ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~童と、大人と、女と~

2012-12-02 | 散華の如く~天下出世の蝶~
登場した九歳、市姫様は、
ビシッ
ちまっこい指で生駒を差し、
市姫「わらわ(私)、そなた、嫌いッ」
生駒「まぁ、嫌われてしまいましたわ」
ほほ、子供の言う事よ、と笑って除けたが、
市姫「そこ、退けッ」
物の怪を祓うが如く、
袂で生駒を追い払う。
帰蝶「…一の姫様、ここは仲良く…」
あわわ…、子供は感情に兎角素直というか、何と言うか…。
嫌いでも顔を突き合わせれば、笑顔でご挨拶しなければ…、
市姫「出戻りがッ」
生駒「…」
誰が、九歳に、その言葉を教えたのか。
生駒、可哀そうに凍り付いてしまった。
生駒だって、好きで実家に戻った訳では無い。
嫌いで、子供二人を養子に出した訳では無い。
事情を知らぬ者、それを吹き込まれた子供は、
時に、辛辣。目を伏せ、ちらり生駒を見たら、
瞳の潤い一層二層も深く、赤く充血していた。
生駒「…そう仰らず、ご一緒に」水引を…
バチッ
市姫「出て行けッ」
美人の申し出をいとも容易く払い除けて、
ひゅ…、宙に舞う、くれないあわじ結び。
…ポト、力無く魔除け結びが地に堕ちた。
生駒「…私、」出て行こうとして、
それを制した。
帰蝶「座っておれ」