hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

綿矢りさ『大地のゲーム』を読む

2013年09月19日 | 読書2

綿矢りさ『大地のゲーム』(2013年7月新潮社発行)を読んだ。

相変わらず大げさな宣伝にはこうある。
私たちは、世界の割れる音を聞いてしまった――。大地はまた咆哮をあげるのか? 震災の記憶も薄らいだ21世紀終盤。原発はすでになく、煌々たるネオンやライトなど誰も見たことのないこの国を、巨大地震が襲う。来るべき第二の激震におびえながら、大学キャンパスに暮らす学生たちは、カリスマ的リーダーに未来への希望をつなごうとする。極限におかれた人間の生きるよすがとは何なのか。未来版「罪と罰」。


半年前の「あの夏」に起こった震災で家族や友人の多くを失った学生たちは、多くが倒壊した大学構内に泊まり込み、学園祭を迎えようとしている。主人公の「私」は、「私の男」を恋人としつつも、「反宇宙派」のカリスマリーダーに惹かれる。

初出:「新潮」2013年3月



私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)

かわゆい綿矢さんに二つ星は、つける私も哀しい。近未来の大地震後、さらに大地震が予測される世界という状況設定の中で、若者たちが狂気なく授業を受け、寝泊り生活しているのに違和感があり、状況が生かされていないと感じる。また、グループの若者たちの青春群像が劇中の人物のようで、生き生きした生身の人間のように感じられない。

主人公の「私」から見た、やけに自信満々なグループのリーダー像が軸になっているのだが、単純そうで、あまり魅力的には見えない。
本書の語り手は一貫して「私」であるが、終盤近くの4ページ余りだけ突然リーダーが語りだす。この部分が、リーダーが正体を現す謎解きになっているようだが、単純な計算高い人間としか読み取れず、ピンとこない。



綿矢りさ(わたや・りさ)
1984年、京都市生まれ。
2001年、高校生のとき『インストール』で文芸賞受賞、を受けて作家デビュー。
2004年、『蹴りたい背中』で、芥川賞を史上最年少で受賞。
2006年、早稲田大教育学部国語国文学科卒業。
2007年、『夢を与える
2010年、『 勝手にふるえてろ
2011年、『かわいそうだね?』で大江健三郎賞受賞、
2012年、『しょうがの味は熱い』、『ひらいて』
2013年、『憤死』

コメント
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