hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

山田詠美『学問』を読む

2012年12月24日 | 読書2

山田詠美著『学問』(2009年6月新潮社発行)を読んだ。

宣伝文句は、
東京から引っ越してきた仁美、リーダー格で人気者の心太、食いしん坊な無量、眠るのが生き甲斐の千穂。4人は友情とも恋愛ともつかない、特別な絆で結ばれていた。一歩一歩、大人の世界に近づく彼らの毎日を彩る生と性の輝き。そして訪れる、それぞれの人生の終わり。高度成長期の海辺の街を舞台に4人が過ごしたかけがえのない時間を、この上なく官能的な言葉で紡ぐ、渾身の長編。


性欲の仁美、支配欲の心太、食欲の無量、睡眠欲の千穂、病院息子の無量を惹きつけておくためには何でもするさかしまな素子、人間の欲望を代表する5人の子供。

1章の冒頭は仁美、2章は無量、3章は千穂、4章は素子の「死亡記事」から始まり、最後は心太の「死亡記事」で終わる。

初出:「新潮」2008年9月号、11月号、2009年1月号、4月号



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

各章の冒頭は主人公たちの「死亡記事」で始まり、その行き先が死であることが頭の隅に残りながら、話の中の若々しい青春の出来事を読むことになる。なんにしても、死に向かって行く途中での青春であり、であるからして、精一杯の若さなのだと思わされる。

子供から少年少女へ変わって行く中での5人の仲良しの関係、気持ちが良く書けている。やがてそれぞれが若者になって、根っこではつながりを持つが、詮ないことに独立しバラバラになっていく。

一人の少女が性の目覚めていく過程が、ゆっくり明るく描かれている。
「学問」というタイトルは、学校や書物で教えてもらう「性」ではなく、生きてゆくなかで、身体で学んでいくことも「学問」だといいたいのだろうか。



山田 詠美
1959年 東京生まれ。明治大学文学部中退。
1985年「ベッドタイムアイズ」(文藝賞受賞)で衝撃的デビュー。
1987年 『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞
1989年 『風葬の教室』で平林たい子賞
1991年 『トラッシュ』で女流文学賞
1996年 『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞
2001年 『A2Z』で読売文学賞
2005年 『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞を受賞


コメント
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