hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

山田詠美『タイニーストーリーズ』を読む

2012年12月30日 | 読書2
山田詠美著『タイニーストーリーズ』(2010年10月文藝春秋発行)を読んだ。

文藝春秋の担当の丹羽健介さんの言葉
短篇小説の名手である山田詠美さんがこの新作について語ったのは、「一滴落とすと水の色がぶわっと変わるような凝縮した言葉で書きたい」ということ。その言葉通り、400字詰め原稿用紙で20枚程度の「小さな話」が21篇も入ったこの本には、恋愛小説、性愛小説、家族小説、戦争小説、喜劇、悲劇とあらゆる小説のエッセンスがぎっしり詰まっています。ぜひあなたの心の1篇を見つけてください。


第一話:母の遺品整理で見つかったメモには「パパの銃で撃たれて死んでしまいたい」とあった。このパパとは誰か? 泣くばかりの父、葬式を取り仕切る叔母、家族があれこれ邪推する。

第二話:犬におしっこをかけられ続ける電信柱が足元に生えてきたさくら草に恋する。花言葉は無言の愛。

第三話:精神病院のアルコール病棟に入った夫にお弁当を作って通う妻。

第四話:GIと遊んだ話(一)。 これは(五)まである。

初出:「文學界」2010年1月号~9月号、「オール読物」2006年2月号、2007年2月号



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

確かに上手いと思う。しかし、どうしても短編は技巧が見えてしまうところがある。
あとがきで山田さんは言っている。
短編小説とはスタートの反射神経を研ぎ澄ますべきものであり、逆に長編小説はゴールへの想像力を駆使すべきもののような気がします。どちらも、独特の走りを会得するまではトレーニングをおこたれません。

短編は一気に書きあげて、いくつかの中に良い物が少しあるということなのだろうか。

なんといってもやはり、「GIと遊んだ話」がいい。私の知ることができない世界を垣間見られる。
(五)で、白人のくせにつねに黒人たちと行動を共にし、“Yo! man”と黒人特有のあいさつをし、上半身を揺すりながら歩く奴が、影では「なりたがりっ子(ワナビー)」と呼ばれて笑われていた。詠美さんも、人種差別の議論になって、「ミカ、おまえだって、所詮、あのワナビーと一緒だろ!? 」と言われる。



山田 詠美
1959年 東京生まれ。明治大学文学部中退。
1985年「ベッドタイムアイズ」(文藝賞受賞)で衝撃的デビュー。
1987年 『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞
1989年 『風葬の教室』で平林たい子賞
1991年 『トラッシュ』で女流文学賞
1996年 『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞
2001年 『A2Z』で読売文学賞
2005年 『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞を受賞
その他、『学問

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする