ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~玉が磨かざれば、光無し~

2012-12-17 | 散華の如く~天下出世の蝶~
市姫「えぇ!」
まぁ、目を爛々とさせて、可愛いモノだ。
女の、その化粧に憧れる年齢でもあるし、
帰蝶「お正月、粧(めか)し込んでみるか」
爛々とした、その瞳を覗き込み、
きれいにしたかろ?と尋ねたら、
市姫「おめかし、するする」
案の定。おませが誘いに乗って来た。
帰蝶「さて、御召し物は如何なさいますか?新調なさいますか?」
市姫「気に入ったモノがあって、それを着たい」
帰蝶「仰せのままに…」
キャッキャ、キャッキャと黄色い声を上げ、
腕をバサバサ上下させて嬉しさを表現した。
「まぁ、そんなはしゃいで。まるで、不如帰(ホトトギス)…」
可愛いモノよ、まんまと罠に引っ掛かり、
チョッチョチョチョ…
我が意にまま、高らかに鳴いてみせたわ。
「美しく成るは幸燿、剣も同じ」
市姫「これも?」
え?と懐剣を思い出したように見ていた。
帰蝶「左様。全てのモノに魂有り。目に見えずとも、そこに見えぬモノが在る」
色即是空、空即是色、
「それぞれが美しく、そう或るべきにして、この世に存在する」
市姫「ふぅ…ん?」ぽやとした顔が、また可愛い。しかし、ちと難しかったようで、
濃紺瑠璃に装飾された白の螺鈿を不思議そうに見つめていた
帰蝶「瑠璃の光も磨きから…と申します。そのモノ、如何したいか耳を傾け成され」
市姫「うぅ…ん?」
耳の裏に手を当てて、声無き声を懸命に聞こう聴こうしていた。
帰蝶「そのモノの声が、心に響きましょう」
静寂の中に響く声、剣の声が聞こえるはず…。