hiyamizu's blog

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海堂尊「ジーン・ワルツ」を読む

2009年12月06日 | 読書2

海堂尊著「ジーン・ワルツ」2008年3月、新潮社発行を読んだ。

宣伝文句はこうだ。
産婦人科医・理恵――人呼んでクール・ウィッチ。医者がヒトの生命を操ることは許されているのか? 現役医師作家が挑む、現代日本最大の医療問題。『チーム・バチスタの栄光』を超える強烈なキャラクターとスリリングな展開に目が離せません!


主人公は、帝華大学医学部の助教、曽根崎理恵で、発生学講師の一方、産婦人科病院「マリアクリニック」の非常勤医師でもあった。専門は不妊治療で、患者にけして入れ込まない「クール・ウィッチ(冷徹な魔女)」というあだなを持つ。
清川吾郎は、帝華大学医学部准教授で、要領よく面倒ごとを避ける。頭は切れるのに学問嫌いで出世は望まず、屋敷教授に付かず離れず。イケメンで女性との付き合いも派手だが、手術の腕は抜群。
産科病院「マリアクリニック」の院長は三枝茉莉亜で、末期癌になり、息子の久広が医療事故で逮捕されたこともあり、閉院が決定する。理恵は最後の5人の妊婦達に関わる。

初出は「小説新潮」の2007年6月号から12月号。遺伝子は英語でgeneだから、題名の「ジーン・ワルツGene Waltz」は、序章名「遺伝子のワルツ」に同じ。
理恵はつぶやく。
「この世界は、絶対にゼロとイチの二進法ではできていない。だって、生命の世界では誰の遺伝子もみんなワルツを踊っているのだから。」




海堂 尊(かいどう たける、本名非公表)は、1961年千葉県生まれ。作家、医師。外科医を経て病理専門医。千葉大学医学部卒業、同大学院医学博士号取得。剣道3段。
2005年「チーム・バチスタの崩壊(出版本名は『チーム・バチスタの栄光』)」で、「このミステリーがすごい!」大賞受賞。



私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)

基本的には、いろいろな難問を抱えた妊婦たちが、迷ったすえ、出産に望み、それぞれに喜びを得るという感動的な話で、いわゆるミステリーには属さない。
元理系の私は、医学の説明が続いても、面白く読めた。しかし、遺伝子、不妊治療、出産など医学の説明部分がかなりあり、わかりやすい説明なのだが、好まない人がいるだろう。

厚労省の現場知らずの場当たり的な幾つもの政策変更が、医療崩壊をもたらしていることは周知のとおりだが、本書でも理恵の口を借りて、何箇所かで、厳しく指摘している。

本書では、産科病院「マリアクリニック」の院長三枝茉莉亜の息子の久広医師が、北海道の架空の都市「極北市」で起こした妊婦の術中死により逮捕された事件出てくる。これは、2008年8月に最終的に無罪となったとはいえ、産婦人科医療に大きな衝撃を与えた福島県立大野病院産科医逮捕事件のことだ。
この事件では、警察の逮捕に対し、医師たちか激しい抗議を、とくにネットで展開していて、議論が華やかだった。実際の事件との差異は私には不明だが、この本でも、院長は以下のような趣旨の抗議をしている。
「癒着胎盤は全分娩の0.01%と稀有な疾患で、現在の医療では事前に確定診断することは難しい。結果として、帝王切開の血の海の中で、1万回に1回の稀少症例に冷静に判断できなかったからと言って、なぜ業務上過失致死なのか」「地方都市で分娩を十年もの間一人で支えてきた医師が、院内の調査や、極北市の調査も終わっているのに、手錠を掛けられて逮捕されるのでは、産科をやる医師はいなくなる」




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