伊坂幸太郎著『死神の精度』(文春文庫2008年2月発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
「死神の精度」
調査をするよう指定されたのは、大手電機メーカーの苦情処理係り藤木一恵。22歳の彼女は、何かというと指名して電話をかけてくるクレーマーに付きまとわれていた。その訳は・・・。
「死神と藤田」
やくざの藤田の調査を担当する。弱気を助け、強きをくじく任侠タイプの藤田は兄貴分を殺した栗木をあくまで狙うが、上部は穏便に解決しようとする。阿久津は親分藤田のために先に栗木を倒そうと、千葉とともに乗り込むが、・・・。
「吹雪に死神」
吹雪で閉じ込められた洋館で起こる連続殺人事件を死神が解決する。
「恋愛で死神」
指定された男萩原はブティックで働き、バス停であう古川朝美が好きだ。
「旅路を死神」
指定された森岡は指名手配中の殺人犯で、死神の車に乗り込んでくる。車は「おいらせ」に向かう。ホテルの受付の男は二人の男を見て「あんたたち、ホモかい」という。死神は「こいつはホモ・サピエンスだが、俺は違う」と答える。
「死神対老女」
美容院の老女は次男以外の家族をすべて亡くして、自身の死も近いことを予感している。そして死神に若い客を集めるように頼む。
初出:「オール読物」2003年12月号・・・2005年4月号、「別冊文藝春秋」255号、単行本2005年6月発行
私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
私としては五つ星だが、癖が強いので、一般的には強くお勧めできないので四つ星に。
死神が登場し、いかにもメルヘンのなりがちだが、あくまでリアル、ユーモラスで、伊坂節全開だ。クールでスタイリッシュな会話が、映画の一シーンを思い浮かべさせられる。登場人物のキャラ作りも相変わらず上手い。
我々にはなんでもない日常を、死神からの視点で表すと、普通のものが見慣れない奇妙なものに見えてくる。解説の沼野充義氏によるとこれを文芸用語で「異化」というらしい。
「人間は不思議なことに、金に執着する、音楽のほうがよほど貴重であるにもかかわらず、金のためであれば、たいがいのことはやってのける」
「わたし、醜いんです」とぽつりと言った。
「みにくい?」・・・「いや、見やすい」と答えた、「見にくくはない」
「俺が、仕事をするといつも降るんだ」私は打ち明ける。
「雨男なんですね」・・・そこで、長年の疑問が頭に浮かんだ。「雪男というのもそれか」
「え?」
「何かするたびに、天気が雪になる男のことか?」