hiyamizu's blog

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牟田和恵『部長、その恋愛はセクハラです!』を読む

2013年07月13日 | 読書2
牟田和恵著『部長、その恋愛はセクハラです!』(集英社新書0696B、2013年6月発行)を読んだ。

現実に生じるほとんどのセクハラが、グレーゾーンで生み出される。セクハラをしていること、セクハラと受け取られることになぜ男性は気づかないのか、そしてセクハラと訴えられてもその理由が理解できないのはなぜか。また、なぜ女性ははっきりとノーと言わないのか。
恋愛に関する、妄想系とリアル系の二つのパターン違いは? また、訴えられたらどうすればいいのか? セクハラ裁判にも多く係わる、セクハラ問題の第一人者が、具体例に基づき、合意の付き合いだった、相手が嫌がっているとは思わなかった、悪気はなかったと、男の勘違いの原因を明らかにする。

女性が喜んでいるように見えてもセクハラでありうる。困っているように見えなくても実はセクハラでショックを受けている場合もある。

嫌がっているそぶりを見せなくとも、仕事の立場上、望まないのに受け入れざるを得ない状況に追い込まれることもセクハラなのです。

妄想系
男性「合意の付き合いだった」「女性もその気だったはず」
女性「上司だから親しく接していましたけど、特別な関係になろうとは思ってませんでした、それなのに・・・」

「真剣な気持ちなら許される」「男なら押しの強さが大事」はセクハラである。

女性はなぜはっきりノーを言わないのか、男性はなぜ女性のノーに気付かないのか
不快な性的誘いや働きかけに、「逆らわずにいる」ことで女性は拒否のメッセージをあらわそうとする傾向を持っている・・・見かけは喜んでいるように見せて巧みに男性の面子をたててやり・・・。
電車で痴漢に遭った女性が・・・不快感を押し殺し、黙って身体をずらしてなんとか逃れようとするだけ、という女性が多数派・・・。声を出すことができたとしても、か細い声で「やめてください」と・・・命令ではなく依頼、礼儀正しいお願い・・・。

男性にしてみれば、女性の「感じよい沈黙」は、男性のアプローチを女性が「恥じらいながらも受け止めた」・・・であって、まさか「内心の不快感を押し殺してにっこりしているだけ」「無視することでノーの意思表示をしているつもり」とはなかなか想像がつかないでしょう。

女性の身体をじっと見つめて上から下へ、下から上へと目線を動かすのは「エレベータ・アイ」といって、典型的なセクハラの一つです。・・・職場の女性たちは働く女性。ステージに立つ芸能人やモデルではないのですから、男性の目を楽しませるために職場に来ているのではありません。




私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

会社で女性に接する男性は読むに越したことはない。男性が何でもないこと、相手の女性はニコニコしていたから当然のことと思っていても、女性側は、耐えられないことがあると哀しい現実をわからせてくれる。

突然、女性から訴えられないためにも、とくに古い価値観を引きずっている男性は読むべき本だ。
昔の会社の宴会などでは、ご機嫌なオヤジが下ネタを連発したりして、喜んだふりをしている女性をさばけているなどといって歓迎したものだ。また、女性に触ったりしても、何分酔っていたもので、ということで許される時代でもあった。

様変わりの現代でも、セクハラで訴えられた男性が、とんでもないと反論するニュースが時々ある。当事者でない私にはどちらの言い分に利があるのかわからないこともあるが、この本を読むと、当事者の男性にも腑に落ちないままで、実際はセクハラしている場合が多いようだ。



牟田和恵(むた・かずえ)
1956年生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科教授。社会学者(歴史社会学、ジェンダー論)。一九八三年、京都大学文学部社会学専攻卒業。八五年、同文学研究科修士課程修了。八七年、同博士課程退学。八九年、日本で初めて「セクハラ」の語を流通させるきっかけとなった福岡セクハラ裁判に関わる。現在「キャンパス・セクシュアル・ハラスメント・全国ネットワーク」の中心メンバーのひとりとして、この問題に理論・実践の両面から取り組む。


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