略」(248ページ)を挙げているが、この言説に関する先行文献にもリファーしておくべきだろう。

(3)マーケティング・ミックスの4P

異なる章の2か所で重複して解説されている(079、216ページ)。無用な重複は避けるべきだ。

(4)オープンイノベーション(283ページ)

近年、ベンチャー企業、地域クラスター、産官学連携コミュニティとオープンイノベーションの関係性が盛んに議論されつつある。起業家やベンチャー企業単体を凝視する目をミクロの目と呼ぶのならば、オープンイノベーションを俯瞰するのはマクロの目だろう。京都という土地柄を借景として、起業を国内事例中心に論じる本書にとって、このような議論に独自の一石を投じる視角もあってよいのではないか。

しかしながら、以上はむしろ瑣末な点とすべきであり、前述した本書の大胆な構成、斬新な着眼点をいささかも損じるものではない。読者諸賢には、瑣末な点は横に置き、本書の本質とじっくり対話をして欲しいものである。

 

<以上貼り付け>


震・天・人・金・物の5重の災厄

2011年04月11日 | 恐慌実況中継

巨大地震の震災、津波(天災)、原発事故(原発政・産・官・学・報の村社会=共同体病=人災)の3つの災厄が日本列島に充満している。しかし、震災、天災、人災にとどまらない。実態は、それらに物災と金災とが加わり、震・天・人・金・物の5重の災厄が進行中である。

 2008年9月の第1週から恐慌プロセスを予見してきた。2009年07月11日 の時点では、米国債暴落のトレンドを指摘して恐慌シナリオが現実味を増してきたことを指摘した。

震災、原発事故は2つのベクトルを日本経済にもたらしている。復興→需要拡大、エネルギー不足→成長率低下、という二つのベクトルだ。復興需要を満たすため高価な石油、鉱物資源などの輸入は増加に向かう。食物やメタルのコモディティーは軒並み価格が高騰している。日本での原発人災のさなか、北アフリカではリビア攻撃に拍車がかかり、石油争奪戦の緒戦という色調となっていている。今後、ますます日本は高い価格のコモディティーを輸入に頼らざるを得なく、インポートインフレが起こってくる。モノの価格の高騰からもたらされる物災だ。

さて東北地方には穀倉地帯、漁場のほか、工業部門の自動車部品、電器、半導体工場などの製造拠点が集積している。これらの修復には時間がかかるので輸出の停滞を余儀なくされる。つまり、貿易黒字が赤字方向に振れてゆく。また資金不足の中での復興需要なので忌み嫌われた国債発行をして財政出動というシナリオに向かわざるを得ない。モノのコストが高騰する反面、ペーパーマネーの価値は暴落中。こうして日本国債の暴落シナリオが一段と近づいてきた。

そして強烈に痛みつつある米国マネー経済。いよいよ日米ほぼ同時国債暴落のカウントダウンが始まった。金(マネー)災だ。

<以下貼り付け>

 米連邦債務、5月16日までに上限到達 米財務長官 

2011/4/5 10:02 日経記事

 【ワシントン=矢沢俊樹】ガイトナー米財務長官は4日、議会指導者らに書簡を送り、米連邦政府の債務残高が5月16日までに米議会が定めた上限に到達するとの見通しを示した。米政府が一時的な債務不履行に陥った場合「より深刻な金融危機をもたらす」と、強い調子で議会に対応を促している。

債務上限法は米政府の債務は14兆3千億ドル(約1201兆円)までと定めており、この上限に達すると国債新規発行ができなくなるなど、予算執行に大幅な支障が生じかねない。同長官は書簡で「議会が上限引き上げに応じる以外の選択肢はない」と強調。ただ、大幅な歳出削減を主張する野党共和党は上限引き上げに反対姿勢を崩しておらず、議会での攻防が続いている。

<以上貼り付け>

米国債が下落すれば、米国にとって米株安、米ドル安、米国債安の悪夢のカードが揃ってしまう。恐慌シナリオがさらに現実味を増すから、最後の砦=米国債は、なんとしても格下げはできない。雪庇(せっぴ)の上の危険な山歩きが続きていたが、その雪庇を踏みぬけて奈落の底にマネー経済は落ちてゆく。

ガイトナー長官は「たとえ短期的もしくは限定的なデフォルト(債務不履行)であっても、向こう数十年にわたって続くような甚大な経済的結果を招くことになる」と言っている。リーマンショックを遥かに凌駕する負のインパクトを世界経済に与えることは必至。その時、日本が買わされ続けてきた米国債はチャラパーとなる。国富の消失だ。これを金災と呼ばずしてなんと言う。

国務長官のクリントンが日本にやってきたが、第7艦隊、ロナルドレーガンを繰り出し、原発事故出口戦略協力、震災対応協力(といっても30億円以上の請求書。米安保過剰請求のそのまた火事場泥棒のような請求書)をカードに、米国債の買い増しの圧力を必死に掛けに掛けた。保護国の日本としては日本国債の暴落圧力が日に日に増す中、暴落必至の米国債も買い増さなければいけないジレンマ。こうして日本経済は(も)メルトダウンしてゆく。

             ◇    ◇    ◇

3.11の教訓は大きい。震・天・人・金・物の5重の災厄をいかに淘(よな)げてゆくべきか、という命題にとって、3.11は終わりの始まり。今年は七赤金星が中宮に回座。金(マネー)は八方ふさがり。断末魔の金融資本主義。阿鼻叫喚の実物経済。そして恐慌。そのはけ口として争いごと、戦争が利用される。

終わりの始まり、から、始まりの始まり。よくないものや劣るものを上手に捨てて、よいものを選ぶ。まさに国家運営、企業経営、個人としての生き方に災いを転じて福となす智慧が問われている。


復旧・復古ではなく復興には起業家精神で

2011年04月02日 | 技術経営MOT

平成21年度、ベンチャービジネス戦略論が経済産業省のモデル講座として採択され、起業家教育ベストプラクティス事例集」に紹介されました。

震災からの復興は、旧いものの復活や復古=「復旧」ではありません。旧いものを破壊して、というよりはむしろ、旧いものが破壊されて、新しいものを創造せざるを得ない状況です。このような歴史の特異点では、社会のあらゆるセクターでアントレプレナーシップが求められます。新しい時代のデザイナーとでも言ってよいでしょう。

東京農工大技術経営研究科技術マネジメントリスク専攻は、工学府産業技術専攻と改組された関係上、2011年度、松下が担当する授業はマーケティング概論、技術経営企業論、技術経営概論(分担)となります。

客員教授をやっている日本工業大学技術経営研究科ではひきつづき、「アントレプレナーシップとベンチャー企業の経営」の講座を担当します。(夏学期)