hiyamizu's blog

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藤原緋沙子『百年桜』を読む

2013年07月27日 | 読書2

藤原緋沙子著『百年桜』(2013年3月新潮社発行)を読んだ。

「書下ろし時代小説の女王」が隅田川の渡しでの5人の男女の切ない人生模様、新たな一歩を描く5つの短編。

「百年桜」 “竹町の渡し”
奉公人が100名もいる大店、日本橋呉服問屋「大津屋」の手代新兵衛は、長年真面目に勤め、小頭一歩手前まで来ていた。悪の道にはまった故郷蒲生での幼馴染、伊助を助ければ未来はない。どうする新兵衛。ケーン、ケーン、小鹿の声が聞こえる。船の行く手の岸には満開の桜。新兵衛にはまるで蒲生の百年桜に見えた。

「葭切」 (よしきり)“橋場町の渡し”
お見合いをしている茶道具「大和屋」の娘おゆきは22歳。もはや行き遅れだが、3年前に会った薬売りの啓之介が忘れられない。しかし、啓之介は山流しとなり、・・・。ギョ、ギョシ、シキリの声が聞こえる。

「山の宿」 “山の宿の渡し”
出奔した奥井継之助が亡くなったとの知らせを受けて、離縁された元妻のおまきは江戸に向かう。継之助出奔の経緯は? 江戸で何をしていたのか?

「初雪」 “富士見の渡し”
甲州勝沼の秀治はぶどうを運んで江戸へ来る。そして、小さい頃家を出ていった母を探し出す。川の中ほどで見えた富士山は初雪を頂いていた。許嫁の心配をよそに、秀治は・・・。

「海霧」 “本湊町の渡し”
土屋禮次郎は妻多紀をたぶらかし、不義を働いた伊沢重三郎を追って13年。寄せ場送りの船着き場には重三郎を待つ女がいて・・・。

初出:「百年桜」(蒲生の桜)小説新潮2012年3月号、「葭切」小説新潮2012年7月号、他は書下ろし



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

時代物や、いわゆる人情物が好きな人には四つ星だろう。読みやすいし、良く書けている。確かに、“隅田川の渡し場”には、人生の縮図があり、人生の哀歓が色濃く漂っている感じがする。

脚本家出身の作家は、人生の機微を描くのがうまく、文章も簡潔な人が多い。ただ、あまりの手練れぶりに、左脳がいささか反抗的になる。このまま固まってしまいしょうな私の脳には、何か新しい刺激が欲しい。



藤原緋沙子(ふじわら・ひさこ)
高知県生まれ。累計部数300万部を超えるという。
小松左京が主宰する「創翔塾」を経て、脚本家、小説家。
テレビドラマ「長七郎江戸日記」、「はぐれ刑事純情派シリーズ」「藍染袴お匙帖シリーズ」などの脚本。
2002年「隅田川御用帳シリーズ」の第一巻『雁の宿』で小説家デビュー。
2013年、『隅田川御用帳』で第2回歴史時代作家クラブ賞シリーズ賞受賞。


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