hiyamizu's blog

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山本文緒『自転しながら公転する』を読む

2021年04月19日 | 読書2

山本文緒著『自転しながら公転する』(2020年9月25日新潮社発行)を読んだ。

 

新潮社によるStoryは以下。

32歳の与野都は、2年前まで東京でアパレルの正社員として働いていたが、更年期障害を抱える母親の看病のため、茨城県の実家に戻ってきた。今は牛久大仏を望むアウトレットモールのショップで店員として契約で働いている。地元の友だちは次々結婚したり彼氏ができたりする中で、都もモール内の回転寿司店で働く貫一と出会いつき合い始めた。でも料理が上手で優しいけれど経済的に不安定な彼と結婚したいかどうか、都は自分の気持ちがわからない。実家では両親共に体調を崩し、気づいたら経済状態が悪化していた。さらに職場ではセクハラ、パワハラいろいろ起きて――。恋愛をして、家族の世話もしつつ、仕事も全開でがんばるなんて、そんな器用なことできそうもない。ぐるぐる悩む都に貫一の放った言葉は、「そうか、自転しながら公転してるんだな」。

 

 

32歳の与野都(よの・みやこ)は、更年期障害が重い母・桃枝のため、茨城県牛久の実家に戻り、アウトレットモールの衣料品店で働いている。車の故障で困っている都を助けてくれた、回転寿司店の店員で、元ヤンキーの羽島貫一と付き合うことになった。しかし、中卒で、給料も安い貫一との将来に、都は悩み、自分がわからなくなる。

友人のそよかは都に言う。「都さんの迷いの根本は、自活できる経済力がないことなんじゃないですか。……都さんが持っている不安は、貫一さんの将来じゃなくて、自分への不安じゃないですか」(p271)

 

「小説丸」でのインタビューで山本さんはこう語る。

「男女が付き合うということは侵略しあうことでもあって、必ずしもいいこととは言えない気がします。今は一人で生きて一人で死んでも寂しいわけではない、という価値観もありますし。〝この人がいないと生きていけない〟という考え方も素敵だけれど、〝この人がいなくても生きていける〟という結論を一回出してから始まることもあると思うんです」

 

 

都:ミャー、おみや。若い頃はファンタジックで少女趣味の森ガールファッション一筋で、そんなアパレルに勤めていた。一人娘。

そよか:都の一つ下の幼馴染。彼氏は5歳上のバツイチ。

絵里:2年前に結婚、共稼ぎで子供はいない。

ニャン君:ベトナムからの留学生。日本人の妻を持つ兄が起業家。

アウトレットモールの衣料品店:店長は亀沢。社員は仁科、一番若いのは杏奈。他数名のアルバイト。本社のMD(マーチャンダイザー)は長谷部からイケメンの東馬へ。

 

この小説は、プロローグの「今日私は結婚する」で始まり、彼女がベトナム人と結婚するシーンへ続く。

エピローグで結婚式での父と母の正体があかされる。

 

初出:「小説新潮」2016年1月号~2019年5月号。プロローグとエピローグは書き下ろし。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

大部(p478)だが、アパレルショップの様子や、年頃の女性の結婚の悩み、女友達間の会話が、想定の範囲内だが、良く書けていて実感できる。

 

30歳過ぎの女性の結婚生活への諦め感、経済的不安感、絶望感が説得力ある筆致で描かれる。

 

ただ、プロローグは本文での話の進行に敢えてミスリードさせるもので、いけないじゃない?

 

私が大好きな著者の山本文緒さんは、2001年『プラナリア』で直木賞を受賞したのだが、2003年40歳の時にうつ病を発症して約6年の闘病生活を過ごした。2007年、うつ闘病日記であるエッセイ『再婚生活』で復帰し、さらに小説は本書が7年ぶりの新刊なのだ。まだ「寛解」という状態らしいが、ともかくお待ちしていました、おめでとうございます。

 

 

山本文緒の略歴と既読本リスト

 

 

(店員の仁科と都の会話)(p244)

「それにしても与野さんって若いよね。25歳ぐらいにしか見えないよ」

「それ持ち上げ過ぎですよ?」

「バレた? でも30超えているようには見えないって。何か秘訣あるの? 教えてよ」

「そーですねー、強いて言えば物を考えないことですねー」

人差し指を顎に当てて、わざと馬鹿っぽく都は言ってみせる。

「ハハハ、やっぱり?」

「将来のこととか貯金のこととか考えると皺ができますからねー」 

 

ベトナムの人口は約1億人で、平均年齢は約30歳(日本は46歳位)。戦争で死んだ人が多いから。2000年には24歳だった。

 

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