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hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

「トイレの話をしよう」を読む

2009年12月21日 | 読書2
ローズ・ジョージ著、大沢章子訳「トイレの話をしよう-世界65億人が抱える大問題」2009年9月、日本放送出版協会発行を読んだ。

表紙裏にはこうある。
日本ではハイテク化が進み、アメリカや中国ではバイオ肥料など、排泄物の有効利用が脚光を浴びている。一方、トイレがない、あるいは、あっても汚すぎて道端でしたほうがましという人も、世界には26億人いる。
「なぜ、トイレ?」という周囲の冷たい視線をよそに、突撃型の女性ジャーナリストは、トイレを追いかけて西へ東へ大奔走!
英『エコノミスト』誌の2008年ベストブックス選定図書。


トイレに関する面白話かと思い読んだが、主に開発途上国の深刻な衛生の話だった。世界の子供の死因の1位はエイズや飢餓でなく、下痢だそうだ。不衛生なトイレから飲料水への糞尿の混入が原因という。

英語の原題は、”The Big Necessity: The Unmentionable World of Human Waste and Why It Matters”で、「大いなる必要性:人間の排泄物の語られることのない世界、そしてなぜそれが重要なのか」といったような意味だと思うが、原題の方が内容を的確に示している。

普通に屋外で排せつをするインド、種々の改善策が絶望に終わるアフリカのトイレ、扉のない中国の公衆トイレを実際に突撃使用し、厳しい現実をユーモアを持って語っている。
アメリカで下水汚泥を「バイオソリッド」として肥料として再利用しているが、化学物質や細菌類が除去できずに農村地帯を汚染している。また、アメリカやイギリスの公衆トイレが犯罪を恐れるあまり削減されているのも問題としている。

日本トイレ協会は、11月10日を日本トイレデー(いいといれ)と定めた。

インドのカースト下の、皮なめしや火葬をする不可触も触れてはいけないというクラスの人は手で糞尿を処理するのが仕事だ。彼らは40万人から120万人いるという。



私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)

食べ物、食べることについてはあふれるほどの本が出版されているが、しょせん一本のパイプに過ぎない人間にとって、同等に重要な排泄物や、トイレについての本が少ない。そして、語られることが少ないが、トイレが世界で大きな問題になっていることはこの本を読むと良く理解できる。
その意味で皆さんに読んでもらいたい本だが、360ページを大部で、著者のインタビューが主体のため、いささか長く、冗長に感じる。

訳者あとがきで述べているように、40,50年前までは人間の排泄物は身近な存在だった。水洗トイレに慣れた今では、糞便が安全、快適に処理されない場合はどのような恐ろしいことになるか忘れている。そして、下水処理場を見学に行った訳者は、一杯の味噌汁を、魚が棲める状態まで薄めるためには、浴槽5杯分の水が必要という事実に驚いている。



著者のローズ・ジョージ Rose George はロンドン在住のジャーナリスト。1992年オックスフォード大学卒、1994年ペンシルバニア大学修士卒。リベリア難民について書いた処女作“A Life of Removed” はレトル・ユリシーズ・アワードの最終候補となる。「ガーディアン」「インディペンデント」「ニューヨーク・タイムズ」紙などに記事を執筆。
彼女のHPによれば、英語、仏語、伊語が流暢で、スペイン語、ドイツ語が少々、ブルガリア語とアラビア語はあまりできないという。“Photografhy”をのぞくと、南アのドラム缶製トイレや、中国の仕切りないトイレ、インドの穴だけずらりと並んだトイレなどの写真がある。

訳者の大沢章子は、1960年生まれ。大阪大学人間科学部卒。サントリー株式会社勤務を経て、翻訳家。

なお、出典と補足情報は本書の末尾にURLが書かれたウエブサイトにある。たしかに、30ページものものを本に載せるより、ウエブに置いた方がよい。





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